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バロックの街


「へ~ここがバロックの街かぁ!」


俺は塀に囲まれた街に目を向ける。

街の中は活気……ではなく活発的に動き回る者達で溢れている。



「がぁぁぁぁ」

「げぇぇぇぇ」




「……ゾンビだらけッスね」

「……」


リリが改めて口に出す。


そうだよ! 街の中ゾンビで溢れてやがるよ!!

どーなってんだよ!!


「……どうするよ? 依頼主様」

「……」


本当ならゾンビを救済したい。

しかし何体のゾンビがいるか分からない以上仕掛けられないし、街全体を考えると俺達だけで勝てるようには思えない。


「……次の街ってどこになるんだ?」

「次はここから北東にあるみたいですぜ、姐さん」

「確か王都を中心に街が周りを囲んでいるんだったな?」

「その通りですぜ、だから北西に行くと王都がありますね」


ダーテンハルト、バロックの街は王都からそれぞれ南西、南東に位置する街となる。

今バロックから王都を中心に反時計回りに進んでいる形だった。


「王都を経由していく?」

「ん~~……ライオン、食料とかの残りは?」

「まだ大丈夫だ」


荷物を多く背負うライオンから返ってくる。


「だったらこのまま次の街を目指そう。 アルトの事もあるしな」


ダーテンハルトの事を話すには王都周辺の街を治める五大貴族の方がいいだろう。

バロックの街にもいたはずだが、この状況じゃ探しようがない。


俺達はバロックの街を大きく迂回して進む事にしたのだった。






「うぅ~……今夜こそは宿で柔らかなお布団だと思ったのにぃ」


ノエルが駄々っ子の様な声を出す。


「ま~ま~野宿も良いものですし。 旅行みたいで楽しくない~?」

「それならいつもしてるじゃない! も~! 私はふわふわの布団で寝たいの!」


そんな会話を聞きながら旅を進める。


まぁ俺はずっと旅してきたし、そんなに布団がどうとかは思わないんだけどな。

ノエルとかは冒険者だしクエスト以外はいつもは街で寝泊まりしているのか?

……冒険者か~~


「なぁ、ウィルちょっといいか?」

「良くなくてもルルなら良いぞ」

「ん?」


意味の分からん返事が返ってきた。

まぁ大丈夫って事だよな?


「冒険者ってどんなものなんだ?」

「冒険者についてってことか?」

「ああ。 俺はギルドに頼んだりはするが冒険者じゃないだろ? でも中には僧侶や神官で冒険者だった奴もいるみたいだし……」

「そうだな。 僧侶や神官は祝福された魔法……つまり回復魔法を使えるからな。 生死が関わる冒険者の中では大人気だ。 人気があり過ぎて万年不足しているし、いないパーティの方が多いんじゃないか?」

「なるほどなぁ。 確かにクエストとかではちょっとした怪我でも死に繋がるかもしれないからな」


ウィルがシャツの中から一枚のカードを引っ張り出す。


「これが冒険者カードだ。 色々な情報が載っていて登録されている」

「へ~、見てもいいか?」

「勿論だ」


手渡されたカードは金属製の小振りなカードだ。

白地に青い字で色々な情報が記載されている。


え~と? 何が書いてあるんだ?

名前……年齢……出身地……住所……職業……所持スキル……ランク……クエスト達成率なんかもあるのか!


「ありがとな、色々載ってんだな」


カードを返すと、


「どういたしまして……役に立てて良かった」

「あのなぁ……」


それだけで嬉しそうなウィルに呆れてしまう。


好かれるのは嬉しいがこれだけでそうなるものなのか?

俺には分からないぜ……


そして改めて冒険者の事を考える。


しかし……冒険者ってのも楽しそうだな

今はそんな暇はないが、落ち着いたら将来の仕事にでもしてみるか?

僧侶は人気あるみたいだし……何より人助けってのが俺に合ってるぜ



そんな雑談をしながら街を大きく迂回して北東を目指し街道を進んで行く。

周りは相変わらず草原が続いている為歩きやすく警戒もしやすかった。


そして大きな丘の頂上に辿り着いた時だった。


「ルル、あれ!」


丘から下った先の平地。

そこには多くのテントが張ってあり、周囲を簡易的な柵が囲っている。

囲いの中、テントの合間に大勢の人達がいるのが見えた。


「こんな所にキャンプ地? いや、拠点……か?」


柵や入り口には数名の見張りの姿が見える。


「ふむ、どうする? 寄ってみるか?」

「ああ、そうしてみよう。 もしかしたらどこからか逃げてきた人たちかもしれないし」


ライオンに賛同しみんなからも特に反対は出なかった為、丘を降りてその人達が集まっている場所へ向かう事になった。




丘を降りて近付いて来るのが見えたのであろう。

俺達の方にある入り口付近に見張りが集まって来るのが見える。


丘を降り平地を進んで近付くにつれ様子が見えて来た。

十数名の武器を持った人達が見え始める、そして入り口には簡易的な柵がありそれがしっかり閉められているのも見えた。




「止まってくれ」


集まっている見張りの中心、そこにいる男が両手を広げて俺達に制止を呼び掛けた。


「こんな時勢に大人数で旅とは……お前達は何者だ?」

「ただの旅の御一行だよ。 ちょいとこの集落が見えてな、寄ってみようってなっただけだよ」


俺達の中ではライオンが一番大柄で年齢もそれなりだ。

だからリーダーと思ったのかライオンに話しかけた見張りは、俺が返事をしたのを不思議そうに見ている。


「ん? どうした?」

「あ、いや、この一行のリーダーは……」

「俺だぜ?」

「……」


小柄な僧侶服の少女がリーダーとは思わなかったらしく、話し掛けてきた見張り……他の見張りもみんな顔を見合わせたり目を瞬かせている。


「なんだ? リーダーが俺だと不思議か?」


……自分で言って何だか、まぁ不思議かもな

年下で背が()()()()低い少女の姿だからな……まぁリーダーとは思わねぇだろ



「ああ、いや、すまない。 少しびっくりしただけだ」

「ああ、それは分からないでもないな」


俺があっけらかんと返すとほっとしたようで、


「ええと、それであんたらは一体……」

「俺達はダーテンハルトから来たんだ」

「ダーテンハルトから? あの街にも何かあったのか?」

「ああ、まぁ色々とな。 それでバロックの街に来ることになったんだが……」

「ああ……それじゃ、もう見たのか? 街の有様を」

「ここに来る前にな」

「そうか。 ……とりあえず遠い所を大変だったな。 中に入って休んでくれ、後で街に来た目的を代表に話してもらえると助かる」

「ん? バロックの街に来た目的をお前達に話すのか?」

「俺達はバロックの街から逃げて来た者達の集まりだからな」

「そうか……って事は代表ってのは例の貴族様か?」

「それも含めて後で話をしてくれ。 おい、開門しろ」


その言葉で入り口の柵が開いていく……そうして俺達はその集落に迎え入れられたのだった。


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