62話 秘伝の書
ーー9層、リザ村の近くにて
リザ平八郎を捕らえた俺とリザ吉三郎は、その身柄をリザ村に届けるためリザ三郎を一人、ゲンさんの元に残して先に9層へと戻っていた。
「なぁリザ吉三郎、許しちゃくれねぇかな」
スパイダー・ネットにより拘束されたリザ平八郎は、前を歩くリザ吉三郎にそう頼んだ。
「駄目だリザ平八郎、お前のやったことは村の掟に反する行いだ、しっかりと裁きを受けてらう」
「おいおい、頭硬すぎるだろ……」
願いを聞き入れてもらえなかったリザ平八郎は、肩を落として落ち込んでしまう。
話を聞く限りリザ平八郎のやったことって、リザ村に伝わる秘伝の書を盗んだことだよな。
ならその秘伝の書は今どこにあるんだろう。
「なぁリザ平八郎、お前が盗んだっていう秘伝の書ってのはどこにあるんだ?」
俺は思い切ってリザ平八郎にそう訊ねてみた。
「あ?部外者のお前に教えるかよ」
「おいリザ平八郎口に気をつけろよ、そこにいるシオン様こそ現在のリザ村のある9層の領主様だぞ」
「は?」
リザ平八郎は、"マジ?"みたいな視線を俺へと向けた。
「まぁそうだけど……」
「しかもなリザ平八郎よ、シオン様はあのミカ様と婚約なさるのだぞ!」
「ちょ、リザ吉三郎、それはあまり言わないでくれよ……」
「ミカ様と婚約だと!?」
リザ平八郎はわかりやすく取り乱し始めた。
「あ、ああそういう事にもなってる」
「我々リザ村の姫が、お前なんぞの嫁になるだと!俺は認めないからな!」
そう言ってリザ平八郎は、プイッと俺から顔を逸らしてしまった。
いやお前の許可は必要ないだろ、というか俺はその話、乗り気じゃないし。
「あ!いたわね、シオンー!」
その時、村の方からミカが手を振ってこちらへと走ってきた。
げっ、タイミング悪すぎだろ。
「み、ミカ様!!」
「え、平八郎じゃない」
ミカは捕えられているリザ平八郎を見てそう呟く。
「ミカ様、お久しぶりでございます」
「久しぶりね、というかあんた秘伝の書はどうしたのよ?」
リザ平八郎にそう訊ねるミカ。
お、この感じは秘伝の書についての情報を知れそうだぞ。
「え、えっとぉ……」
「何よあんた、もしかして秘伝の書を無くしたとかじゃないでしょうね?」
「ぬっ、い、いえそうではなくて」
答え辛そうにするリザ平八郎。
「いいこと平八郎、あの秘伝の書は読めばそのリザードマンに様々なスキルを授けると言われてるこの村の家宝よ、それをあなた無くしたとか……」
「無くしてはおりません!奪われてしまったのです!」
『奪われた?』
咄嗟に出た言葉がミカとハモってしまった。
「す、すまない」
「謝らないでよシオン、それよりも奪われたって何?」
「す、すみません実は俺、ブリューナクの野郎に借金を作ってしまって、その金を返し切るまで秘伝の書を預かると言われてまして」
「何してんだお前!秘伝の書を質にいれるなんて!」
リザ吉三郎はリザ平八郎をそう怒鳴りつけた。
平八郎のやつ、マジでどうしようもない奴なんだな。
「し、仕方ねぇだろ!俺だって必死だったんだ!」
「……まったく平八郎、あなたはどうしようもない奴ね、いいわ取り返しましょう」
「え?いやいや取り返すって、相手はあのブリューナクですよ?」
「だからなに?こっちにはシオンがいるじゃない!」
ミカはそう言って俺の方を見てきた。
お、おいこの流れはもしかして、俺が取り返せというやつか。
通貨の事もあるしブリューナクとは戦いたくないんだけどなぁ。




