惨劇の中で
【ルルからのお知らせ】
つー訳で、今回もまた残酷シーンに注意だぜ!
まぁどうしてもこういう話には血生臭いものはあるからよ。
なるべくオブラートには包むけど、難しーんだよなぁ。
苦手な人は気を付けてくれよな!
「『アンチカーズ』」
道端で倒れている商人姿の男性。
俺が解呪してやると苦しそうな表情だったのが和らいでいく。
「ああ! ありがとうございます!」
商人の妻と名乗る女性が目に涙を浮かべてお礼を伝えて来た。
「ああ、良かったな。 もう大丈夫だ」
たまたま通りがかったから助けられたけど……タイミングが合わなかったら危なかったぜ。
商人はかなりの高熱でだいぶ衰弱していた。
もう少し遅ければ死んで……ゾンビになっていただろう。
「あ、あの……この先へ行かれるんですか?」
女性が心配気に尋ねてくる。
「ん? ああ、そのつもりだが……」
「そうですか……。 あ、あの辞めた方が宜しいかもしれません」
「あ? なんでだ?」
女性は一瞬だけ躊躇すると、
「この先の街はすでにゾンビが溢れているかもしれません……ので」
「は? なんだって!?」
ゾンビがでているのか!?
「私達は襲われる前にそこから逃げて来たんです、けど夫の具合が悪くなりだして……そこへ僧侶様が通りがかって下さったのです」
「その街は……もう手遅れだって言うのか?」
「いえ、まだ数人がゾンビになって……街の冒険者達が討伐しておりましたが……ですが、症状は多くの人に広がっていましたので……」
言い辛そうに言葉を濁らせる。
「くそっ!」
俺は立ち上がるとその街に向かって駆け出した!!
「あ、僧侶様!」
女性が慌てて止める様な事を言ってきたが、どんどん声が小さくなって行った。
並走するライオンが話しかけて来た。
「ふむ、街にむかうつもりか?」
「無論だ! まだ助けられる人がいるだろ!? 諦めっかよ!」
「もし手遅れだったら?」
「その時は……」
腰の杖をぎゅっと握り締める。
「そいつらを……解放のも俺の仕事だ」
「そうか」
それっきりライオンは黙り込む。
そして街が見えて来た……。
まだ遠いはずだが人々の叫ぶ声が聞こえてくる!!
「急ぐぞライオン!」
「ああ」
俺達は速度を上げて街へと走って行った!!
「あがぁぁぁぁ!!!」
「や、やめて!! 誰かぁ!? がっ!」
叫んだ女性の喉元にゾンビが食らいついた!!
「ごっげっ!」
喉から血を噴き出し……ゾンビ達がその血に群がる!
女性は髪の毛を鷲掴みされそのままガクガク振り回される、その度に糸の切れたマリオネットの様に体がブラブラと大きく揺れた。
そしてその体にもゾンビ達が齧り付いていく!!
「こいつ!!」
冒険者の一人が女性に群がるゾンビ達の首を刎ね飛ばす!!
「ウィル! もう無理だ、ここから撤退しよう!」
「しかし、まだギルドには避難した人達が……」
「このままじゃ退路を確保できない! 俺達もやられちまう!」
剣士である彼に、同じパーティの魔法使いが声を掛ける。
お互い倒してきたゾンビの血で染まり、体中真っ赤になっている。
普通は死ぬと血が固まり硬直してしまう、しかしゾンビは動き回る為か血が固まらない様だ。
おかげでまるで生きている人を斬り捨てている気分に陥る。
「渦巻く水流、万物貫く槍と化せ! 『トライデント』」
魔法使いの手から水が槍の様に放たれ、次々とゾンビ達を串刺しにしていく!!
「今だ! 俺達も……」
そこまで言った魔法使いの首がグルンと曲がる!
後ろから近づいたゾンビが無理矢理捩じったのだ!
「ドレイク!」
ウィルが声を掛けるもすでに彼の体にはゾンビ達が覆かぶさるように囲み、その姿が見えなくなっている!
そして気が付けば彼も建物の壁際に追い詰められていた。
ウィルは歯をギリッと食いしばる。
(こんなところで死ねるか!!)
左右から襲い掛かってくるゾンビ、その首を刎ねると正面のゾンビに蹴りをお見舞いする。
続けざまに再度右のゾンビに斬りつけた時だった!
ガギッ!
そのゾンビは中年の女性で首に金属のチョーカーを嵌めていた。
そこに剣が噛み込んだ!!
「な! 抜けな……」
次の瞬間、ウィルの腕にゾンビが噛みついた!!
「ぐあぁぁぁぁ!」
腕の肉を食いちぎられ思わず剣を放して後ずさる。
そして壁に寄りかかった。
(こ、ここまで……か)
ゾンビに囲まれ自嘲的な笑みが浮かぶ。
(まぁ……冒険者になった頃から覚悟していたことだ。 死ぬ事なんて……な)
目を閉じたウィル。
目を閉じるとより一層色々な物が感じられる。
一陣の風が吹き抜け、腕の痛みが和らぎ…………ん?
いつまで経ってもゾンビ達が襲ってこない。
訝し気に目を開けたウィルの前に見知らぬ二人の背中が映った。
一人は大柄な中年男性でマントに……上半身裸でブーメランパンツ姿。
しかしその体は筋肉が隆々盛り上がりかなり鍛え抜かれている。
そしてもう一人は長い髪の女性で薄汚れた僧侶服を纏っている。
しかしそんな服にも関わらず目を引くような美少女であり、気が強そうな勝気な顔をしていた。
少女が大声で叫ぶ!
「お前のマントの下はそれだったのかよ!? 普通の服はねーのか!」
「戦いとなると汚れてしまうではないか? それにこの姿の方が俺の肉体美を目に焼き付けることが出来る!」
「一緒にいる俺に焼き付いて悪夢でしかねーよ!! 服着ろ服!」
二人して怒鳴り合っているが、そんな最中にも関わらず迫りくるゾンビ達を薙ぎ払う様に倒していく。
男が手にした剣でゾンビの首を刎ねれば、少女は短めの杖をゾンビの頭に振り下ろしていく!
少女が俺に気付いたようで、
「お? 大丈夫か? 一応腕の回復はしたけど、他に怪我はしてねーか?」
「あ、ああ」
言われて気づいたが腕の傷がなくなっている。
「お前、この街の奴か?」
「い、いや。 たまたま通りがかった冒険者だ。 ギルドの要請でゾンビを駆除していた」
「そうなのか……他に仲間は?」
「……全員」
俺は首を横に振る。
「あ~~そうか、すまなかった」
少女はバツの悪そうに頬を掻くと、
「ひとまずここは俺達に任せて逃げろ。 あ、その前に他に無事な奴らとか知らねーか?」
「あ! ひ、避難している奴らがいる。 あの建物だ」
俺は冒険者ギルドを指さす。
冒険者ギルドには逃げ遅れた街の人達が避難しており、多くの冒険者達が守っているはずだ。
俺の言葉を聞くと、少女は嬉しそうな笑顔を見せる。
その笑顔はとても可愛らしく……知らぬうちに俺の胸が熱くときめく。
「よっしゃ! ライオン聞いたな? あの建物目指していくぞ!」
「ふむ、しかしその前にこいつらを何とかせねばな」
「おうよ! お前に前は任せるぜ! 俺はお前の背中を守ってやる」
「ふむ、その動きなら任せても平気か……では行くぞ!」
群がるゾンビ達を斬り払いながら二人組が冒険者ギルドに向かって行く。
剣もなく無力となった俺は街の外に向かう事にする。
走り出そうとしてもう一度あの二人に目を向ける。
(あの少女……また会えるだろうか?)
熱く芽生えた思いを胸に、俺は走って街の外に向かうのだった。




