29話 脱皮
ーーナディアのの宝物庫にて
「えーっと、もう一度だけ聞くけど、魔道王さんなの?」
『うむ、我は魔道王也』
「杖なのに?」
『う、うむ……この姿は訳あってこうなってしまってな』
魔道杖は気まずそうにそう答える。
杖が気まずそうにしてるのは、違和感半端ないな。
色々この杖と話をしてみてわかった事がある。
まずは名前、この杖の名前は魔道王の神杖という魔道杖らしく、杖曰く地上で最も強いとのこと。
本当かよと内心疑いの目を向けているが、杖から漲る自信が半端ないので、とりあえず信じる事にしている。
「まぁいいよ、人間誰しも話し辛い事の一つや二つあるもんだしな」
『おい、我は杖ぞ?』
「杖でいいのかよ……」
『しかしだ主人よ、先ほどの巨大蛇だがいなくなってしまったようだぞ』
いやいや何を言ってるだよ魔道王。
さっきお前の固有スキルで倒したじゃないかよ。
そう思って俺はナディアの方を見た。
「……い、いない、いや皮だけはあるな」
『ほほう、脱皮か』
「脱皮!?」
『うむ、蛇なのだから当たり前だろう』
「蛇じゃないって……いやもしかして蛇なのか?」
ナディアの倒れていたところには、同じ大きさの抜け殻があるだけで、肝心の本体の姿は消えている。
まさか、こんな方法でやり過ごされるなんて……。
しかしまずいな、このまま奴がリザ吉達の方へと向かっていたらエラい事になる。
早く後を追わないと。
『して主人よ、奴を追うのか?』
「もちろんだ、そうしないと俺の仲間がやられてしまう」
『ふむ、ならばこれを試してみるとしよう』
『キュイーン』
そう言って魔道王さんは青白い輝きを放ち始める。
『ゆくぞ主人よ固有スキル発動【マジシャンズ・サーチ】』
『ポポン』
「な、なんだよこれ」
そうして杖から青白い霊魂のような球体が2つ射出された。
『固有スキル【マジシャンズ・サーチ】これは、2つの我の分身体を射出するスキルでな、分身体には索敵能力もある、それを使ってあの巨大蛇を探すぞ』
「おお、すげぇ便利なスキルきた!」
こいつのスキルはさっきのサファイア・ボルトの時もそうだったが何か欠陥のあるスキルだと思っていたが、これは期待できそうだぞ。
『ただし、速度が遅いし飛べる時間も長くはない、故に主人よ貴方の両肩に乗せてあげてほしい』
「お、おう」
『ピトッ』
そうして2つの霊魂は俺の両肩にちょこんと乗っかった。
「ま、まぁこれくらいの不便なら……」
『ビリッ』
「い、痛っ!」
『あ、言い忘れておったが、その霊魂達は常に微弱な電気を発しておってな、ちょっとピリッとするから気をつけてな』
「お、おう」
前言撤回、やはりこの杖のスキルには欠陥がある。
まぁでも今回はそれに頼るしかないんだけどね。




