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知らない礼儀


「神の名のもとに祝福を。 彼の者に癒しと平穏を……『ヒール』」


俺が回復魔法を唱えると、王子の体の傷が見る見る治っていく。

さすがにボロボロになった服までは直らないが……。



「本当にルルは回復魔法がつかえるのですね」


ロロが感心したような口調で告げる。

囲む様に見ていた城の衛兵やメイド達からも「おおっ!」というどよめきが溢れた。


「ありがと~ルル」


ララが嬉しそうに言ってくる……がお礼を言われても俺の心境としては複雑だった。

……と言うか、俺が殴り飛ばしたのが原因だし、俺が治してやんねーと。



「うっ……」

王子が呻き声を漏らして、目を開けていく。


「王子! 大丈夫ですか王子!?」

「一体何があったんですか? 魔族の仕業ですか?」


気が付いた王子に城の者達が口々に声を掛ける。



意味が分からない様な……不思議そうな顔をしていた王子は辺りを見回している。


俺は王子の前に進むと、


「わりぃ。 まさか王子とは思わず……」


謝る俺にララとロロが「え? え?」みたいな顔を向ける二人。


「私は一体……」


王子は俺が声を掛けるも混乱しているようで、集まった人々を忙しなく見ている。

すると傍にいたメイドが、


「王子! この方が王子の傷を癒して下さったんですよ」

と、俺の方を指さした!


メイドにより王子の視線が俺に向けられる。


そうして俺をしばらく見ていた王子の目がカッと見開かれた。

どうやら何があったか思い出したようだ。


「う」

「う?」


それだけ告げると、王子は白目をむいて再び気絶した。

見守る城の人達がまたしても声を上げる。


「王子ーー!!」

「『う』って何!? 王子、『う』ってなんですか!?」

「だ、誰か何があったかを説明してくれ~~!!」


王子が気絶した際に残した一言で再度混乱に落ちる人達。


「『う』ってなんだろうね~?」

「これこそダイイングメッセージですよ!」

「……ロロ、王子死んでないからね?」


アホな掛け合いをしつつも二人して首をひねっている。



い、言えねぇ!

っつーか言い辛くなっちまった!!

とは言え黙っている訳にも行かねーか……仕方ない。


「ララ、ロロ、ちょっと話があるんだが……」


俺はララとロロをそっとバルコニーに呼び出すと、正直に何があったか話したのだった。





「えぇ! じゃあルルさんが?」

俺話を聞いてロロが目を丸くする。


「王子をぶっ飛ばしてガラス戸を突き破り壁に叩きつけてしまったって事~?」

「あ、ああ。 いや、わざとじゃねーんだぞ? あの王子がいきなり変なことしてくるから」

「変な事って?」

「なんか天使だなんだとか言った後で、俺の手の甲にせ……」

「せ?」


うう、あんまりこんな言葉いいたくねぇ!


「せ……接吻しようとしやがったんだよ!」

「ああ……そう言う事」

「そ、そう言う事ってなんだよ!? せ、せ、接吻だぞ?」

「ああ、うん。 分かってるわよルル。 手の甲にされそうになったんでしょ?」

「そうだ! ……気が付いたらぶん殴ってた」

「貴方なかなか凄いわね」

「そ、そうか? そんな風に言われた事あんまりねーから……」

「……言っとくけど、褒めてないからね?」

「え?」


凄いって誉め言葉じゃないのか?


「それより……困ったわね」

「困ったのは俺だぜ!? いきなりいやらしい事されそうになったんだぞ!」

「いやらしい事って……貴方ねぇ」


ロロが呆れた目を俺に向ける。

ララがのんびりとした口調で、


「手の甲に接吻するのは挨拶なんだよ~? 女性に対する敬愛や尊敬を意味するの」

「……は? う、嘘だろ? そんなの聞いたことねーよ!」

「貴族とか王族とか……階位が上の人しか知らないからね~、ルルが知らなかったとしてもおかしくないよ~」

「そうよねぇ……ルルも悪気があった訳じゃないのよね。 でも王子も挨拶のつもりだったから……」


ロロが腕を組んで考え込む。


「まぁ正直に言って謝るしかないよ~。 王子なら分かってくれるって」

「ん~まぁそうよね。 私達も擁護するから」

「う、わ、わりぃ。 まさか……挨拶だったなんて……」


知らなかった……っくしょー! 本当だったら師匠に色々教えてもらうはずだったのに!

そんな挨拶聞いたこともねーよ!!


っていうか、王族や貴族の挨拶って過激すぎだろ?

接吻ってそんな軽い物なのか?

うぅ……次そんな目にあいかけたら俺自重できるかなぁ……




俺達が廊下に戻ると既に王子や集まっていた人達はいなくなっており、メイド達が割れたガラスを片付けていた。


う、これも俺の所為だよなぁ?


「すまない! 俺も手伝うぜ」


メイドの一人に近寄って箒を借りようとしたが、


「駄目だよルル」

何故かララに止められた。


「ルルがそんなことをしたらメイドさん達が怒られちゃう」

「うぇ!? なんでだよ!? 俺手伝うだけだぞ?」

「お客さんに掃除をさせていたって思われちゃうんだよ」

「そ、そう……なの?」


尋ねたメイドが小さく頷く、


「でも、ルル様。 ありがとうございます。 ルル様は優しくていらっしゃいますね」


ニコッと笑顔を見せるとメイドが後片付けに戻って行く。


「あ、いや、俺がしたことだから……」


言い辛くなり小声になってしまった。

だからかメイドには聞こえなかったようだ。


「良いのよルル。 貴方が知らない事なんて沢山ある。 失敗しながら覚えて行けばいいから」

「そうだよ~。 次頑張ればいいんだよ」

「うぅ、すまねぇ。 二人とも」


俺の言葉に二人は顔を見合わせて笑顔を見せた。


「さぁ、もう少ししたら王様への謁見だから」

「私達が礼儀を少し教えるね~」


二人に連れられて場所を変えると、王様との謁見までの間、礼儀などを習ったのだった。


……しかし思ったんだがいちいち面倒だよなぁ?

普通に「おっす」とかの方が楽だと思うんだけどなぁ……。

王様や貴族っつーのも挨拶一つで大変なんだな。


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