生存者は?
【ルルからの注意】
おう!
今日もまた話を聞きに来たんだな?
それはいいが今日も残虐シーン注意だぜ?
そこまで酷くないように話すが……まぁ注意してくれ。
ライオンがバッサバッサとゾンビを切り倒していく中、俺はその背中を守っていた。
襲い掛かってくるゾンビの手を杖で払い蹴りを叩きこむ!
僧侶の服だけにあまり足は上がらないが膝ぐらいの高さなら十分足が上がる。
膝を蹴りとばし前に倒れたゾンビの頭に杖を振り下ろした!!
硬いような柔らかいような嫌な感触が伝わりゾンビが地面に倒れ伏す!
そうしていると、また次のゾンビが迫って来る。
俺に掴みかかろうと突き出した腕の下を掴み下側に引っ張ると、引きずられる様に倒れこんだ。
そしてその頭に杖を振り下ろす!!
俺と背中合わせのライオンは前から迫りくるゾンビ達を一刀の元斬り捨てていた!
「どうだ? そろそろ着くか?」
「ふむ、かなりの数が片付いた。 もうすぐだ」
俺達は群がるゾンビを払いながらさっきの男が教えてくれた建物に辿り着いた。
『冒険者ギルド』
そう書かれた看板が正面入り口の床に倒れてボロボロになっている。
正面の扉は閉まっているものの、横の窓ガラスが数カ所割られ扉の意味をなしていなかった。
一応周囲のゾンビは片付いたな。
俺達は警戒しながらギルドの扉を……まぁ壊れた所からだがな……くぐって行く。
そこはギルドのロビーらしく正面には半月状のカウンター。
その両側には通路が見える。
そしてロビーの床は倒れた人と血で床が見えなくなっていた。
むせ返る様な血の……錆びた鉄の匂い。
壁や机、カウンターなどあらゆるものに死体がぶら下がったり寄りかかり血の跡を付けている。
チッ! こりゃひでぇ……な
入り口付近には多数のゾンビと冒険者の死体が折り重なるように倒れている。
様子を伺うライオンが、
「この数を見るに入り口以外からも侵入してきたようだな」
「まぁ入り口だけならここまではなんねーだろうしな」
もしくは避難した奴がゾンビ化したか……だな。
念の為倒れた冒険者達を見ていくが、やはりと言うべきかどれも息はない。
その音で気付いたらしく、奥にいたらしきゾンビが俺達に向かって走ってきた!!
内臓を垂れ下げ、折れた腕を突き出し走ってくる。
「そこにいろ」
ライオンが走ってきたゾンビに向かいその首を刎ね飛ばす!
(相変わらず動き早えーな。 剣捌きもそうだが、動きが半端じゃねー)
ライオンはあれだけのゾンビを倒しているにも関わらずその体を赤く染めていない。
血飛沫が掛からない様に計算して斬りつけているようだ。
そしてそれは的確に相手の首を刎ねた上での事。
(マジであいつ何者なんだ?)
組んだ俺としては心強いが、正体が不明だとそれはそれでちと怖い。
まぁそれを感じさせないのはあいつの性格と恰好だな……。
俺はアイツの下半身が目に入らない様に部屋の方に目を配る。
と、
奥に繋がる扉が見える。
開いていないところを見るともしかしたらあそこに誰か避難しているかもしれない。
俺は地面の惨状をよけつつドアまで行くと軽くノックしてみた。
返事はない。
試しにドアノブを回すが鍵が掛かっているようで開かなかった。
「ルル。 こっちに扉があるぞ」
「お? 分かった」
こちらの扉も気にはなるが、取り敢えずライオンの方に行くか。
ライオンはゾンビが走ってきた方を見ている。
丁度ギルドの受付カウンターを挟んで反対側の通路で、ライオンの言う様に扉が見える。
手前と奥に扉があり、手前の扉は半開きになっている。
ドアノブが外れ鍵ごと力づくで開けられた感じになっていた。
チラリと除いたが、もはや血の海と肉片しかなかった。
五体満足な身体は一つもない。
奥の扉に目を移すと、そちらは閉まったままだ。
「おい、誰かいるか?」
ドアをノックするが返事はない。
先程の部屋もだったが、閉じられた部屋の先はどうなっているのか……。
(怪我して動けない人がいるかもしれないしなぁ……破るか)
俺は少し下がると、
「おりゃぁぁぁ!!!」
バーン!!!
扉に蹴りを放つ!!
しかし扉はビクともしない。
「くっ! このドアかてぇ!」
「ふむ? 俺がやろう」
ライオンが同じように蹴りを放った!!
ドガーン!!!
扉が丸々吹っ飛ぶ!!
「…………ライオン」
「ん? なんだ? 開いたぞ?」
「……これで勝ったと思うなよ」
「……は?」
く~~羨ましい!! 俺もあんな力が欲しいぜ!!
これでも鍛えてるはずなんだけどなぁ……。
ライオンにちょっと……ちょっとだけだぞ? 劣等感を抱きつつ扉をくぐる。
部屋は小さな部屋で奥には更に扉が見える。
ちなみに先程のドアは壁にめり込んでいた。
「なんも……ねーな?」
部屋には死体も人もおらず、無造作に積まれた木箱ぐらいしかない。
そのまま奥の扉まで行くと、
「おい、誰かいるか?」
再度ノックする。
すると、
「イ、イタイ。 イタイ」
小さな声が聞こえてくる。
「おい!? 大丈夫か? 助けに来たぜ!!」
「イタイの……やめ……て」
掠れながらも悲痛な声が聞こえる。
急いでドアを開けようとしたが……くっそ! 鍵が掛かってやがる!!
「ライオン優しく頼む!」
「ふむ、任せろ」
今度は腕の力だけで扉を殴りつけた!
バン!!
ドアの鍵が壊れ勢いよく開く!
「ぐ、これ……は」
部屋に入った俺の目にゾンビに足を食われている女性が飛び込んできた。
足先から脹脛あたりまでゾンビがのし掛かりくちゃくちゃ音を立てている。
「ライオ……」
俺が名を呼ぶ前にライオンの剣が閃きゾンビの首が宙を舞う!
女性は顔中を涙や鼻水や涎でぐしゃぐしゃにして「イタイイタイ」と呟いていた。
目は虚ろで俺達が来た事もゾンビが倒されている事も気が付いていない様だ。
急いで回復魔法を掛けるが……1回じゃ治らねぇ!
四回ほどかけるとようやく女性の足が綺麗に治る。
「おい! 大丈夫か? しっかりしろ!!」
女性は虚ろな目で「イタイイタイ」と呟いている。
(くっ! 許せ!!)
俺は思いっきり女性の頬を平手打ちした!!!
パーン!と破裂するような音が部屋に響く!!
結構強めに叩いた為、女性の唇が切れて血玉がプクリと出てくる。
しかしその甲斐はあり、女性の焦点が俺を捉える。
「あ……あ……こ、ここ……は?」
「おい! しっかりしろ! 俺が見えるか?」
「あ、ああ。 貴方……は?」
「よし! 見えてんな? 大丈夫か? 安心しろ、お前の傷は治してある!」
女性は朧気ながらも辺りを見回し、俺やライオンを見て……そして自分の足を見る。
そして、思い出したのか大声で叫びだした!!
「うぅあ、あぁぁぁぁぁ、あしぃーー!! 私の足を食べないでぇ!!!!!」
手で頭を押さえつつ振り回し半狂乱の様になる女性。
髪が乱れ口からは叫び声が途切れず漏れる。
こ、これは仕方ねぇ! 誰だって生きたまま食われるなんて悪夢みりゃこうなるぜ!
俺は耳を塞ぎつつ、女性に対して鎮静作用のある魔法を掛ける。
「『カーム』」
暴れて叫んでいた女性だが、俺が魔法を掛けると次第に大人しくなっていき、やがて気を失って倒れてしまった。
「ふむ。 ルルはそう言った魔法も使えるのだな?」
「ああ、回復と言っても怪我を治すだけじゃないからな。 色々な場面を想定して習ってはいるぜ」
感心しているライオンに返事しつつ、
(師匠の……おかげだぜ。 今度会ったら素直に礼を言ってやるとするか)
俺は女性を背負う。
この部屋には他に誰もない。
恐らくだがほとんど避難民はギルドに入ってきたところのロビーにいたのであろう。
最初に開かなかった扉。
あそこも見て見ないとな……だけどその前に……。
「ライオン、頼むぜ?」
「うむ、任された」
ギルドのロビーから沢山の足音が聞こえる。
気を失った女性の叫び声を聞きつけたゾンビ達であろう。
ライオンが剣を抜いて俺の前を進んで行った。




