すれ違い
「それでなんですけど、どうやって力を使えばいいんですか?」
マイが首をかしげて尋ねると、シフは説明を始めた。
「大精霊の力は、精霊のように魔力を渡すだけじゃ使えないわ。
私たち大精霊の力を使うには、歌を通さないといけないの」
その言葉にシュンとリリナは驚く。
「え?でも、姉さまはイレイナの力を使うとき歌っていませんでしたが......」
シフは、少し驚いたような顔をしたがすぐに笑顔になる。
「それはきっと、二人の相性がいいのと力が強すぎるからね。
イレイナは大精霊の中で一番すごい力を持っていて、彼女は秘めた力を持っている。
だから、魔力だけで力を使えるのでしょうね」
シフはそう言うと、スミレの前まで歩いてくる。
「ねぇ?イレイナ」
スミレを見つめながら言うと、スミレの背後に突如、イレイナが現れた。
「えぇ、スミレは私と同じ歌と氷の魔法を使う。相性がかなりいいわ」
イレイナは、最初に会った頃のように冷たい声をしていた。
「イレイナ?どうしたの?」
スミレが不思議そうに尋ねると、イレイナではなくシフが口を開く。
「イレイナ......
一度、きちんと話しましょう?
私たちは......」
「何を話すの?私はあなたたちにとって、異質なんでしょう?」
イレイナの声がどんどん低くなっていき、空気が冷える。
「違う......私たちは、あなたを......」
シフは必死に何かを言おうとするが、イレイナは聞こうとしなかった。
「ねぇ、イレイナ......」
そんな時、スミレがイレイナとシフの間に入る。
「私はさ、今まで母さんが私を嫌いだと信じ込んできたわ。
でも、違った。ただ、接し方が分からなかっただけ」
スミレは、イレイナの手を握りその瞳をまっすぐ見る。
「もしかしたら、あなたも何か勘違いをしているんじゃない?」
「勘違い?彼女たちは、私に『あなたは私達とは違う』って言ったのよ!?」
イレイナは、ひどく傷ついた顔をした。
「イレイナ......
彼女たちは本当に、それだけを言っていたの?
ほかに何か言おうとしていなかった?」
「え?」
そう言われて、イレイナは思い出す。
◆
世界が作られ、命が宿り始めた頃。
突如、イレイナは他の4人の大精霊に話しかけられる。
「ねぇ、イレイナ。
私達、世界を作って分かったの。
あなたの力は私達では、適わないほど強いって」
急にそう言われたイレイナは、困惑した顔をした。
「え?それってどういうこと?」
そう尋ねると、4人は頷き合う。
「イレイナ。あなたは、”私達とは違う”」
「え?」
イレイナの顔が固まる。
「だから......」
「私とは一緒にいられないってこと?」
そう言うと、4人は慌てた顔をする。
「ちがっ」
「いいわ。もう、あなたたちには近づかない」
そう言ってイレイナはその場を去る。
◆
「そうだ......
確かに私、話を最後まで聞いてないわ」
イレイナのはっとした顔を見たスミレはイレイナの手を放し、背中を押す。
シフの後ろには、いつのまにかステラがいた。
「ようやく......話を聞いてくれそうねぇ」
ステラがゆったりした声で言う。
「......あのとき、本当は何を言おうとしてたの?」
イレイナは、緊張したような顔をして、俯く。
「イレイナ。あなたはね、私達よりもはるかに強い力を持っているわ」
シフがゆっくりと、ハッキリと言う。
「だからね。あなたに、私たちのリーダーになってほしかったの」
その言葉にイレイナは顔を上げ、「え?」という顔をした。
「リーダー?どういうこと?」
ステラがイレイナの手を取り、ニコッと笑う。
「そのままの意味よぉ。
私たちはねぇ、あなたの力に感激したのぉ」
ステラは昔、世界を作った時に見たイレイナの魔法を思い出し、うっとりしたような顔をする。
「そう。
だから、4人で話し合ってあなたに私たちを導いてもらおうって決めたの」
シフもイレイナの手を握る。
「私たちは、あなたの力に恐れて、離れてもらおうとしたんじゃない」
「「私たちは、あなたに憧れて、導いてもらおうと思ったの」」
その言葉に、イレイナは涙を流し二人の手を強く、握り返した。




