暗闇の中で
すみません、一部矛盾表現がありましたので修正いたしました(4/20)
内容に大きく差はありませんが、申し訳ございませんでした。
星も月も出ていない真夜中。
辺りが静まり返ったのを見計らうと、見張りの男はテントの入口をまくった。
中では僧侶が大人しく寝ているようだ。
テントの中に入ると入り口を閉める。
そして横になる僧侶に近付こうとして……僧侶が動いたように見え慌てて動きを止める。
そしてしばらくそのまま様子を見ていたが……動いたように見えたのが蝋燭の灯りによるものだと気づいて再び近付く。
そうして掛布団を静かにめくると……僧侶服に手を掛け……そこで気付いた。
「な、なんだこりゃあ!!!」
僧侶服の中に詰め込まれていたものは毛布で……それがまるで寝ている様に見せかけられていたのだ。
「なぁ!? あ、あいつはどこに!?」
キョロキョロ辺りを見回すと、テントの一部が切り裂かれてチェストで隠されているのを見つける!
「やっべぇ! 逃げられた!!」
見張りの男は大慌てでテントを飛び出したのだった。
「……なるほどなぁ。 ゾンビは感知だと灰色になるのか」
俺は地面に立てていた杖を持ち上げると膝を払って立ち上がった。
街中にいる幼馴染とやらまで感知が届けばよかったが……街の外からだとやはり無理なようだ。
しかしそれでもこの前魔力が溢れたこともあって、感知の範囲が桁外れに広がっていた。
おかげで今は二百メートル程度までは感知できる様だ。
……はぁ、しっかしどっかに服とかねぇかなぁ?
俺は今、シミーズと下着姿という恰好だ。
僧侶服を囮につかった為こんな服装となっており、暗い夜でも白い所為でかなり目立つ。
目立ってしまう故、出来れば服が欲しい所だが……まぁ時間もないしこのまま行くか……
幸い感知したことでゾンビがどこにいるか分かったからな
頭の中に浮かんだ映像を思い返す。
人は白っぽく、魔族は赤、ゾンビは灰色……感知範囲にはゾンビしかいなかった。
俺はゾンビ達の場所を避けて街の中へと忍び込んだ。
薄暗い中、暗闇に慣れた目を凝らして隠れ進む。
この街はちょっとした高い建物が多い。
俺としては屋上や屋根を伝っていく作戦だったのだが……
侵入した建物内の階段途中に、どうしても一体邪魔なゾンビがいる。
出来れば戦いたくはないのだが……先程から待っていても退く気配がない。
……仕方ねぇ、バレねぇように一瞬でケリをつける!
自身に『キープ』、杖に『ガード』を掛けて忍び足で近付くと、
ていや!!
声には出さず心で叫び、気合を込めてその後頭部に杖を振り下ろした!!
この建物が宿屋だったのか……給仕姿のゾンビは後頭部をへこませるとそのまま壁に激突して……壁にめり込んだ!!
「マジかよ……」
その衝撃に思わず声が漏れた。
こんなに威力が上がるとは……『キープ』と『ガード』の組み合わせやべぇな
心強いったら心強いが……
今の衝撃音は結構響いた。
あちこちからこの建物に向かってくる足音が聞こえる!
俺は慌てて階段を上り屋上へ向かって行った。
屋上に出ると、隣の建物の屋根や屋上が同じ高さの位置にある。
隣家との間が狭いのもあり楽々移動できそうだ。
跳躍して隣の家の屋根に飛び移り……そしてまた次の屋根に飛び移り……俺は街の中心に向かって進んで行った。
さてと……問題はここか
進んで行った俺が目を向けた先、そこには家がなくこの街の中心である大通りの十字路が見えている。
そしてその大通りの反対側、十字路の角に自警団の建物が立っていた。
ゾンビ達の襲撃を受けたのかドアは壊れ、窓ガラスは全て割れている。
近くには倒れている人達の姿も見えるが……動かないところを見ると生きてはいないだろう。
大通りはふらつくゾンビ達が彷徨う様に歩き回っている。
薄暗い中蠢くようなその姿は、ざっと見て50から100はいるだろう。
流石の俺もこの数を一人では無理だ。
せめて誰かと協力できれば……
とは思うがない物ねだりしても仕方がない。
ひとまず俺は今いる建物の一階に降りて感知を試みることにしたのだった。
杖を地面に当て魔力を流していく……頭の中を灰色の影が埋め尽くすように浮かび上がる
そんな中、自警団の建物の方角。
白とグレーが混ざったような……そんな影がいくつか浮かび上がった。
初めて見る形状だけど……これってもしかして……ゾンビになりかけているって事か?
感知を止めて目を開く。
もしそうだとしたら……まだ間に合うかもしれない!
なんとかゾンビの群れを躱して自警団の牢に行かなくては……
暫く考えたが……一つの案しか思い浮かばなかった。
しゃーねぇ! 前回と同じ手で行くか!!
俺は建物の中にある物を物色し始めた。
ガランガラン!!!
大きな音が街中に鳴り響いた!!
ふらふらとしていたゾンビ達が、一斉に音のなった方へ走り出す!!
そして通りのゾンビの大半がいなくなった。
『音を出る物を遠くに投げるぞ囮作戦』が上手くいったようだ。
よっし! 行ったか? 行ったよな??
俺は隠れていた建物から飛び出し大通りを横切ると自警団の建物に滑り込む!
中に入った瞬間、硝子を踏んでパリン!と音が鳴り響いた!
一瞬ビクッとしたが……ゾンビ達には気付かれなかったようだ。
建物内は外よりも暗く、暗闇に慣れた目でも見えづらい。
仕方なく手探りと足で探りながら一歩一歩確かめながら進んで行った。
ん? これは……
偶然にも手がドアノブに触れる。
そっと回してみると鍵などはなくスムーズに回りドアが開いた。
ここが牢へ繋がっているかは分からないが探して見るしかない。
ドアを潜り抜け部屋の中へと進んで行く。
しかしドアを開けた先も真っ暗で……何も見えない。
万が一に備え『キープ』『ガード』を唱えると、自身と杖が真っ暗い中ボウッと淡く光る。
頼りない光を元に進もうとした、その時、
コツン
俺の足……つま先が何かに当たった。
その瞬間!!!
「がぁぁぁ!!!」
叫び声と共に俺の脛に痛みが走り何かが噛みついた!!
「っつぅ!!」
思わず出かけた悲鳴を飲み込み、そのものがいるであろう場所に杖を振り下ろす!!
ゴシャッ! という手ごたえと共に足への激痛が収まった。
くそっ! 足元にゾンビがいたのか……
痛む足に回復魔法を掛けようとしたが……そんな俺の耳に部屋の中からゾンビの「ガァァ」「ゲエェェ」といった声が聞こえ始めた……




