君といつまでも
拓哉はスマホに取り込んだ父親であろう男を見ている。歳の頃は今の拓哉の少し下ぐらいだろうか──。目鼻立ちが整っていて、所謂イケメンのカテゴリーに属する。母親は恐ろしい事に今とさほど変わっていない。そう見えるのは色褪せた写真のせいだろう。ピンぼけとまでは言わないが、鮮明さのカケラすら感じられない。そんな写真でありながら、真ん中に写っている自分自身が皮肉にもこの写真が本物である事を証明していた。
年も明けて、明後日から仕事始めだが、ユリにはまだ会っていない。元旦に新年の挨拶メールが来ただけだ。瑠璃とは昨日会った。会ったというより、新年の挨拶に社長の家に行っただけだ。社長とは普通に話せたが、瑠璃とは少しギクシャクした感じがあった。瑠璃に対しての後ろめたさを取り繕う事が出来なかった。気持ちは完全にユリにある。残酷な話しだが、瑠璃に話さないといけない。それは分かっているが、昨日は話す事は出来なかった。
「すいません。桐敷さん、いらっしゃいますか?」
ドアをノックする音が響く。聞き覚えのある声だ。おそらく、あの刑事だろう。
「はい。今開けます」
軋むドアの向こうに警察手帳を開けて田渕が待っていた。
「年明け早々にすいません。あっ、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます。何となく来る感じしてました」
「それはまたどうして?」
「とりあえず寒いんで入ってください」
田渕は時代遅れのレザーコートを脱ぎ、部屋の中に入ってきた。何か変わった様子がないか、違和感を覚えるようなものはないか、そんな目で部屋の中を舐め回すように見ている。
「お茶でいいですか?」
「お構いなく」
リサイクルショップで買った安物の急須にほうじ茶の葉を入れた。ユリからもらったかなり高級なほうじ茶だ。お茶の事は全く分からないが、このお茶が美味い事は分かる。拓哉は、石油ストーブの上に置かれているやかんのお湯を急須に注ぐ。
「懐かしいな。めちゃくちゃ昭和じゃないですか。僕らの子供の頃ですよ」
「実は肌とか凄く乾燥肌なんですよ」
「それと石油ストーブとどう関係が?」
「やかんを加湿器がわりにしているんです」
「なるほど。新たに加湿器も買うとなればお金もかかるし、電気代も嵩みますしね」
「そうなんです。貧乏は辛い」




