15話 シオンの力
ーートリポカ領にて
「はぁ、なんて美味しい空気なのでしょう」
シオンの母、ラルメルダ・トリポカはそう言って部屋の中で深呼吸をした。
「母様、落ちこぼれが居なくなるだけでこんなに空気が美味しいんだね」
「ええそうよチャールズ、あのゴミ……シオンがいなくなった事で、私の屋敷は見違えるほど綺麗になったわ」
トリポカ家の7男にして、シオンの弟のチャールズを腕に抱きながらラルメルダはそう話す。
「ラルメルダ様!大変でございます!」
「何よもう!人がせっかく気持ちの良い空気を吸っていたのに、邪魔するなんて」
「母様、こいつ気に食わないから処刑しようよ」
気持ちの良いひと時を邪魔されたラルメルダとチャールズは、なにやら物騒なことを言い始めた。
「す、すみません」
慌てて衛兵はチャールズに謝罪した。
「仕方ない、見逃してやろう」
「ありがとうございます」
「それより衛兵よ、私に何のようかしら」
「ラルメルダ様、落ち着いて聞いてくださいね、東の山の主マウンテン・ドラゴンが復活し、只今我が領地で暴れているのです」
「な、何ですってー!!」
ラルメルダはそう言ってひっくり返ってしまう。
現在、トリポカ領に領主はいない。
何故なら領主であるシオンの父、ハウザー・トリポカが上の兄弟を連れて戦地へ行っているからである。
そのため、今領地にいるのはラルメルダと末の弟チャールズのみなのだ。
「落ち着いてくださいラルメルダ様、封印が解けたならもう一度封印し直せばいいのです、さぁシオン様を呼んでください」
衛兵は笑みを浮かべてそう話す。
「な、何を言っているの貴方、シオンが封印?いやいやそんなのできるわけ……」
「え?まさか知らないのですか、シオン様が我が領内の主要な結界を張っていたり、モンスターの封印をしていた事を」
「な、なにそれ」
衛兵の言葉を聞いたラルメルダの顔がどんどん引き攣っていった。
そうラルメルダは、シオンがトリポカ領内で行っていた様々な事を何も知らなかったのである。
「さぁ早くシオン様を呼んでくださいよ」
何も知らない衛兵は、引き攣ったラルメルダにそう言い続ける。
「う、嘘でしょあの子にそんな力があったなんて……」
『ドサッ』
「母様ー!!」
そう言ってラルメルダは地面に倒れてしまった。
ーー水のダンジョン、10層にて
『ギチチチチ』
「な、なんだこれは」
レパルスの爪はシオンの頬を触れる事なく、寸前で止まってしまう。
「スキル【不可侵領域】」
シオンは静かにそう呟いた。
スキル【不可侵領域】、自動発動のスキルであり、発動すると5分間自身周りに如何なる攻撃も通さない防壁を張る事ができる。
「す、すげぇ」
「いいですかレパルスさん、私は別に支配がしたいわけではないんです」
「支配が狙いではないだと?ならお前は何を求めて俺と敵対するんだ!」
レパルスはそう言ってシオンを睨みつけた。
「私は……いや、俺は国づくりがしたいんだ!このダンジョンに誰もが自由で平等な国を作るんだ!」
「国だと?このダンジョンの状況をわかっているのかお前は、我々【三王】による争いが何年も続いているんだ、それをお前が終わらせるというのか!」
レパルスはそう叫ぶと、スキル【不可侵領域】により止まった右手に更なる力を込める。
『ギチチチチ』
「だから無駄だって言ってるじゃないですか、スキル発動【念力】」
『バコォン』
シオンはスキル【念力】を使い、レパルスを10メートルほど吹き飛ばした。
「レパルス様!!」
配下のライオンの獣人達の悲痛な叫びが峠中に響き渡る。
「いいかよく聞け獅子王よ、俺が王になってこのダンジョンを統一してやるよ、そして国を作る、獣人族もミノタウロスも迷宮ウルフも、そしてリザードマンもみんなが笑顔に暮らす国を、俺は作ってみせる!」
そう言うとシオンは、吹き飛んだレパルスの方へと歩いて行った。




