感情のない少女がただ一つ抱える思い
突然の声に誰もが警戒態勢をとった。
だが、二人の女性は無視して、それぞれマイとスイレンの前に立つ。
「あなたの名前は?」
蔦が服の一部となっている女性が、マイに名を訪ねた。
「誰かも知らない侵入者に、名乗ることはできません」
マイが、杖を女性に向けて言う。
「あ、そういえば名前を聞くときは、先にこちらから名乗らないといけなかったのよね」
女性が、忘れてたという顔をして言ったその言葉にもう一人の女性が反応する。
「そうなのぉ?じゃあ、先に私から名乗るわねぇ。
私は星の大精霊、ステラよぉ」
「私は大地の大精霊、シフ。
それで?あなたの名前は?」
”大精霊”その言葉に誰もが驚く。
「え......あの......」
マイは大精霊の存在を知らない。
初めて聞く言葉に、どうすればいいのかわからずにいた。
そんなマイとは違い、スイレンは口を開く。
「私はスイレン。
大精霊がなぜ私たちに声を?」
スイレンは、スミレが眠っている間にスミレと契約をしたイレイナのことを聞いていた。
どうして契約をすることになったのかも。
「ふふっ、あなたの想像してる通りよぉ。
私たちはねぇ、懐かしい気配がしたから来てみたんだけどぉ......」
そう言って言葉を止め、スミレをちらっと見る。
その視線はすぐにスイレンに戻る。
「あなたたちの戦いと、その思いにぃ惹かれちゃったのよぉ」
ステラがそう言うと、シフは頷く。
「そう。だから、あなたも名前を教えてくれない?」
リレスはキラキラと目を輝かせながらマイを見つめる。
「えっと......マイ、です」
マイが名乗るとシフは嬉しそうにほほ笑む。
リレスとステラはお互いの顔を見て頷き、自分の目の前にいる少女に訊ねる。
「「あなたは、私に何をくれる?」」
マイは急なことに戸惑っている中、スイレンは深く考える。
ー姉さんは、家族になると言った。
でも、それはイレイナが孤独を抱えていたからでステラには意味のないものだろう。
彼女は、何を求めている?ー
スイレンは、ステラたちの一言一言を思い出す。
◆
『面白いわね。あなた』
『そうねぇ、でもぉ、私はこの子が気に入ったわぁ』
『あなたたちの戦いと、その思いにぃ惹かれちゃったのよぉ』
◆
ー戦いと思い......
私には、”思い”なんてほとんどない。
じゃあ、なんでステラは私を?ー
スイレンはふと、ステラの後ろを見た。
そこには、自分が初めて強い思いを抱いた少女。
三つ子の姉、スミレがいた。
ーそうか、ステラが惹かれたのは私の姉さんへの思いか。
私の”姉さんを支えたい”っていう思いー
「私には、感情がほとんどない。
でも、姉さんへの思いはある。
だから、ステラ。私はあなたに感情が少ない私がたった一つだけ抱える感情を見せてあげる」
その言葉に、ステラは満足そうに笑う。
「いいわぁ、それで。
私の力、あなたに貸してあげるぅ」
そう言うと、ステラはスイレンの手を取る。
「私の後に続いてぇ」
「我は、星の大精霊ステラ。汝との契約を望む。
我は汝に新たな力を授けよう」
「我はスイレン。我も汝との契約を願う。
我は、ただ一つの強い思いを見せると誓おう」
「「ここに、我ら契約を交わす」」
その場は光に包まれる。
光が収まると、そこにはとてもうれしそうな顔をしたステラと少しだけ微笑んだスイレンが立っていた。
「これであなたはぁ、私の力を使えるようになったわよぉ」
ー新しい力......
これで、姉さんをもっと支えられるー




