38話 ミカの正体
ーー25層、真実の湖にて
『ズザァァ』
『どうだ主人よ、我がスキル【スライダー】は?』
「めっちゃ気持ちいいよ、魔道王!」
シオンは対岸にいるレパルス達の元へ行くため、神杖のスキルである【スライダー】を使い真実の湖を横断していた。
「待ってろよマイティ、今行くからな」
『主人よ、マイティは仲間なのか?』
「え、いやいや全然違うけど」
『そうか、なら何故助けるのだ?』
「えっと、それは俺のせいでレパルス達に詰められてるからなわけで……」
『どういうわけなんだそれは?』
「そ、それは……」
スキルで2日間スクワットしかできない身体にしたと伝えると、どっちが悪役かわからなくなりそうだと考えたシオンは、魔道王のその問いに言葉詰まらせ気まずそうにするしかなかった。
ーーナディアの城、別館にて
「ハァハァ」
別館にあるリザードマンの牢屋近くでは、大蛇となったレナティの攻撃を幾度となく凌いでいた小太郎に疲労が見え始めていた。
「あらあらバカ牛、辛そうね」
「まぁね、ていうか尻尾の強さ上がってない?」
「よく気がついたわね、その通り上がっているわ」
「やっぱりか」
「最初は弱くしてそこからどんどん強くしていくのが私のやり方なのよ」
そう言ってレナティは薄気味悪い笑みを浮かべる。
「悪趣味だね」
「まぁね」
その時、小太郎の視界にレナティの背後をとるリザ吉の姿があった。
『コクッ』
小太郎は意味ありげにリザ吉に視線を向けて、静かに頷いた。
「おりゃあああ」
「な、なんだ!?」
そうして小太郎は叫び声を上げながらレナティへ突撃を開始した。
『ガシィッ』
「捕まえた!!」
小太郎は勢いそのままにレナティをホールドし持ち上げる。
「今だリザ吉くん!」
「はい!」
レナティが持ち上がるのを確認するとリザ吉は、レナティの背中に向け勢いよく槍を突き刺しにかかる。
「さっきのトカゲか!」
『ブォン』
そう言ってレナティは尻尾を大きく揺らして、リザ吉を退けようとした。
『ゴスッ』
「くっ」
レナティの尻尾はリザ吉の脇腹に直撃してしまう。
「リザ吉くん!」
『バコォン』
そしてリザ吉は隣の壁に強く身体を打ちつけてしまう。
「まったく面倒な奴らね、油断も隙もあったもんじゃないわ」
『スルルル』
「あ!」
レナティはそう言ってスルスルと小太郎のが腕から抜け出してしまう。
「はぁこんな事してたら来ちゃうじゃない、ボスが」
「な、ナディアならシオン様が相手をしてるからまだ来ないぞ」
起き上がったリザ吉はレナティへそう伝える。
「……はは、ナディア様、そうね一応形式上は私のボスよね、でも本当のボスは別にいるのよ」
リザ吉のその言葉に笑みを浮かべてそう話すレナティ。
「お前、何を言っているんだ?」
その様子を見て不審に思った小太郎がそう訊ねる。
「私はナディアの部下だけど部下じゃない、本当のボスは三王が一人、レパルス様よ」
「それってどういう事……」
「助けてー!」
その時、遠くの牢屋から少女の声がした。
「今の声はもしや、ミカ様か」
「さすがねトカゲ野郎、一緒に住んでいただけあるわね」
リザ吉に対しそう話すレナティ。
「お前、ミカ様をどうする気だ?」
「もう十分育ったからね、レパルス様の元へ連れていくのさ」
「な、何を言ってるんだ!ミカ様は我らリザードマンの姫君だぞ」
「あっははは、それは笑える冗談ね、残念だけど貴方達の姫君ではないわあの子の正体は、ミカ・スメイルと言ってね、人の国の王族よ」
「なっ、なんだそれは……」
レナティからの突然のその言葉に固まるリザ吉。
そして小太郎はその隙をつき、レナティの背後をとるのだった。




