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反射的なら仕方ない


「僕達も準備してくるから~」

ララがのんびりとした口調で告げてロロと一緒に王城の廊下を進んで行った。


お前等今から準備かよ!

俺が準備している間に準備しとけよ!!



仕方なく一人廊下に取り残された俺はキョロキョロ辺りを見回す。

右にも左にも赤いカーペットが廊下に沿って敷かれており、壁のあちこちには絵画がいくつも飾られている。

壁は一面白く様々な装飾を施されており、さすが王城と言う感じだ。


そして今、俺の目の前には大きな扉がど~んとその姿を見せている


この扉の向こうが王様と謁見する部屋なんだっけか?

まったく、俺を一人廊下に残しやがって……来るまで暇だぜ。



(お? あそこは……)


辺りを見回す俺の目に、明るい日差しが廊下に差し込んでいるのが映った。

どうやら廊下に面したガラス張りの扉があるようだ。


(あそこから外が見れそうだな)

気分転換も兼ねて城からの景色とやらを見て見るか!



廊下を進みガラス張りの扉に手を掛ける。

鍵などは掛かっておらず、すんなり扉が開く。

それと同時に外から涼しい風が入り込んだ。


「おお~やっぱり外だぜ!」


そこは少し広めのバルコニーとなっていた。

石造りだが、こちらも白く塗装されており手すりや柱などに装飾が施されている。


そして手すりの向こう……その世界に俺は心奪われた。



「……すげぇ……」



気付けば手すりまで歩み寄りその景色をのめり込むように見ていた。


王都フィリムドは広大な草原の中に位置する。

その草原が遠くまで続き、森が見え、そして遥か彼方に大きな山々が連なって見えている。


何処までも続くような景色。

こんな高い所から遠くまでの景色を見たことが無かった。


やっぱり……世界って広いぜ。

俺が見て来たもの……この国だけでも広いと思うのに、世界からすればこれだけの世界もほんの一部なんだ。

この先に見たことない場所が沢山あって……沢山の生き物がいて、そして沢山の人々がいる。


そしてその人達が……今苦しんでるんだ。

魔王の呪いで。


(チッ! 早く謁見とやらを終わらせてみんなを助けに行かねーと)



苦しむ人々を思い出して俺が深刻な思いに浸っていると、聞いたことのない声が耳に届いた。


「これはこれは……その憂いを帯びた表情。 なんとお美しい」


俺一人だと思っていたが、いつの間にかすぐ傍に誰か来ていたようだ。


なんだぁ?


振り返った俺に視線を向けている青年が一人いた。

金髪碧眼の美青年と言うべきであろうか?

整った顔立ちに切れ長の瞳。

身長も高く体型もがっしりしているようだ。


青地に金の刺繍が入っ服を着ており、大きめのマントを羽織っている。



青年は俺と目が合うと微笑みかけ、


「間近かで直接拝見させて頂くと尚美しい。 まるで神の遣わした天使の様だ!」


俺を見ながらそんな事を言い始めた。


コイツ……頭大丈夫か?

天使の様だって……お前天使見たことあんのかよ?


俺の不審者を見る視線にも気づかず、青年は酔ったように話を続ける。


「おお! 私の天使よ。 良ければ貴方様のお名前をお聞かせ願えませんか?」

「……」


さて……返事すらしたくないけど、どうしようか?

そもそも俺は天使じゃねーからなぁ。


よし! 無視しよう!


俺は青年を無視して再び景色に目線を向ける。


お……あれシーラの家じゃねーか? あいつの家って裏手牧場なのかよ!

確かにホットミルクは濃くて美味かったしな。


と、青年がいきなり俺の視界に割り込んできた!!


(なんだこいつ!?)


「おお! 是非お名前をお聞かせ願いたい!!」


何だか必死そうだし……凄くうざい。

折角凄い景色を見れていい気分だったのに……なんか最悪になりそうだ。



俺はクルリと身を返すと、城の中に戻ろうと……

こいつ!! 回り込みやがった!!


素早く回り込んで片膝をつくと俺に向かって手を差し出す青年。


そんな手を出されてもなぁ? 何か欲しいのか? でも俺なんも持ってないし……。


俺が困惑していると青年は俺の手を取って……手の甲に顔を寄せた。




先に言っておくぞ?

俺には悪気もこうしようといった考えも意思も無かった。


そう……反射的だ! つい反応してしまうあれだ!


だから……俺の手に顔を近づけて来た青年の顔面を殴ったのは反射的だし、殴られてのけ反った顎に蹴りを叩きこんだのも反射的。


そして、


「なにしやがんだ!! この変質者の変態ヤロー!!!」


と怒鳴ったのも……あ、いや、これは意志入ってるわ。

そう感じたしな。



青年は物凄い勢いで吹っ飛ぶと、そのまま後ろにあるガラス扉をぶち破り廊下の壁に叩きつけられバタリと倒れた。


そのただ事ならぬ音に廊下に面したあちこちの部屋から人が顔を覗かせる。



「な、何事!」

「あああ! お、王子!」

「フェイ王子! しっかり!! 一体誰がこんなことを!!」


出てきた人たちが悲鳴を上げながら青年に駆け寄っていく。



……なんかあの変態、王子って呼ばれているような?



「あ、ルル~! 無事だった~?  なにがあったの?」

慌てて走ってくるララとロロ。

俺の前に来ると焦っている様な顔つき……でものんびりした物言いでララが俺に聞いて来た。

二人して何事?と言う様な顔を俺に向けている。


「あ、え~と、そ、それはだな……」


俺が言い淀んでいると、


「お、王子!! どうしました!?  王子しっかり!」

他の人達と同じ様に青年に気付いたロロが王子と呼びつつ駆け寄った。



あ~~やっぱりあれ王子だったかぁ。

これは……どうしようか? 


先程ロロにはそんな気はないって言い切ったけど、今なら言えるわ。


「逃げたい」


倒れている王子、割れたガラス扉、集まる人々……俺はこの場から走り去りたくなっていた。


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