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ライオンの提案


「こんな夜更けにうら若き乙女が一人。 少々不用心ではないかね?」


急に頭上から声が掛かり、見上げると変態ライオンが俺を見下ろしていた。

先程の格好から風呂で見たようなクリーム色のバスローブを羽織っている。

どこから持ってきたのか手にはランタンを携えており、暗闇の中煌々と明るく周りを照らし出す。


「なんだ、アンタか……」

「ふむ、先程の元気が嘘のようだな? 何かあったのか?」


俺は少し迷った。

コイツはあの村の住民だ。

先程の事を話すと気を悪くしないだろうか?


「こういう時は喋った方が楽になるぞ? 俺も何かしら力になっても良い。 お前には解呪された恩があるからな」

「あ~どっちかっつーと俺の方が助けられたけどな」

「フッ、あれはただのお節介だよ」


そう言って歯を輝かせる。


……全く! ほんとに不思議なヤローだぜ

色々考えているのが杞憂に思えてくる。


俺は心の中で苦笑すると、変態ライオンに先程の話を打ち明けた。


変態……ここまで来ると流石にあれだな。 素直にライオンって呼んでやるか。

ライオンは俺の話を黙ってじっと聞いていた。

話が終わってもそのまま暫く黙り込む。


(こいつ……目開けて寝てないよな?)

俺が心配になった頃、


「ふむ。 呪いを解きたいけど魔族が襲ってくるかもしれない……という事だな」

「あ、ああ」


一応ちゃんと聞いていたらしい。


「呪いを解けばいいではないか」

「は? おい、お前話聞いてたのかよ?」

「ちゃんと聞いていた。 要は魔族が邪魔なのだろう?」

「邪魔と言うか……患者達を巻き込みたくねーんだよ」

「ふむ。 では一つ提案しよう」


ライオンが人差し指を立てて、


「俺がお前を狙ってくる魔族を撃退してやろう」

「え? は?」


魔族を……撃退?

先程ライオンが魔族を倒したシーンが蘇る。


「い、いや。 物事はそんな簡単じゃねーんだ」

「しかし、お前が呪いを消さないと人々は確実に死ぬぞ?」

「そ、それは……」


た、確かにその通りだ。

魔族に襲われるのは可能性だが呪いは確実に死ぬ。


「だ、だけど、魔族だぞ? さっきは上手くいったかもしれないけど……それに確かにあんたは強かったけど……」

「安心しろ。 俺が必ず守ってやる」

「う……」


ライオンの言葉が師匠の言葉に重なって聞こえる。

『お前が王都に着くまで必ずこいつはここに留めておこう』



「泣いているのか?」

「う、うるせぇ! 泣いてねーよ!!」


俺は目をゴシゴシこすると、


「確かにこのままじゃ埒があかねー! え、えっとライオン……頼む。 俺を助けてほしい」


俺に付き合うという事はこの村を出るという事。

凄い我儘なお願いと言うのは分かっているが……それでもライオンの提案に縋りたい!


俺は人々を救いたいんだ。

俺の村の様な……両親の様な悲劇はこれ以上見たくない!!



ライオンは俺の言葉を聞くと、


「ふむ、俺から提案した事だし勿論構わん」

「すまねぇ! 恩に着るよ。  でも俺が言うのも何だが折角の家や村の生活を……」

「ふむ、気にするな。 元々俺は風来坊。 たまたまあの村に留まっていただけさ」


そう告げると「準備して来る」と言い残し村へと戻って行った。



……あ、そう言えばライオンって何者なんだ? 聞くの忘れてたぜ。


ライオンを待ちつつ街道沿いに座り込んでいると、



ザッザッザッ……


ライオンが戻って来たようで俺の前で足を止めた。


「おう、早かったじゃねー……」


固まってしまった。


近くに置かれたランタンに照らし出されたそれは……、


騎士団の茶色コート。

活発そうな童顔の顔と真紅の瞳。

黒味がかった緑色のバードテール。



「や、やっと見つけたッスよ!」


あのめちゃくちゃ足の早い奴だった。


「お、お前!」

飛び跳ねるように立ち上がり逃げようとした……が回り込まれる!


は、早すぎだろ!


「お、お前……俺を連れ戻しに来たのか!?」


俺の言葉に……おろ? 首をかしげてやがる。


「え、え〜と、何なんスかね?」

「いや、俺に聞かれても……」

「団長と副団長からは貴方を見張る様に言われただけッス」

「は? 見張るだけなのかよ?」

「え? う〜ん?」


目の前の少女は腕を組むとウンウン考え始める。


それを見ながら……俺はそぉ〜っと街道沿いの木に隠れる。

木の後ろに回り込んだだけだが、少女は未だに俺がいなくなったことに気付いていないようだ。


アホな娘の様だが、俺を連れ戻すとか言い出されても困るしな。

ひとまず騎士団である以上離れたほうが吉だろう。



「あ……あー! い、いなくなってるッス!」

今気付いたらしく慌てるような声が聞こえる。


「ど、どっちに行ったッスか!?」

暫く慌てて探すような音がしていたが、


「うー、たぶんこっちッス! 待つッスよー!」


そう叫ぶと何処かに走って行ってしまった。



「ふぅ、アホな奴で助かったぜ」

「ふむ、何がアホなのだね?」

「うっひゃぁぁ!!」


いきなり耳元で声がして思わず叫んじまった!


「クッ! お、脅かすんじゃねーよ!!」

「いや、君がここに隠れているから何事かと思ってな」

「こ、これには、まぁ、色々あんだよ」


騎士団に追われているなどあんまり体裁のいい話ではない。

俺はお茶を濁すと、


「そうだ! そう言えばアンタは一体何なんだ? 魔族をいとも容易く屠りやがって」


話題を変えつつ気になることを聞いてみる。


「俺はライオント……」

「名前じゃねーよ! それは聞いただろうが!」

「ふむ、では何を知りたいんだね?」

「正体つーか、何の仕事をしているのかって言うか……」

「ふむぅ〜。 悪いがそれは言えないのだ。 秘密ってやつだよ」


口に人差し指を当てシーとジェスチャーする。

いい年したおっさんだけに正直ウザい。


「さぁ、かくれんぼが済んだのならそろそろ行くか?」

「あ、ああ。 準備出来たのか?」


ライオンは返事の代わりに背負った鞄を俺に見せる。

かなり少ないようで俺が一抱えできそうなほどしか無い。


まぁ、良いか。

騎士団の奴も居なくなったようだし……俺は街道に戻ると、


「えっと、改めてよろしくな! ライオン」

差し出した手をライオンがニッと笑顔を浮かべて握る。


「こちらこそ。 よろしく頼む僧侶殿」


(……そう言えば俺名乗って無かったわ)


慌てて名乗る俺だった。


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