第18話 本当の幸せとは なんだろう 僕たち 一生に行こうね どこまでも
修正ver.
リヒトさんは、
眠っては起き、
起きては眠り、
回復の一進一退を繰り返している。
もともとほっそりしている彼女がいよいよ痩せて、
肌は透き通るよう。
僕は会うたびに、ギクリとして、
彼女の手足をさすって温める。
頬を両手で挟んで温める。
そのたびに、
リヒトさんは嬉しそうに微笑んで、
桜の花びらが一枚かすめるほどの微かさで、
顔を赤らめる。
*****
リヒトさんが息を吹き返した朝、
ステファニーと大王付きたちに、
僕が、リヒトさんに結婚を申し込んだことを伝えた。
こんなタイミングで、
しかも、承諾も受けていないにもかかわらず、
皆、泣くほど喜んで、互いに抱き合ったりするものだから、
僕がひどく面食らったくらいだ。
その後、僕はすぐに、大王付きと同じように、
リヒトさんに血の誓約をする「リヒトさん付き」を編成した。
リヒトさんは、容体はまだ不安定だし、
あの黒い渦が突如出現した場合、今のリヒトさんに逃れる手段はない。
…正直に言うと、もう彼女は僕の婚約者だと、
さりげなく外堀を埋めたい気持ちも十分にある。
リヒトさん付きは、エデのほか、
親衛隊のえり抜きの女性騎士が二人、
現在大王付きのメイドから一人、
大神殿のメイドの中から、僕とステファニーが選抜した者が一人。
ステファニーも、
その日のうちに、執務室をリヒトさんの部屋の近くに移し、
「マナー係」という名目で、
日に何回も、執務の合間にリヒトさんの様子を見舞い、
万一の異変に備えている。
*****
そして、その日以降、
僕はもう、人目を気にしないことにした。
リヒトさんの調子がよいときは、一緒に食事もとる。
執務の間に、リヒトさんのお見舞いの時間をとるように予定を組ませる。
専用通路以外で会っても、堂々と声を掛け、手を握る。
なんなら、ギュッとする。
夜は、リヒトさんの部屋に行って、彼女の顔を見ておやすみなさいを言う。
無感情だった3年前のように、
女の尻を追いかけていると思われようと、
やましいことをしていると思われようと、
どうでもいいと思うようになった。
リヒトさんは、そんな、
やけに前のめりな僕を見るたびに、
もじもじして、また、
桜の花びらひとひらを、青白い頬に浮かべるのだ。
エーレントや、最近は鎮静化している独立運動が、
いつまた動き出すか分からない。
でも、僕は、不思議と、
なるようになるし、
なんとかなると思っている。
リヒトさんが生きている世界で、
たとい遠くに行くことがあっても、
リヒトさんがいる大神殿に帰り、
そして、生きているリヒトさんに会える喜びが、
今、この瞬間に存在しているならば…
僕は、幸せの中に生きているのだ。
****
僕がめくろうとする人生の一ページは、
ただの彩に溢れただけの一枚じゃなかった。
もうすっかり、幸せ色に染まった一枚だったんだ。
十二支と神鼠は猫に「こい」
第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/
第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/
第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/




