ごめんなさい?
「んぁ? ここ……は?」
目を開けるとテントの天井が見える。
「お? 起きたッスね! おはようッス!」
隣にいたリリが俺をのぞき込むように見下ろしてきた。
あれ? 俺寝てた?
アルトを助けて……スライムが倒されて……どうなったんだ?
そこまで思い出して目を見開いた!
「リリ! ア、アルトは!?」
「わわ! お、驚かさないで欲しいッスよ! アルト君なら大丈夫、無事ッスよ」
飛び起きた俺に驚いたリリだったが、すぐに笑みを浮かべて、
「ルルのおかげッスよ。 傷は全部治って……逆にルルの事を心配してたッスから」
「そ、そうか……良かったぁ~~」
体中から力が抜けて再び寝袋に倒れこむ。
「逆にルルが大変だったッスよ? あの後急に気絶しちゃって……」
「気絶……俺が?」
「そうッスよ? 何でも魔力が暴走したとか力を使い過ぎたとかユーナが言ってたッスけど」
「魔力が……」
そうして俺は思い出した……あの時の魔力の事。
確かにいつもの俺の魔力と桁違いだったな……あの力は一体なんだったんだ?
俺に何らかの秘めた力があるのか? それとも火事場のバカ力ってやつか?
……なんにせよ、あの力があれば俺の覚悟を叶える力になる……なんとか……
「あ、ルルはお腹すいてないッスか?」
「ん~~? 腹は別に……」
『すいていない』って言おうとした瞬間、腹の虫がグゥ~となった。
本人の意思とは違って腹が減っていたようだ。
「あはは! お腹は正直ッスね! 今何かもらってくるッスよ。 ついでにルルが目を覚ましたことを伝えてくるッス」
愉しげに笑いながらリリがテントを出て行った。
……雨、止んだんだな。
リリがいなくなると静かになる。
今更だが、テントの中はランプが灯され外は暗くなっているようだ。
夜になっていたのか……どれだけ寝てたんだ?
ぼーっとしていると再び瞼が重くなってきた……
やばいな……リリが食いもん持ってくるって言って……いた……の……
「ルル~軽めにお粥貰って来たッスよ~」
テントを開けて中に入るとルルが寝息を立てている。
「ありゃ、寝ちゃったッスね? ……お粥、どうしよう?」
寝袋からはみ出すように寝てしまったルルにタオルケットを掛けると、仕方なく粥皿に蓋をしてリリも横になるのであった。
「おはよう!! 昨日は迷惑かけたみたいで……すまなかった」
朝起きてテントを出ると、みんなは朝食の準備やら何やらをしていた。
みんなに挨拶をしていると、
「ルルさん!!!」
大きな声で名前を呼ばれ、アルトが転がる様に掛けてきて俺の前で立ち止まると、
「よぉ、アルト。 体大丈夫か?」
「ごめんなさい!!!!」
俺の言葉に返事も返さず直角に腰を曲げ謝ってくる。
「は? どうしたいきなり?」
「ぼ、僕の所為でルルさんが大変だったって……僕を助ける為に腕がボロボロになっても離さず、ずっと回復魔法を掛け続けたって……」
「何だ、その事か」
「『何だ』じゃないです!! 僕が足を引っ張って……もしかしたらルルさんだって死ぬかもしれなかったのに……いたっ!」
涙目でうじうじ言い始めたアルトに『てい!』と軽くチョップを食らわせる。
「う~~一体何を」
「『一体何を』じゃねーよ、アルトこそ何を言ってんだ?」
「だ、だって」
「あれはお前の所為じゃないだろ? それに俺がやりたくてやったことだ、お前が気にする事じゃない」
「で、でも……」
「……いいか? アルト」
俺はしゃがんでアルトの両腕を掴み真正面からその顔を……瞳をのぞき込む。
「もしも……もしもだ。 あの時お前が死んでいたら、お前はここで俺に話すことも泣くことも、この先笑う事も嬉しい事も、出会いも別れも……もしかするとお前の存在自体がなくなっちまうかもしれねぇ」
「……」
「だから助けられたことを『迷惑掛けた』なんて考えるな。 この先も笑い合える機会をもらったと思え、いいな?」
「……は、はい」
「でもって人から物をもらったら何て言うんだ?」
「え、えと『ありがとう』?」
「そうだぜ? だから助けられた時は『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』って言わなきゃな!」
「あ……」
アルトはそれを反芻すると、涙目ながら笑顔を浮かべ、
「ルルさん、ありがとうございました!!」
「クックック! やっぱりお前はまだまだお子様だな!」
含み笑いをしつつ頭をぽんぽんして立ち上がる。
「まぁ、それにこれは俺が覚悟して決めてやっている事だからな。 ま、何にせよ助かって良かったぜ」
「はい! ありがとうございます!!」
流石子供! 既に涙は引っ込んでおり今度こそ満面の笑みを見せてくれる。
「ルル!」
またもや俺の名前が叫ばれ……見るとボスがこっちに向かってくる。
「ルル! すまねぇ! 何でも命を救われたとか……」
「お前も謝罪からはいるのかよ!」
「あはは!!」
いきなり頭を下げたボスに俺は何とも言えない顔を向け……そんな俺達を見てアルトが楽しそうに笑い声を上げる。
「?」
そんな俺達の顔を、ボスは不思議そうな目でキョロキョロ見比べるのだった。




