囚われて……
「おいおい、一体こりゃ何の真似だよ?」
普通の街の住民から、冒険者姿の者、もしくは門番としていた者までが俺達を取り囲んでいる。
そしてそんな中、一人の青年が前に出て来た。
それはあの青年、ワットだった。
「……すみませんが、僧侶様にはこの集落で大人しくして頂きたいのですよ」
「どういうつもりだ?」
「どうもこうも今言った通りです。 この集落では未だ疫病に掛かっていない者がおります。 貴方の話では一度掛かって治療されれば再発はありませんが、一度も発症していないと発症する可能性があるのですよね?」
確かにそれは先程俺が言った通りの内容だ
しかしだからといってこれは一体……
しかし俺の疑問は次の言葉で解決する。
「大事な僧侶様を、ゾンビの徘徊する街に送り出すわけにはいかないのですよ」
「……盗み聞きとは感心しねぇな?」
「何か吹き込まれていたようでしたのでね」
「吹き込まれて……か。 大事な人を救いたいって気持ちをそう解釈するのか?」
「大事な人を守りたい……それはここにいるみんながそう思っている事ですよ」
ワットは周りを取り囲む住民達を見回した。
「だから、こそ疫病を治療できる僧侶様をむざむざ殺させる訳には行かないのですよ」
「……別に死ぬとは限んねーだろ?」
「確率があるだけでも問題でしょう?」
「これは何の騒ぎですか!?」
テントから出て来たメリルが声を荒げる。
どうやら騒ぎを聞きつけて出て来たらしい。
「メリルさん。 悪いですが僧侶様の身柄を押さえさせていただきます」
「なんですって?」
「このまま街に行ってしまえば僧侶様は犬死だ。 疫病を治せる僧侶様をそんな危険な場所には向かわせられない!」
その一言で察したのか、メリルは大人しく口を閉ざす。
しかし、俺はそれを聞き入れて大人しくする方じゃない。
「……だが悪いな。 俺は約束したんでな」
「ええ、貴方の性格上素直に聞きそうにないので……」
ワットが手を挙げると、囲んでいた人々が分かれて武器を突きつけられたウィル達を見せられる。
「お前ら!」
「すみません。 私達もこんなことはしたくないんです。 それでもこうまでしてでも……私達には貴方が必要なんです!!」
……ワットを含めこいつらの気持ちもわかる……分かるが……
握りしめた拳を震わせ……しかし今はどうしようもない
俺はフッと力を抜く
その様子を見て、
「……すみませんが、こちらのお仲間は私達に管理させて頂きます」
そう言ってライオン、リリ、アルト、ボスとも引き離された。
「僧侶様は別のテントをご用意させて頂きますので……」
そう言ってワットが合図をすると一人の女性が歩み出る。
「ごめんなさい。 では、こちらに……」
そう言って俺は別なテントに案内された。
みんなとも引き離され、一人こじんまりとしたテントに入ると、
参ったぜ……一体どうすればいいんだ
急がないとシュウの言っていた幼馴染の奴らが……
テントの入口には影が映っている。
チッ! 見張りまで立てやがって!!
流石にこれは……まずいな
俺一人で……仲間を人質に取られ軟禁状態、どうすりゃいいんだ?
残された時間もなく、策もない……俺はテント内の簡易的なベッドに腰かけ腕を組んで考え込んだ。
「よぉ? 交代だぜ?」
「おお、わりぃな」
テントの前で声がして見張りが入れ替わったようだ。
入れ替わる前にしっかりとテントの中をのぞいてきやがる。
俺は女なんだが? そんな勝手にのぞくんじゃねーよ!
しかし……これじゃ抜け出してもすぐにバレちまうな……えらく律儀な見張りだぜ
俺は部屋の中を見回した。
なんか役に立ちそうなものはないか?
……えーっと、ベッドに枕、シーツに……木箱のテーブル、椅子、ランプ……これはなんだ?
部屋の隅にあるチェストを開けると中には毛布が複数入っていた。
恐らく寒くなった時に使うのだろう。
俺はテーブルの上に乗っているランプに目を向ける。
蝋燭の火が揺らめき、近くには予備の蝋燭もあるようだ。
……まぁ、仕方ねぇか。 住民の狙いは人質の命じゃなくて俺の束縛のハズ。
俺がいなくなったからって無暗に仲間達に危害を加えることはないだろう。
俺はここから抜け出る算段をし始めた……。
「交代の時間だ」
「おう、頼むぜ。 立ってるだけってのも暇で辛えな」
腕を伸ばして背伸びをすると体がバキバキと音を立てる。
「変わりはないか?」
「ああ、大人しくしているぜ。 仲間達も別々だし、一人じゃどうしようもないだろうからな」
一応テントを捲るとベッドに横になっている僧侶服がテーブルの灯りで見えた。
「諦めて寝た様だな」
テントを閉めると、
「じゃあ、頼んだぜ?」
「ああ」
そう言って見張りを代わった。
交代して新しく見張りになった男はほくそ笑む。
仲間達が人質になっている以上、あの僧侶は逆らえないだろう……つまり言いなりって訳だ
いくら気が強くても所詮は女、結構な上物に見えたし……もう少し夜が更けたら……楽しみだ
そして怪しい眼差しを閉じられたテントの入口に向けたのだった。




