鴉天狗と黒歴史
・大学受験成功したけど死ぬ
・死んで別のやつとして生まれ変わったら捨てられる
・能力のせいで修行の日々
・産みの母と打ち解けたら妖怪に襲われて暴走
・人里に居られない
・助けられながらやっと力の制御ができたぞ⇒よく考えれば人里にいけねぇ
なんだろう、主人公を不幸にするつもりはないのだが
「と、いうわけで――」
「ちょ、ちょーいちょーい待って、何が”というわけで”、なんですか?」
突如として現れた、黒いカラスを従えて、フリルのついたミニスカートと、半そでのシャツをきた少女が、紅魔館への道のりを飛ぶ聖の前へと降り立った。
彼女が言うには名前は『射命丸文』、『文々。新聞』とやらの新聞記者らしい。
「言葉が足りなかったようですね、貴方のことを記事にできたらと思いまして取材に来た次第です」
「はぁ、たとえばどういった題名で書くつもりで?」
「そうですね、肌の色が変わる紅魔館執事でしょうか」
……バレている。
これは別の話題でそらすべきか、何かしら交渉すべきか。
何かしら取材予定として書いてたらまたきそうだから交渉のほうを選ぶことにしよう。
「すみませんがそれについては書かないで頂きたい、その、書かれると困る」
「新聞とは書かれると困ることを書くものですが――何か理由がおありで?」
「はぁ、吸血鬼異変による人里の事件については覚えていますか?」
「あの異常な威力で空けられた大穴ができた事件でしょうか?」
「それやったの俺です」
「あややや、あの時は追おうとすると決まって妨害されていましたが、あのときの真実はここに!」
「たぶん発行部数は稼げないですよ、かなり知られているはずですし」
「まぁ面倒事はあまり係わり合いになりたくないので記事にするつもりはありません、……今そのことを話すということは、それに関連する話であることもわかりましたし……じゃあ紅魔館の執事について記事にしましょうか」
そういって射命丸文は懐からメモ帳らしきものと挿して置いたペンを引き抜くと、キャップを片手で弾くようにして引き抜いた。
キャップは下に落ちることなく浮遊している。
あまり記事にされるのは困るし、俺にそこまでの話題性はあるとは思えないのだが、雰囲気的に逃がしてくれないような。
参ったな、向かうまでの時間はかなり余裕を持ってやっているが、長々と話し込めるほどではない。
記事、話題性。
「共鳴させることができたぐらいしかないですかね」
暴走事件自体はかなり知られていることだが――触れることはあまりよろしくないこととされている。
おそらくは紫様あたりかレミリア様あたりが止めていたのだろう。
接触した成長の妨げにならないこと、もしくは俺の処分についての議論が再発しないことを考えての行動だと思われる。
借りが天高く積みあがっていることに気がつき、一生頭が上がらないだろうと考えて苦笑いを浮かべる。
「共鳴、でしょうか」
「とりあえず話していいかはレミリア様に問うてからになりますね、正直俺からはそんなポンポン話せることではないので、明日か今日の夕方あたりに来ていただければ、許可がでたらお話できますが」
「そうですね、新聞としては取材対象を不快にするのは三流ですから」
良い気持ちで洗いざらい話してもらうことが新聞記者としての技量です、とかなり怖いことをいった後に礼をして去っていく射命丸文を眺めて、さっさと紅魔館の方に飛んでいくことにする、時間は大丈夫だろうか、いつもよりかなり速くかっ飛ばしていく。
紅魔館についたのはかなりギリギリだった。
「いいわよ、紅魔館の執事としてその力を示しなさい」
うん、言うと思ってました。
掃除に鍛錬、勉学を終えて、レミリア様とフランドール様を起こした後、問いかけてみると、想定どおりの答えが返ってきた。
大きな椅子に座り、足を組み笑みを浮かべてそう言い放つ。
レミリア様は普段どおりでかなり威厳がある方なのだが、さらに格好良く見せたいと背伸びをすると空回りする。
なんていうか、容姿も相まって子供が大人っぽくみせているようにしか見えない。
「了解しました」
「なんならラグナロクを見せてもいいわ」
ラグナロク――一言で言えば全力で一撃を放つ技である。
名称はレミリア様が考えた、拒否できないのでラグナロクである。
北欧神話における『終末の日』、共鳴して爆発するかのように増幅した力を外部から圧縮し続ける。
何層にも強い力で押し込め続けたそれは、異様な存在感のサッカーボール程度の球となる。
それを力任せに腕に力を纏い、殴りつける。
すると黒い球は周辺の空間を破壊しながらまるで黒い光線のように相手にぶつかっていく。
任意のところで外枠へと衝撃を与えると抑えられていた力が拡大して巨大な黒い塊が拡大する。
溜め
・長い
威力
・食らったら相手は死ぬ
負担
・ぶん殴った腕がズタズタになりへしおれる
へへへ、なんか面白くなってきたよ俺、名称をつけられた聖は了解と言いながら思考はチャイナ服をきて盆踊りの曲でサンバを踊り始めるほどに意味不明になっていた。
拮抗するよりよけたほうがいい、変に対抗心を燃やして強い技で超えてやるとか言い始めると負けるといった代物だ。
「いえ、それはいらぬ騒ぎになるのでは?」
「まぁとにかく、紅魔館執事として恥じぬ力を見せなさい、いいわね?」
「了解しました」
そういって一礼して部屋から出る、咲夜さんがトレイに紅茶のセットを載せており、目が合った。
「……が、がんばってね」
「……はい」
癒しだと思った。
そのまま外へと出て、門のほうへと向かっていくことにする。
秋も深まってきたようで、枯れ木や紅葉を眺めながら近づくと、美鈴師匠がこちらへと手を振っていた。
「どうかしたんですか?」
「新聞記者の方に取材をされることになりまして、射命丸文さんという方が来たら連絡をお願いしようかと」
「わかりました、その人物については前も取材にきていたので大丈夫ですよ、というか――」
「その節はどうも、紅美鈴さん」
「来ていますから、お久しぶりです」
黒い羽根を纏いながら射命丸文は門前へと降り立った。
「お久しぶりです、幻想卿一の新聞である『文々。新聞』の新聞記者『射命丸文』です、本日は答えを頂きたいと思いましてこちらへとうかがった次第です」
「答えは『良し』です、それで、はじめるのはいつにしますか?今からでも大丈夫ですが」
「それでは今からでお願いします」
わかりました、そう返して共鳴を開始する。
そういえばこの状態の名称とか考えてないなぁ『共鳴状態』でいいか。
協調――そしていつもどおりの姿へと変貌する。
空気がパリパリと電気が走り、一変する。
――これについての情報もしゃべった、ラグナロクも見せた。
羞恥心に打ち勝ったぞォ!と終わった後、次の日に俺の家に新聞がおかれていた。
射命丸さんの新聞か、と拾い上げて題名を読む。
『覚醒した聖と邪を背負いし者』
「……」
人里はなれ、湖の先に紅魔館という吸血鬼が住まう館がある。そこでは十代の少年少女がメイドと執事をやっているらしい、
(中略)
「まぁ、この力は護るために使うつもりです、異変起こしたら霊夢にぶっ殺されますので」などと笑いながら彼はいった。
取材中の彼の性格を見るに、確かに荒事は好まない性格のようだ。
能力という激流に飲まれながらも彼はしっかりと足場を作り、そこにしっかりと立っている様だ。
情報では、彼の力は無限の可能性を秘めているといわれていた、そんな彼の次なる成長は直ぐそこにあるのかもしれない。
「……これ、幻想卿中の人に見られるんだよな」
『あ、聖と邪を背負いし者だ!』『覚醒した人!』
『覚醒した聖と邪を背負いし者じゃないか!』
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
誰だ、こんな名称を伝えたのは。
太郎――いや可能性があるのはレミリア様だ。
全力で紅魔館へと飛んでいき、美鈴師匠へと近づく。
「どうかしました?……ものすごい怒気を放ってますが」
「レミリア様、昨日どこかへいった、もしくは射命丸さんと話してたりはしませんでした?」
「あぁ、レミリア様がどこかへ飛んで行ってましたけど」
「あ、なんでこうなってるかはこれで」
「新聞、ですか?」
「それでは――」
怒りの対象は今決定した!
レェミィリィア様ァァァァッ!
怒りで思わず共鳴状態へと変貌する。
「うおおおおおお!無茶振りは許してもそれ以上は許さないですよォォ!」
この日、上白沢聖はこれまでにないほどにマジギレした。
そしてレミリアがにこにこ笑いながら背後に修羅をみせる聖に『怖すぎて泣きそうになった』と後に語ることになる。
「美鈴?苦笑いをしながら何を呼んでいるの?」
「……いえ、聖くんの苦労は続くんだろうと思いまして」
「新聞――あぁ、後でケーキを作りましょうか」
咲夜は新聞の題名が目に入り、美鈴と同じように苦笑いを浮かべる。
そんな彼女に美鈴は一度礼をした。
「せ、聖、紅茶を頼みたいのだけど」
「はい」
にっこりと、笑顔で、怒気を放ちながら、言葉は淡々と。
怒らない、ということは爆弾を目の前に置かれている気分だった。
レミリアは普段起こらない、面倒ごとを申し付けても大体は了承するし、無茶振りでも苦笑いを少し浮かべて了承する。
そんな聖がものすごい怒気を放っている。
しかし笑顔である、しかし言葉はものすごい淡々としている。
『こいつぁヤベェ』レミリアは一瞬でわかった。
「聖、これ以上あれでいじらないから許してくれないかしら」
「なんのことでしょうか?」
「あ、あの『聖と邪を背負い者』と新聞記者へ言ったことはわかっているでしょう?」
「レミリア様、それについては何も言わずともいいです」
レミリアはわかった。
『何を言われようとも許さねぇ』という意味であることを。
「だ、大丈夫よ、七十五日っていうじゃない」
「それは流した人がいうことじゃないですよね」
ぐぅの音もでない正論である。
数日の間、レミリアは稀に起こる大きな音にひどく脅えるようになった。
聖は怒ることは長続きしないのか、半日もすれば怒りも収まった。
いや、『もうどうにでもなれ』と諦めたのが正しいのだろう。
魔理沙が面白半分で呼んできたが、言葉を交わすと無茶苦茶心配して無理やり家のベッドへと寝かされたが、よくわからなかった。




