61話 ブリューナク商会
ーードワーフの地下都市にて
『ガシャン』
「さぁ着きましたよ、シオンさん」
「ありがとうスライムさん」
俺はあの後、ゲンさんの炭鉱を小一時間ほど見学して石炭を運搬するためのトロッコに乗って、先ほどまでいた地下都市へと戻ってきた。
地下から登る時は、専用のトロッコに付いているワイヤーを上から巻き取る事で上がっているらしく、さすがに下りよりかは帰るのに時間がかかってしまった。
まぁ、あのジェットコースターにまた乗るよりはマシだったけどね。
「どうでしたシオンさん、僕らの炭鉱は?」
「本当に凄かったよ、さっき戻る前にゲンさんに聞いたけど掘り出せる石炭の量はドワーフの炭鉱で一番多いんだってね?」
「はいそうです!」
俺の問いに嬉しそうに答えるスライムさん。
ドワーフの炭鉱で一番の採掘量を誇る炭鉱か、やっぱりそんなものを売らせるわけにはいかないよな。
「おいおい、そこのスライムはもしかしてゲンのところの奴じゃないか?」
地下都市へ戻ると、ガラの悪いリザードマンがスライムさんに絡んできた。
誰だこのリザードマン、村では見た事ないけど何処から来たんだ?
「くっ、リザ平八郎……ここに来たってことはまたゲンさんに炭鉱を売れと脅しに来たんだな!」
スライムさんはそう言うとキリッとした目でリザ平八郎を睨んだ。
「おいおいそんな怖い顔するなって、今回は別に炭鉱を売れた言いにきたわけじゃないさ」
「なんだと、なら一体ここへ何しに来たんだ?悪いがゲンさんはここにはいないぞ!」
強気にそう話すスライムさん。
しかしリザ平八郎の目線は、スライムさんではなく俺の方へと向いていた。
「よせよスライム、今回の目的はお前らじゃなくて、そこのチビ助さ」
「え、俺?」
「ああそうさお前だよチビ助、なんでもお前レパルスを単独で倒したらしいじゃねか」
「……なぜそれを知っている?」
「おいおいそんなの有名な話だぜ、青い雷使いのシオンに【山王】のレパルスが破れたってのは、今じゃ24層まで知れ渡ってるぞ」
ヘラヘラと笑いながら話すリザ平八郎。
俺がレパルスを倒した話ってもうそんなに広まってるのか。
誰が漏らしたんだろう一体。
「……」
「その顔、誰が言いふらしたんだと言いたげだな、だがなシオンよ大体の噂の出どころなんて掴めないものなんだぜ?そんなの気にすんなよ」
そう言ってリザ平八郎はニヤリと笑った。
リザードマンは皆んな良い奴らで好きだけど、コイツは不思議と全然好きになれないな。
「シオンさん、こんな奴とあまり喋らない方がいいですよ」
「スライムさん、そう言われても……」
「リザ平八郎は、ブリューナク商会の用心棒です、そんなゴロツキの話なんて聞くもんじゃ……」
「ごちゃごちゃとうるせぇんだよスライム野郎!スキル発動【リザ・サンダー】」
『パチィン!』
リザ平八郎はそう言うと、左手から紫色の電撃をスライムさんに向けて放出した。
「ま、まずい!」
『ボカァン』
雷撃はスライムさんに命中してしまった。
「ぐはっ」
リザ・サンダーをモロに受けたスライムさんは、そのまま黒焦げになってしまった。
くそ、油断してたわけじゃないけどあのスキル、発動してから雷が到達するまでの速度が、俺のスパーク・バインドよりも速い。
少し厄介なスキルかもしれないな。
「ケッケケ、あんまし俺を馬鹿にすんなよなスライムの雑魚が」
「おい、そこのリザードマン!」
「ケケなんだよシオン、そこのスライムがやられて怒ってんのかよ?」
「俺はリザードマンは攻撃しないと決めているが、お前だけはたった今より例外とするからな!」
「ケケ、やろうってのかよ?」
「もちろんだ!スキル発動【スパーク・バインド】」
『バチィン』
俺はリザ平八郎へ向けて、スパーク・バインドを放った。
「ケケ、いいぜ遊んでやるよシオン!スキル発動【リザ・サンダー】」
『パチィン』
リザ平八郎は、俺のスパーク・バインドを相殺するべくまた先ほどの紫色の雷撃を放った。
『バチチチチ』
激しくぶつかり合うスパーク・バインドと、リザ平八郎のリザ・サンダー。
この感じ、どうやら威力は互角のようだな。
「ケケ、良い威力だなシオン!」
「そっちもな!リザ平八郎」
思わぬ難敵と出会してしまったが、さてさてどうしたものかな。
『ギュッ』
俺はそう思いながら右手に持つ魔道王の神杖を強く握り合図を送る。
『ギュオオ』
そうしてその合図を理解したのか、魔道王の神杖は青く輝き始めるのだった。




