持っているのは、物だけじゃない
決闘が終わった後、突如知らない女性2人が現れた。
彼女たちは、自分のことを大精霊と言い、名前を尋ねてきた。
ー大精霊?精霊と何が違うの?
精霊って小さくなかったっけ?そもそもなぜ私に?ー
マイは、知らない存在に戸惑っていた。
「「あなたは、私に何をくれる?」」
そう言われても、何のことかよくわからず黙ることしかできなかった。
だが、スイレンは理解しているようで、深く考え込んだ後自分の感情を見せると言った。
ー感情を、見せる?どういうこと?ー
そんなことを考えている間に、スイレンとステラの契約が結ばれた。
そして、ようやくマイは気が付いた。
ーあの言葉は、精霊の契約のことを言っていたのねー
「それで?あなたは私に何をくれるの?」
大地の大精霊、シフと名乗る女性が、わくわくしたような瞳で見てくる。
だが、マイには渡すものなど一つも持っていなかった。
◆
マイ・アクアティラス。
アクア王国に生まれた、唯一の子。
アクア王国は長年、後継者問題に悩まされていた。
そんな時、ようやく誕生したのがマイだった。
待ち望んだ後継者誕生に国民全員が喜び、誰もがマイを愛した。
マイは多くの愛情を注がれ、持っていないものと言えば”最強”の称号と争いの経験だった。
◆
ー私は、多くの物を持ってる。
でも......
”本当に持っている”と言えるの?ー
黙り込んだマイに、シフは首をかしげ尋ねる。
「どうしたの?あなたが持っている物を、私にくれればいいのよ?」
その言葉にマイは服の裾を握り締める。
「私は......私にはっ......」
シフは少し考えた後そっと、つぶやくように一つの言葉を口にする。
「私が求めているのは、物じゃないわ......」
ー物じゃない?物じゃないなら、なにを......ー
そこでマイは、思い出す。
スイレンが何を渡したのかを。
そして、彼女たちが何に惹かれたのかを。
ーそうだ......
彼女は、私たちの戦いと思いに惹かれたと言っていた。
私、急なことで全然頭が回ってなかったー
マイは愛されて育ち、多くの物を多くの人からもらってきた。
だから渡すものと言えば、”物”だと思っていた。
だが、違った彼女が求めていたのは自分を楽しませてくれる”者”なのだと。
「私は、人にもらってばかりで自分の”物”はありません。
でも......守りたい人達がいる。
だから私は、あなたに”意志の強さ”を見せてあげる」
その言葉に、シフはきょとんとする。
「意志の強さ?どういう意味?」
「私が、どれだけこの国にいる人たちを思っているのか、そして守りたいのか。
それをあなたにも見せてあげる」
マイの言葉は力強く、迷いなどどこにもなかったかのようだ。
「......なぜ、それを私に?」
シフは、とても不思議そうな顔をしていた。
「精霊って、数が少ないですよね?
だからきっと、精霊同士で関わり合いを持たず、強く守りたいって思える人がいないと思うんです。
だから、誰かを守りたいっていう思いを知れたらって......」
そう言ってマイは少し顔を赤らめた。
言っていて、自分でも恥ずかしくなったのだ。
「そう、ね。
たしかに、守りたいっていう気持ちがどんなものなのかよくわからないわ......」
シフは少し驚いたような顔をしていたが、すぐに満足げな笑顔に変わる。
「いいわ、契約しましょう。
契約の言葉は知っているわよね?」
こくんっとマイが頷く。
「我は、大地の大精霊シフ。汝との契約を望む。
我は汝に新たな力を授けよう」
「我はマイ。我も汝との契約を願う。
我は、意志の強さを見せると誓おう」
「「ここに、我ら契約を交わす」」
またも、その場は光に包まれる。
ー意志の強さ......ね。
あの少女の周りには、面白い子が集まりそうねー
シフは、興味深そうにスミレを見ていた。




