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オトシゲ:乙女は資源になりました。~男性絶滅後のディストピアで、学園侵略しちゃいます~  作者: 428の968
プロローグ

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プロローグ:少女配属式

旧作から来てくれた方へ。お待たせしました。

初めて来てくれた方へ。ようこそ。本当にようこそ

希望はあります。ただ、それが実ることはありません。

そういう話が読みたくて、書いています。

428の968

空が、きれいだった。

四月の青空だった。桜が風に流されて、制服の肩にくっついた。払おうとして、やめた。なんとなく。

新しい制服はまだ硬い。首元がちくちくする。

隣の子と目が合った。

「……緊張する?」

小声で聞くと、その子は少し遅れて頷いた。

私も、と言いかけて、前の列の先輩が振り返ったので黙る。

二千人。

今年、(かすみ)学園に配属された私たちの数だ。広いグラウンドに整列しても、まだ余裕がある。それだけの人数が、同じ制服を着て、同じ方向を向いている。

壇上に、白衣の先輩が立った。

「みなさん、ご入学おめでとうございます」

眠そうな声だった。けど、不思議と嫌な感じはしない。少し安心する。

「霞学園へようこそ。ここは、素晴らしい学園です」

周りの子たちは真面目な顔で聞いていたけど、私はその言葉を聞きながら、寮って門限あるのかな、とか別のことを考えていた。それから慌てて、ちゃんと前を向いた。

玲緒奈(れおな)様、という名前が何度も出てきた。出るたびに、周りの先輩たちの背筋がすっと伸びた。どんな人なんだろう。きっとすごい人なんだろうな。

説明が終わると、見学ツアーになった。

整備場に連れて行ってもらった。大きなトラックが並んでいて、先輩たちが楽しそうに作業していた。

「これがマチルダ!うちの子!」

案内の先輩が、トラックの大きな砲をぺたぺた叩きながら言った。嬉しそうだったので、「かわいいですね」と言った。先輩は満足そうに笑った。

「よく詰まるんだけどね!」

詰まるんだ。

弾薬工場も見た。機械がずらりと並んで、せっせと弾を作っていた。この弾がどこに飛んでいくのか、私にはよく分からなかった。

最後に蘇生プラント。

廊下に入った瞬間、空気が変わった。

両側に警備の先輩たちが並んでいた。等間隔に、微動だにせず、立っていた。腰の銃が照明を反射してぬらりと光った。目が合った気がして、視線を逸らした。

分厚い扉を抜けると、白い部屋だった。何もかもが白かった。

大きな機械が整然と並んでいた。白衣の先輩たちが黙々と作業していた。バッジを見ると、五年生、六年生ばかりだった。なんとなく、話しかけてはいけない気がした。

「これが蘇生プラントMk-IVね」

案内の先輩が小声で言った。

「死んでも三分で生き返れるから、霞学園は強いんだよ」

三分。

先輩が少し身を屈めて、もっと小声で言った。

「ここだけの話ね。会長たちが使うやつは、もっと早いらしいよ」

「え。」

「詳しくは知らないけど」

先輩はそれだけ言って、次に進んだ。白衣の先輩たちは、こちらをちらりとも見なかった。

グラウンドに戻ると、対抗訓練の実演があった。

先輩たちが二手に分かれて、向かい合った。みんな笑っていた。楽しそうだった。

「始め!」

笛の音が鳴った。

最初は何が起きているのか分からなかった。煙が上がって、音がして、先輩たちが走って——

バタバタと、倒れた。

隣の子が、小さく声を上げた。

「射撃やめ!」

倒れた先輩たちは動かない。何人かは、苦しそうにうめき声を上げていた。

一人の先輩が、静かに歩いていった。

うめいている先輩のそばに膝をつく。

カチャリ。

腰のホルスターから、銃を抜いて。

パン。

うめき声が止まった。

また別の先輩のところへ。

パン。

パン。

静寂が戻った。

私は、息をするのを忘れていた。

しばらくして、先輩たちが戻ってきた。さっき倒れていた先輩たちが、同じ顔で、同じ制服で、少し髪が濡れているだけで戻ってきた。

「ありがと!」

撃たれた先輩が、撃った先輩に明るく言った。

「どういたしまして」と撃った先輩は笑った。

隣の子が、小さく声を上げた。

横にいた先輩が、私たちを見て、ああ、と言った。

慈悲(じひ)の一撃っていうんだ。苦しんでる子を早く蘇生させてあげるために、トドメを刺してあげるんだ」

当たり前のように言った。

「まあ、すぐ慣れるさ」

死体が、まだそこにあった。さっきまで笑っていた先輩たちと同じ顔の死体が、グラウンドに転がっていた。でも今、同じ顔の先輩たちが笑いながら話している。

私はどちらを見ればいいのか分からなかった。

しばらく、そのまま立っていた。

「では、配属発表に移ります」

ふわふわした声が言った。

名前が読み上げられるたびに、誰かが列を離れていく。防衛部門、生産部門、宣伝部門。淡々と、続いていく。

私の名前は、まだ呼ばれない。

隣の子が、小声でそっと言った。

「……なかなか呼ばれないね」

不安そうだった。

頷こうとした時。

「——ナナミ」

スクリーンに名前が映し出された。隣の子の名前だった。

隣の子が、書類を受け取りに後ろへ歩いていった。

振り返って私を見た。

何か言いたそうな顔だったけど、何も言わなかった。そのまま列を離れて、後ろの方へ消えていった。

私の名前は、まだ呼ばれない。

「最後に、メーテル突撃隊への配属者を読み上げます」

グラウンドの空気が、少し変わった気がした。

周りの先輩たちが、わずかに姿勢を正した。どこかから、小さな羨望に似た、でも少し違うようなため息が聞こえた気がした。

突撃隊。

それがどういうものなのか、私にはよく分からなかった。ただ、周りの反応を見てすごいことなんだと思った。

そのとき、グラウンドの端の扉が開いた。

笑い声が聞こえた。あははは、と。

入ってきた彼女たちは、笑いながら喋りながら、ぞろぞろとグラウンドに入ってきた。胸元に大きな銃を斜めに下げて、腰に丸いものをいくつもぶら下げて、でも誰も全然気にしていない。

読み上げは続いている。

構わずに彼女たちは新入生の列をのぞき込みながら、きゃあきゃあと声を上げた。

「かわいい!この子私の!」

「えっ、ずるい!私も!」

名前が、聞こえた。

私の名前が。

気づいたら、目の前に顔があった。

満面の笑みで、こちらを見ている先輩が。

「み〜つけたっ!君だね!すっごく可愛い!」

「え、あ、あの……」

「君は私とペアだよ!今日から私と一緒!お風呂も寝るのも、自爆(じばく)するのも、ずーっと一緒だよ!」

自爆(じばく)ってどういう。

「行くよ!玲緒奈(れおな)様のために死ぬ方法、たーっぷり教えてあげるから!」

「ちょ、待って、痛い、痛いです先輩!」

引っ張られながら、振り返った。

グラウンドに残った子たちが、こちらを見ていた。ある子は羨ましそうに。ある子は、何か言いたそうな顔で。

さっき後ろへ歩いていった隣の子の姿は、もうない。

扉が、閉まった。

次回、1話:新入り会議 です。当分は毎日投稿を行います

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