52話 ダンジョンの通貨
ーー9層、リザードマンの村にて
「えーっとリザ村長、ミカさんの嫁入りについてだけど……」
「はいシオン様、ミカはもういつでも準備ができています、明日にでも婚約式を始められますよ」
「こ、婚約!?いやいや俺まだ12歳だよ!」
「はい、12歳は許嫁を作るには良いお年頃だと思いますが?」
キョトンとした様子で首を傾げるリザ村長。
いやいや、俺の元いた国では12歳じゃまだ女子と手を繋いだことすら無い奴ほうが多いんだぞ。
それが許嫁なんて……しかも相手があのミカさんじゃなぁ。
「……シオン様、ミカでは不服なのですか?」
やんわりとトゲのある言葉を発して俺を牽制してきたリザ村長。
まずいな顔に出てたのかな。
て、ていうかミカさんは俺のことが嫌いなはずだろ、それなのに何だよ明日にでも婚約できるって、それこそおかしいだろ。
「い、いやいや不服とかではなくてだな、それよりもミカさんの気持ちとかはどうなるんだよ!この前会った時ミカさんが俺の事好いてる様には見えなかったぞ!」
「その事なんですがねシオン様、どうやらミカのやつ、最近あなたの事が気になってるらしく、婚約くらいなら別にいいよと言ってくれたんですよ!」
「は?」
いやいや2、3日で嫌悪から好感に変わるとかどうなってんだよ!
絶対何か裏があるに決まってる!
「ですので、ミカの気持ちの心配なら無用ですぞ!」
「う、うーん……しかしなぁ」
「婚約は明日発表しますので、今日は宴と行きましょう!」
「え、宴!?てかもう決定なの?」
「ええ、婚約とは勢いですぞ!」
勢いと言われても、俺はまだ一応12歳なんだけど……。
まぁでもこれだけ外堀を固められていると、断りづらいのもまた事実。
婚約くらいまた後で破棄すればいいし、ここはとりあえず受けておくか。
それにリザードマンの村とは今後も良好な関係を続けていきたいし、今後の国づくりのための政略結婚だと思えば気楽だろう。
「いいでしょうリザ村長、ミカさんと婚約します」
「おおシオン様!引き受けてくれますか!」
「はい、なので是非今後ともよろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
『ガシッ』
俺とリザ村長をそう言って固い握手を交わす。
でも相手はあのミカさんか、気が強そうだからそれはそれで苦労しそうだな。
ーーリザードマンの村のはずれにて
レパルスとのスキルのやり合いを経験し、俺は正直に言ってレベルアップの必要性を感じた。
片手で魔道王の杖を使い、もう片方の手でのスキルの使用は確かに強いがサファイア・ボルトのチャージ中に、空いているもう片方の手で防御スキルを使ってしまうと追撃の手段がない。
なので防御スキルをオートで発動できないかを考えている。
「なぁ魔道王、防御スキルだけを自動で発動したいんだけど良い案ないか?」
『あるにはあるぞ』
「え、本当か?」
『ああ、ナディアの宝物庫にある魔道王の腕輪というアイテムなら、スキルの保存と自動発動が可能だ』
「え、マジかよ!」
……って待てよ、魔道王の腕輪ってことはもしかして、またコイツみたいに話し出すのか?
『うむ、ちなみにその腕輪に私はもちろん封印されていないので話したりはしないがな』
「ほ、ほう」
タイミングが良過ぎて、魔道王に心を読まれたのかと思ったぜ。
『おそらくまだ宝物庫にあるはずだぞ主人よ』
「了解だ魔道王、ならまたナディアの元へと行くとするか」
『うむ、それが良いだろう』
ナディアの宝物庫って、やっぱり便利なアイテムが多んだな。
他にも良いアイテムがあったら持って帰りたいところだが、ナディアがそもそも交渉に応じてくれない可能性もある。
何か良い交渉材料があれば良いんだけど。
「なぁ魔道王よ、このダンジョンで通貨のような役割のものってあったりするのか?」
『通貨か……無くはないが、三王の領地ごとに通貨が異なっていて、共通通貨のような物はないな』
「え、通貨があるのかこのダンジョン!」
『あるぞ』
「てことは、ナディアからその宝物庫ごと買い取れば、そこにるアイテム全てが俺のものになるって事じゃん!」
『……主人よ、ナディアの領地の通貨はナディアの陣営が発行しているものだ、おそらくその宝物庫丸ごとレベルの買い物がしたいなら、主人も何か有力な貿易や商売を始めて、大量のナディアの通貨を手に入れねばならんぞ』
「しょ、商売か……」
貿易か商売と言われても今の俺には何も無い。
何か良いものは無いだろうか、ていうかそもそも、三王の領地って10~14層がレパルスで15~19がナディア、20~24がブリューナクのはずだよな。
そしたら1~9層ってもしかして、フリーなのか?
だとしたらそこに貿易や商売の可能性が眠っているやもしれない。
よし、そこへ行って確かめてみよう。




