苦労性・大晦日
久しぶりすぎて、わかりません。
カレー特集のせいで、何も考えずに書いたらカレーの話題ばっかりですよ。
外の世界がヒートアイランドやら、地球温暖化やらと、温度が上がるのが問題になっているというのに、幻想卿はそんなものは関係ないといわんばかりに雪が降り積もる、既に三日目となる。
そんな外の景色にため息をつく、霊夢は神社の巫女であり、唯一の管理者といっても良い、いつでも人が来ても良いように、そして神様のために雪を整理し、通り道を作らなければならないが、こう長く続くとやる気を無くす。
既に朝はやったのだから、もういいでしょうとぬくぬくとコタツへと入り、その温かさを享受していると、コンコンと扉を叩くものが現れた。
「……面倒ね」とボソリと漏らしながらも、声をかけて入ってくるように促すと、現れたのは見知った顔、聖と魔理沙の二人だった。
「聖はこの時間に神社にくるのは珍しいわね」
「大掃除は既に終了したし、大晦日だから修行は無い、そして夕方から明日の昼間まで紅魔館のほうに仕事だからな」
「忙しそうね」
と、口では言うが、興味なさそうな霊夢に苦笑いの聖。
魔理沙はコタツの中に既に入っており、ぬくぬくと猫のように丸くなっていた。
「いやぁ、炬燵は日本人の最高傑作だな」
「同意するわ、聖、熱燗を一杯くれないかしら」
「霊夢、昼だ、昼、明日にとって置けよ、どうせ夜あたりに宴会でもおっぱじめるんだろう?」
「聖は来るんだよな?」
「いや、俺は眠いだろうし」
「来るんだよな?」
「来るのよね?あぁレミリアたちが増えたから料理も多くなって疲れるわね」
「わかったよ、手伝うよ、手伝えばいいんだろう」
二日も仕事だよ!と言い放つが、霊夢と魔理沙は「楽しみねー」「楽しみだなー」とシレッとしている。渋い顔をした聖は、心の中でため息をついて、こういうことは既に慣れているのか、直に思考を切り替える。
「ほい」
ポケットから、入るであろう容量を大きく超えたサイズのものを取り出し、炬燵の上へと載せる。
咲夜により、ポケット内部の空間を広げて貰っているので、口のサイズのものなら入れることができる、ちなみに刀もこの中にある。
霊夢と魔理沙は出されたものへと注目し、首を傾げた。
そこには『カレー粉』とかかれたものがあった。
「カレー、確か外では良く食べられているもの、だったわよね」
「霖之助さんのところに何気なしに言ったら置いてあってな、テンション上がって買ってしまった」
「カレー食べられるってことでいいのか?」
「カレーうどんでも、カレーライスでも」
おぉっ!と魔理沙が歓声を上げた、未知への探究心が人一倍大きな彼女にとって、目の前の存在は一種の冒険だ。
対する霊夢はそこまで感情は動くことなく、じっと缶を見つめていた。
「台所、借りれるか?」
「えぇ、どうぞ」
そう言われて、少し残念では有るが、炬燵から足を引き抜き、火鉢によりあったまっているとはいえ、さすがに寒い道のりを歩き、台所へと入る、当然エプロンを上着を脱いでから着込む。
執事服のポケットから野菜を取り出す、たまねぎ、ジャガイモ、ニンジン、鳥もも肉と取り出し、マイ包丁を取り出しと、保護ケースから抜いて、皮をむき始める。
トントントンとリズム良く響き渡る包丁の音色、これを聞くと、料理も上手くなったものだと、誇らしげになる。
そのままみじん切りにされたたまねぎを、油を引いて、魔法の火で暖められた鍋へと放り込む、たまねぎの水分がパチパチと油を飛ばすが、驚くことも無くそのまま料理を続ける。
「……シンプルすぎるような」
そう考えて蜂蜜やら林檎やら、生姜もいいかもしれないと複数取り出す。
前世、といっても時代も世界も変わりはしないが、カレールウは本当に便利なものだ、と思った。
よく母さん、当然のごとく前世だが――アレンジをしようとして、正直スパイシーすぎるカレーになり、味が良く分からないものだった。
そう考えてみると、アレンジしすぎることはやめておこうと考えて、複数個の材料から二、三個程度を選ぶ。
鶏がらとか、コンソメとか、そんな楽なものは無い。
「甘口で、いいか」
そういって林檎を手に取った。
調節しつつ、カレーの味を損なわない。
料理を始めて、毎日のようにというか、咲夜さん一人で作る以外はほぼ全て自分で
作っているし、紅魔館の料理は一切妥協を許さない、出せるかどうか、研究するために咲夜さんと共に大図書館の料理本を引っ張り出して作り、食べあったりもしている。恐らくは料理の腕前は、プロとはいかずとも、おいしいといわれる程度にはある。
「よし、できたな」
大成功とは行かずとも、まろやかな味わいだった。
あまりアレンジせず、保守的にいったのが良かった、どこか懐かしさを感じるカレーだった。
……あぁ、給食のカレーに似ているのか。
そう考えて、納得する。
後は簡単、米と――米。
「……米」
――炊いて、ないねぇ。
楽しかった頭が急速に
冷えていく、音も無く台所を捜索し――炊いた後のご飯を発見。
あぁ、あぁよかった。
さすがに今から他の料理に変更することはできない。
安堵しながら取り出した皿にカレーを盛り付けて、二人の待つ所へと持って言った。
さて、彼女達の反応は、というと。
「匂いはいいけど、見た目があれだな、う「やめろ」……食事前だったぜ」
「まぁ聖の料理だしハズレってことはないでしょう」
信頼してくれて何より。
スプーンを差し出すと、それを受け取り、皿から救い上げる、ドロリとしたルーは、小麦粉でとろみを作り上げた。
口に運び、もぐもぐと口を動かしながら聖を見て、こくりと頷いた。
美味いという事でいいのかこれは、と少し疑問を感じていると、同時にゴクンと喉を鳴らした。
「これ、意外においしいわね」
「なんで幻想卿では食べられないんだ?」
「カレーは明治に日本伝来していた、作られた当初は恐らく一般的ではないと思われる、出会った留学する日本の物理学者もあまり食いたくはないといっていたらしい、しかしその後、カレーの作り方を記した本から、流通が始まる、しかしたとえどれだけ美味しくとも流通するには長い年月がかかる、その前にこの幻想卿が誕生したとしたら、カレーというものがあまり知られずに今このときに――」
「いや、普通にカレー粉とかが手に入らないからじゃないの?」
「……話を聞いてくれませんか」
「聖の話は長いから嫌だ」
歴史関連の話になると、みんなが冷たいです。
聖は心の中でそう思い、少し泣いた。
食べ終わり、台所へと皿を水につけて、居間へと戻る。
食べ終わった後でぐでぇとしている、霊夢と魔理沙に「牛になるぞ」と声をかけると霊夢は「お正月は忙しいから今英気を養うのよ」と言い返され、魔理沙は「大晦日と正月は、寝正月にするって先祖代々決まってるんだ」と意味の分からない言葉を返される。
まぁいいか、そう考えて聖は炬燵へともぐりこむ。
「夜から儀式、日付を超えれば参拝客、正月はイベントが多いのよね」
「儀式……霊夢が巫女らしいことを言っているのを初めて聞いたんだが、聖、ヤバイぜ、明日はロンギヌスが振る」
「神がどんどん死ぬな」
「巫女が神を殺す原因を作る、皮肉なものね、それも正月にだなんて」
「……誰かツッコんで欲しいんだが」
不満そうにそういう魔理沙に、聖は無言でいれておいたお茶を差し出した。
ずずずっと音を立てて、ホッとした表情をする魔理沙は数秒前など忘れたかのように和やかな顔をする。
――単純すぎるでしょうと、霊夢が少し呆れながらも、差し出された茶を受け取り、口元へと運び、一口。
「聖のお茶って妙においしいわよね」
「正直執事が天職だぜ」
「執事は基本サポーターだからな、お茶だけで判断するもんじゃないからな」
そうは言いつつ、嬉しそうな聖だった。
さて、自分も、とお茶を手に取り、口に運ぼうとしたときだった。
外から強い風が吹いた音が響き、ガタガタと閉められた雨戸が揺れる。
「雪かきしておくから、シャベルとか、そういうものはどこにあるんだ?」
「そこから出て、雨どいを開ければすぐに立てかけられてるわ」
「わかった」
そういって重い腰を上げて、コートとマフラーを着込み、皮の手袋をはめて、聖は外へと出て行った。
それを見送り、霊夢と魔理沙は聖の置いていったお茶を見る。
「勿体無いわね」
「じゃあ勿体無くないように私がいただくか」
「茶葉と湯のみとお湯は神社のものだから、所有権は私にあるわね」
「よく言うぜ、妖怪に対して軽く奪っていくのに」
「妖怪に人権は無いわ」
湯のみを手に取り、霊夢は自分の下へと引き寄せる。
外からザクザクと雪かきの音が響き渡る。
「なんていうか、本当に執事が天職よね」
「前に怪我したときとか、当たり前のように傷薬と包帯を持っていたぜ」
「多分聖と一緒に住んだら、全く動かなくてもいいでしょうね」
「すばらしい提案だな」
「……おいコラ」
呆れ顔で聖が雪を頭に載せて、障子を開け放つ。
「というより、幻想卿では無いタイプなのよね、人に尽くすタイプって」
「女をダメにするタイプだな」
「おい無視して話を続けるな、誰が女をダメにするタイプだ」
「神職について理解あるから、基本全部やってのけそう」
「『聖、こういう本が欲しい』『あぁ読んだことあるな、持って帰ってくるよ』」
「なんだ、俺はあれか、酷使されるという星の元に生まれたのか」
霖之助と言い、聖といい、幻想卿の男衆は苦労性である。
「あら?聖、その鍋なんなの?」
「カレーですね、外の世界ではメジャーな食べ物です」
「そういえば、食べたことあるわね」
「そうなんですか?」
レミリアは興味深そうに、聖が両手に抱える鍋の蓋を開けて中身を見る。
「良い出来ね、でもここでカレーなんて見たこと無いけど」
「カレー粉を発見しまして」
「まだ残ってるの?」
「えぇ、何か作ります?」
「蕎麦の香りと味を無くさずに、かつ引き立てるカレー南蛮を」
つまり、それ専用の汁を作れということだ。
「そうね、今年の年越し蕎麦は普通のものとカレー南蛮ね、半々にしてくれるように咲夜に言っておくわ」
そしてそれは今年中、つまり年明け前に作れといっているのだ。
「……リョウカイシマシタ」
「蕎麦の風味の方向性、出汁、そこからカレー、出汁のまろやかさ、蕎麦の本来のうまみ、それを……」
「めめめ、美鈴にヘルプ頼んでくる、帰ってきたら手伝うから!」
「時間をかけずに最大限の旨味を――」




