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オトシゲ:乙女は資源になりました。~男性絶滅後のディストピアで、学園侵略しちゃいます~  作者: 428の968
第一章:関東圏統一戦争

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1話:新入り会議

「――さて」

西園寺(さいおんじ)椿(つばき)が、資料を一枚手に取りながら口を開いた。

「今年の春季配給は漂白済み魂四千個、新入生二千名。例年通りです。始めましょう」

長机の上座に、神楽坂(かぐらざか)玲緒奈(れおな)が座っていた。

ふかふかの革張りの椅子に深く腰掛けて、紅茶のカップを傾けている。退屈そうに、窓の外を眺めている。

周りを囲むように、役員たちが座っている。

第一副会長・西園寺(さいおんじ)椿(つばき)

第二副会長兼遠征軍第二軍団長・一ノ瀬(いちのせ)ほむら

労働局長・五十嵐(いがらし)結衣(ゆい)

戦略情報局(SID)長・如月(きさらぎ)(れい)

遠征軍第一軍団長・不知火(しらぬい)舞花(まいか)

研究開発局長・氷室(ひむろ)アヤメ

防軍司令・桐生(きりゅう)(はがね)

司法局長・九条院(くじょういん)紗夜(さや)

宣伝局長・夢咲(ゆめさき)らら

内務局長・白鳥(しらとり)詩織(しおり)

教育局長・日向(ひなた)(はる)

壁には地図が貼られていた。霞学園の勢力圏が赤く塗られている。

「まず蘇生コストの確保から」

五十嵐(いがらし)結衣(ゆい)が資料をめくりながら言った。眼鏡の奥の目が、数字を素早く追っている。

「先月の戦闘損耗分の蘇生に千二百個。備蓄として八百個。残り二千個を各部門の設備投資に回す予定ですが——」

「研究局に五百は欲しいですね」

氷室(ひむろ)アヤメが、にこにこしながら割り込んだ。自分だけ別の資料を広げて、何かに書き込みをしながら話している。

「新しくやりたい実験があって。材料が足りなくて」

「去年も同じことを言ってましたよね」

結衣(ゆい)が眉を上げる。

「言いましたっけ」

「言いました」

「でも今年は違うんです。去年より面白い実験なので」

「面白いかどうかは関係ないんですが」

「関係あります」

如月(きさらぎ)(れい)が二人を一瞥した。二人は黙った。

零はいつも通りだった。背筋を伸ばし、表情を動かさず、ただ資料を見ている。会議室の温度が少し下がった気がした。

玲緒奈は紅茶を一口飲んだ。

「研究局への配分は後で決めます。次に新入生の振り分けについて」

資料が配られた。二千名分のデータ。身体能力、学習能力、精神安定度、その他諸々の数値が並んでいる。しばらく、紙をめくる音だけが続いた。

「防衛部門から百五十名の要請が来ています」

桐生(きりゅう)(はがね)が、淡々と言った。資料を見ることなく、既に数字を頭に入れているようだ。

「東部の防衛ラインを強化したい。特に体力値上位の子を優先してほしい。基礎体力があれば、あとはこちらで鍛える」

「整備部門も百名ほど」

一ノ瀬(いちのせ)ほむらが、資料を見ながら言った。他の誰よりも細かく書き込みがされた資料を、静かにめくる。

「マチルダ砲兵トラックの改修が続いているので、正直手が足りない」

「宣伝部門は五名」

夢咲(ゆめさき)ららが、指を一本立てた。長い爪が、蛍光灯の光を反射する。

「素材が良い子限定で。顔が良くて声が良くて愛嬌がある子。それ以外は要らないです」

「贅沢ですね」

「宣伝は顔が命なので」

ららは悪びれもせず、にっこり笑う。

「突撃隊は今年も百名でいいですか」

日向(ひなた)(はる)が、ふわふわした声で確認した。他の役員とは少し違う、柔らかい空気をまとっている。

「例年通りで」

「はい。配属式でのデータを見る限り、今年は素質のある子が多そうで。楽しみですね」

(はる)は目を細めた。その笑顔は、本当に嬉しそうだった。

テーブルの端で、白鳥(しらとり)詩織(しおり)が黙って資料を見ていた。他の役員が話している間も、ずっと資料から目を上げない。ペンを走らせている。

「内務局は」

椿が確認する。

「三十名で十分です」

詩織(しおり)が、静かに言った。ペンを置いて、初めて顔を上げる。

「多すぎても管理が煩雑になる。質を重視します」

「新入生の魂記録登録と各種手続きについては」

九条院(くじょういん)紗夜(さや)が、静かに口を開いた。資料を綺麗に整えながら、淡々と言う。

「例年通り、私が管理します。配属が決まり次第、順次登録を進めます」

「了解です。では残りは労働部門と教育部門で——」

「ちょっと待って」

不知火(しらぬい)舞花(まいか)が、手を挙げた。さっきから椅子に浅く腰掛けて、落ち着きなく足を動かしていた。

「遠征軍への配分はどうなってるの。今年こそちゃんとほしいんだけど」

「遠征軍への直接配属は認めていません」

椿が即答する。

「各部門で育成してから移動させる規則です」

「分かってるけど、去年の補充が全然足りなかったじゃん。死んだ分が蘇生で戻ってくるとはいえ、新しい血も必要でしょ」

「それは各部門の育成計画の問題です」

「冷たいなあ」

「事実です」

舞花(まいか)はむっとした顔でほむらを見た。ほむらが資料から顔を上げる。

「ほむら、なんか言ってよ」

「椿の言う通りよ」

「ほむらの裏切り者」

「事実だもん」

椿が資料を一枚めくった。

「では、配属式の段取りを確認します。当日の進行は(はる)が担当。まず全員を講堂に集め、心構えの説明を行います」

「はい」

(はる)がふわふわした声で答えた。

「その後、新入生を二十名ずつ百班に分けて見学ツアーを行います。整備場、弾薬工場、蘇生プラントなどなど各施設を順番に」

「遠征軍の突撃訓練の実演も」

椿が続ける。

「新入生に実戦部隊の動きを見せておく」

「了解です」

「実演の後、配属式典。スクリーンで名前とIDを表示して、各部門へ振り分け。最後の百名については——」

「任せてください」

温が微笑んだ。

「毎年のことですので」

「突撃隊の子たちには伝えてありますか」

零が静かに確認する。

「もちろんです。今からとても楽しみにしているそうで」

温はそう言って、また目を細めた。

しばらく、紙をめくる音だけが続いた。

「——ねえ」

玲緒奈が、ふいに口を開いた。

全員の視線が集まる。

玲緒奈は窓の外を見たまま、カップをゆっくりと置いた。

「武蔵野の同盟、そろそろ頃合いだと思わない?」

誰も何も言わなかった。

椿が静かに頷く。

「三週間後かと」

「そう」

玲緒奈はまた紅茶を一口飲んだ。

窓の外には、広大な学園都市が広がっていた。赤く塗られた勢力圏の、その先に。まだ赤く塗られていない場所が、広がっていた。

読みに来てくれてありがとう!!

次回、2話:捕食者たちのお茶会 です!5月19日 19時更新予定です!

しばらくは毎日で投稿予定ですっ!


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