馬子にも?
「……なぁ、おい!? これは何の罰ゲームだ?」
俺は怒りを押し殺して震える声で問い詰める。
俺に気圧されたのか周りの女性達が青い顔で後ずさっていく。
「こらこら~城のメイドさん達を脅さないの」
ララが俺の前に立つと、
「それに罰ゲームじゃないよ。 ルルにそれ似合ってるし」
「うるせぇー!! こんなチャラチャラした服着れっかよ!! 僧侶の服を返しやがれー!」
俺は大声で喚きたてた。
王城に着いた俺は、王に謁見する前に身なりを整えることになった。
ララとロロは報告があるからと俺から別れ、俺はメイドにより城の風呂に案内され旅の埃や汚れを落とす。
服を脱いだ時まじまじ見て気付いたが……俺の服はマジでやばかった。
門兵と魔族により負傷をおった為、あちこちが血に染まりもはや純白とは言えない状態だった。
かなり丈夫なのか破れたりは無かったが、汚れも酷く門兵が俺をあんな目で見つめて来たのも分からんでもない。
……にしても暴行は酷かったがな。
そして風呂から上がった俺に準備されていた服!
こいつだよこいつ!! これが問題だった!
ひらひらしたスカートに胸元が大きく空いたデザイン。
色なんてピンクだぞ!? なんだよこれ? どこをどう見て俺に似合うと判断したんだこれ?
かと言って風呂上りに裸でいるわけにも行かず、下着とこの服を着ると、与えられていた部屋までダッシュで戻った。
こんな姿恥ずかしくってみせらんねーよ!!
戻った部屋ではメイド達が俺を待っていた。
そのメイド達に怒りの声を上げた所で、いつの間に来たのかララが割り込んできたのだった。
「ルル、君の服はかなり酷い有様で、あの服で王様の前に出すわけにはいかないんだ~」
「だからってこれはないだろう!? 俺を何だと思ってんだよ! 貴族じゃねーんだぞ!」
「……ルル。 君の事は神殿から連絡が来ていたよ、確認だけど君は『聖者』スキルなんだよね?」
「あ、ああ。 そう言っただろ? ……あれ? 言ってないか? まぁいいや!」
「世界でただ一人しか持つことの許されないスキル。 君が死ぬまで『聖者』のスキルは君以外に受託されることはないよ~」
「そう聞いたぜ?」
「『聖者』スキルを持つものは、世界を救う力を秘めているって聞いたことない?」
「知らねー!」
まぁ実は知っている……つーか、師匠が神殿で話してくれたしな。
「要はそれだけ君は大事だって事。 そしてそれに相応しい服を……」
「だからそれが間違いっつーんだよ! 俺は僧侶だ! チャラチャラした服を着るのが仕事じゃない」
「王様に謁見する以上、服装は大事ですよ」
急に横から声が掛かる。
見ると部屋の入口で腕を組んでロロが立っていた。
「むぅ~どういう風に大事なんだ?」
「国の偉い人に会うんですから、それなりに着飾った格好でないと失礼にあたります」
「むぅ」
「それに世界の中でもたった一人の『聖者』です。 そんな方を国は大事に扱っていないのかと言われてしまいます」
「ぐぬぬ……せ、せめてスカートだけでもなんとか」
「駄目です」
ちきしょー! 即却下かよ!
こんな事なら城に来なきゃよかったぜ!
「……もしかしてルル。 貴方逃げようとか思ってます?」
「は? 逃げるなんて思ってねーよ!」
来なきゃ良かったと後悔はしてるけどな!
「ですよね? まさか服ごときで恥ずかしいから逃げ出すなんて……いやいや、まさかそんな!」
くっ! なんて嫌な言い方を……
「逃げたりしねーよ!」
「ですよね? どんな服であれ逃げるなんてかっこ悪いことしませんよね?」
「当たり前だっつーの! 俺はどんな服からも逃げたりしねー!」
「……そういう事ですので、メイドの皆さん、あとは頼みましたよ?」
「!?」
し、しまった! ハメられた!!
「お前そんな卑怯な手を……」
「はい? まさか今更嘘でしたとかいいませんよね?」
ぐぁ! ロロのヤツ! なんつー笑顔だよ。 完全に勝ち誇りやがって……。
「……わーったよ! こうなりゃ腹括ろうじゃねーか」
「さすがルル! 大丈夫、悪い様には致しません。 ね?ララ」
「そうだぞー。 よくわかんないけど、ロロが言うならその通りだよ」
……戦闘以外でララが当てにならない事は良く分かった。
メイド達が恐る恐る近寄ってくると、俺の容姿を整え始めた。
う……流石にそんな怖がられると心が痛いぜ。
「……悪かったな」
「?」
キョトンとするメイド達に、
「いや、怒鳴ったりしたっつーか、脅かしちまったっつーか……まぁ怖がらせたみてーでよ」
メイド達は顔を見合わせると少し微笑みあって、
「いえ、ルル様は大事な方と聞かされておりますし、それに悪い方ではないと思っておりますので」
「そうです。 先程から話をされるララ様ロロ様の様子を見ていれば分かります」
「それに失礼ですがお化粧とかもしたことない様ですし、不慣れゆえ色々不安がある様にも感じますので」
なんか……謝ったとたんメイド達が一気に話しかけて来たな。
こいつら打ち解けるの早すぎだろ!?
う~ん、みんな良い奴っぽいし、ちと悪い事したなぁ……。
ここまで来たらと覚悟を決めて、メイド達に任せることにした。
「おお~馬子にも衣裳ってやつだね」
「ララ! 使い方が微妙に違うわよ! ルルは元々可愛いらしかったし」
準備の終わった俺を見て二人が歓声を上げる。
う~~そうなのか? なんか全然落ち着かないんだが?
髪は別にいい。 櫛で梳いて頭の後ろで軽く髪留めで止めたぐらいだしな。
長さもあったから日頃から梳くだけはしていたからあんまり違和感ないし。
ただ問題はこの化粧ってやつだ。
目を閉じさせている間に色々付けたり塗ったりしやがって……なんつーか息苦しいというかぞわぞわするというか……唇もやけに赤く見えるし。
服は先程のドレスで……まぁこれは我慢してやる。
一番の問題は靴だ!!
なんだこの小さいの! めちゃくちゃ窮屈なんだが?
足が痛くなりそうだ。
「なぁ……靴だけでもなんとかならないか? 足が痛くなりそうで」
「似合ってるとは思うけど……まぁ痛くなるのは困るわよね?」
靴だけは少し大きめの平たいものに変えてくれた。
色は赤しかないとの事。
おかげでピンクのドレスと赤の靴と言う、派手な格好になってしまった……。
早く王様への挨拶を終わらせて脱ぎたい……。
寧ろ旅に出させてくれ。
俺は心の中で盛大に溜息をついていた。




