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7. 塾通いと発表会

なろうにたくさん小説でている中、読んでいただけて感謝です。このお話は、息子との伴走の経験で書いていますが、基本フィクションです。

感想欄に中学受験で聞きたいこと書いて頂ければ、回答できる範囲でお答えします。参考になるかどうかは別ですが。

 そうこうしているうちに2月になった。クラスは成績別に2クラス。シグマもだと思うけど、僕はまず下のクラスに入れられたんだ。さぞかしものすごい分量をやると思ってた。

 お前は絶対忘れてるだろうが、僕たちのテキストは、基本、標準、発展って書いてたよね?でも元算数講師の僕からすれば、常識、基礎、基本、ぐらいだった。ああ、常識から教えて基本問題やらせるのね、とその時は思ったんだ。時間配分、大変だな、と思ってたんだ。

 教室に入ったら、茉奈ちゃんが座ってた。

「かなたくん、来たんだ。こっちにおいでよ」

同じ小学校で固まって座っていた。違うクラスの子もいて、初めましても居たけどね。

「かなたくんだ」

「王子様だ」

目をハートにされるのは嬉しい。ほかの学校の女の子たちも、好意的に接してくれた。

 算数の授業が始まった。正直初見の内容なんて何にもないからまだ眠いだけだったけどね。

 常識を通り一遍の説明をして、基本問題の演習をやって、その日の授業は終わった。

「え?これだけ?」

そう思って、茉奈ちゃんに尋ねた。

「この超キホ、ううん、発展問題ってやらないの?」

「何言ってんの、まだ私たちには難しすぎるって、先生言ってたよ」

いやいや、このレベルから模試に出てくるでしょ、って僕は思った。だいたい、上のクラスの子はこのレベルの問題を塾が教えて、模試にそのレベルの問題を出すわけでしょう?どうやって追いつくの、って思ったよ。

その週の日曜日に模試があって、次の日塾に行くと、僕の名前が掲示板に貼ってあった

「1. 逢坂かなた」

この教室での順位らしい。全体順位も2番だったって聞いた。前世チートでも一番にはなれないか。出欠用のカードリーダーを通したら事務の人に呼ばれたよ。

「逢坂さん、今日から上のクラスに行ってね」

言われた教室に行くと、今度は学級委員長の優里ちゃんがいた。

「あ、かなたくんだ。名前貼られてるの見たよ。すごいね」

マグレだけどね。たまたま計算間違いがなかっんだ。この頃のテストなら分からない問題なんかまず出ないもの。計算を間違えるだけで。

 この時に塾全体1位だったのは、我らがリーダー九城蓮くんだったらしい。あいつは、本物だと思う。あ、なんか機嫌が悪くなったお前が見えた気がした。

 授業では常識の説明はすっ飛ばして、テキストでいうところの標準問題と、発展問題の説明をしていた。やっぱりそうじゃないか?これで、下のクラスで実力をつけておいつきましょうだって?無理ゲーだろって思ったよ。こうやって、上のクラスの生徒は、どんどん先を走り、下のクラスでは「実力をつければ上に上がれますから」って言うんだよね。ちゃんと教えてやれって思った。あいつらに追いつくには、難しい問題をやらないといけないんだよ、って。

 正直2月、3月は月謝を払ってもらうのが申し訳ないぐらい、学ぶことがなかった。まあ当然だ。小学生としては2周目だしね。しかし、僕には大事なイベントが迫ってたんだ。ピアノの発表会だ。

 でね、美沙子さんが張り切って白いドレスを買ってきたんだよ。僕もウキウキしながら、袖を通したんだ。そこまでは良かったんだよ。

 そのままピアノの前に座って楽譜を見ると、音符が歪んで見えた。そして、鍵盤に指を落とす。自分でもわけの分からないぐらい、ミスタッチの嵐。つい昨日まで、

「もう、仕上げだよねえ」

とか言ってたのに、音は間違えるは、絶望的に音が良くない。今だから思うんだけど、たぶん前のかなたが、女の子の服を着せたときに、真面目にやらないで美沙子さんに嫌がらせをしたことがあったんじゃないかな。何とか弾き終わって顔の向きを帰ると、般若の形相の美沙子さんが立っていた。

「ふざけてるの?」

いつもよりもトーンの低い声に僕は震え上がった。僕なりに一生懸命弾いたんだけど、パァンという音が響いた。目に涙をためながら美沙子さんは僕を睨みつけた。僕は頬を手で押さえた。まだ熱と痛みが残っていた。

パァーン。

もう一回、今度は反対側の頬から音がした。

「ふざけてないで、ちゃんとやって」

動けなかった。僕の目にも涙が出てきた。今なら理由がわかる。僕にとって、美沙子さんは、着の身着のままでこの世界にやってきた僕にとって、守護者だったんだよ。

 その守護者が突然牙を剥いたんだ。真っ暗闇に一人放り出されたように感じたんだろうね。

「オネガイテス。ステナイデクダサイ」

僕は小さく、抑揚のない声でそう言った。

「オネガイテス。ボクをステナイデクダサイ。イイコニナリマス」

「オネガイテス。ステナイデ。ナニヲスルコガイイコデスカ?」

そう言って僕は美沙子さんに抱き着いた。抑揚のない声で意味のわからないことを言いながら、美沙子さんを抱き締める力を強めていった。

我に返ったのは美沙子さんが大声で泣き出したからだ。

「ごめんね、ごめんね」

美沙子さんは泣きながら僕に謝っていた。

「あなたも頑張っていたのにね」

聞き間違いじゃないと思う。この時、きっと9年間共にしたかなたではない僕に向かって、あえてあなたという言葉を使ったように思える。

 僕がかなたになってから、美沙子さんが「あなた」と僕のことを呼んだのはこれっきりだ。かなたの聞き間違いじゃないかって?それはそうかもそれないね。

 涙と鼻水で汚れてしまったドレスは早速クリーニング屋さんに持っていかれた。それから何度かチャレンジしたけど、男の子の格好の時のほうがやっぱり上手で、美沙子さんは貸衣装屋でハーフパンツとプレザーの男児向け正装を借りてきた。

 発表会では同年代の子よりは上手だといろんな人に褒められた。ただ美沙子さんは「息子さん、上手ですね」って言われて口をへの字に巻けていた。

 発表会のあと、美沙子さんが出番のなくなったドレスを見て、ため息をついていた。僕は聞いてみた。

「もう、着れないかな?」

「大きめのやつ買ったから、来年の今ごろならむしろちょうどいいと思うよ」

こうして、僕の可愛くてオツムの弱くない僕への道は一大転機を迎えるんだ。あ、そうそう、シグマはこのドレスを着た僕を見てるんだよ。その話は、また書くね。

 




子供を塾通いさせて、マジで驚いたのですよ。「発展って書いてるけど、これが普通の問題だろ」って。

基本と応用って書いてたけど正直「解く意味ある?」って問題でした。中学受験未経験の僕には衝撃でしたね。こんな易しい問題テキストに書くって意味で。

で、子供は無邪気にいうのです。「先生、やらなくていいって言ったよ」

で、クラスが上がると、発展問題を普通にやってると。どうやって追い付けってんですかねえ。しかも、模試には普通に出てきますしね。ちょっと塾に不信感ができました。


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