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4. お姫さまって、女の子の夢だよね

わざわざ読んでくださってありがとうございます。

子供の時にこういうことをしてたらなあ、と、今更ながらに思いますね。

 かわいい服、といえばこんな思い出があるんだ。夏休みになる少し前だったと思う。テレビでテーマパークの特集をしていたんだ。

 そこで、アナウンサーさんとタレントのお姉さんが、お姫様みたいなドレスを来て、テーマパーク内を回っているのを見た。そこで僕は言っちゃったんだよね。

「いいなあ。うらやましいなあ」

って。たぶん美沙子さんの目はそこで怪しく光ってたんだと思う。

 夏休みの間は家ではほぼワンピースで過ごした。だって楽なんだもん。で毎日時間を決めて漢字ドリルと計算ドリルをやっていた。100マス計算ってやつね。

 根気強くやってると、美沙子さんの言う通り、九九ぐらいはできるようになった。驚いたのは、ボーイッシュな部屋着に着替えたときに、計算が以前より速くなって正確になっていたことだ。

 数値計算の遅さは、大学受験の時、結構課題だったんだ。こっちでも速くなるならとワンピース姿で計算ドリルをするのは苦ではなくなった。

 この頃からチャレンジしたものは他にもある、英語と百人一首だ。前世では英語と古文がとにかく苦手だったんだ。しかし、まだ大学受験まで10年近くある。こういうのは毎日少しずつコツコツやるのが効く。シグマも悪いことは言わないから、今からコツコツやっていた方がいいよ。僕みたいになったら大変だからね。

 百人一首も毎日最低一回は全部読もうと決めた。いきなり暗誦しようではくじけてしまう。こういうのは、やれることを毎日必ず続けて、ちょっとずつちょっとずつ強度を上げていくのが大事なんだ。

 英語は、美沙子さんに頼んで、発音を矯正してくれるオンラインの個人授業の先生を探してもらった。不思議なことに、こういう語学系の能力はワンピース姿でも前世と変わんなかったんだよね。この先生には、今でもレッスンを受けてるんだよ。

 夏休みは暑いし暇なので、こういう訓練にひたすら励んだ。2周目の人生でありがたいのは、こういう苦労を身に沁みて分かっていて、しかもとにかく暇なことだ。日によっては、何時間も百人一首を詠んでたり、ピアノを弾いたりしてたよ。小学生のときはあんなに暇だったのに、前世ではどうして僕はあんな風に無為に使ってしまったのだろう?

 そんな風に過ごしている夜、美沙子さんに言われた。

「今から、デゼニーランドにいくよ」

僕は目がまん丸になった。

「何、急に」

「やった、大成功」

陽一郎さんと美沙子さんはハイタッチをしていた。いつも思うけど、この二人距離近いなあ。夫婦だから当たり前なのかもしれないけど、前世の両親はあんまりベタベタしなかったからね。

 わけもわからずに夜行バスの乗り場に連れて行かれ、僕は二人の間で眠った。

 翌朝、シャワールームでシャワーを浴びてお着替え。すると不思議なことに美沙子さんは僕に男の子の格好をさせたんだ。

「あれ、スカート着せないの?」

美沙子さんの態度や表情は間違いなく何かを隠してた。

「そんな気分のこともあるのよ」

と、美沙子さんは答えた。

 そこからテーマパークのゲートを抜けて、お城の形をしたところに連れて行かれた。扉をくぐると係員の人が尋ねてきた

「二名様と伺ってましたが?」

美沙子さんがニヤリとして答えた

「この子、これでも女の子なんです。こういう服装が好きで」

やられた。これをやるためにこの格好をさせたのか。

「じゃ、かなた、言うことをちゃんと聞くのよ」

「はーい」

僕たちはそれぞれ別室に連れて行かれた。ドレスを選んで、アクセサリーを決めて、服を着せてもらってメイクなんかもして、待合室に行くと陽一郎さんがカメラを持って待ち構えていた。

「かなたかわいい」

を連呼しながらシャッター音が響く。僕も待合室の鏡を見て、スカートの裾をちょっと持ち上げて首を傾げで見たりした。うわ、僕可愛すぎ。

 そう言えば、写真見せたことなかったね。今の僕もかわいいけど、この時の僕もなかなかだぞ。でも、もっとかわいくなってみせるよ。なぜかって、そんなの、わかってるだろ?

 しばらくしてから、美沙子さんが出てきた。シャッター音が止まって、待合室に静寂が訪れた。

「パパ、写真。ママ、ポーズ取って!」

僕の一声で、シャッター音が復活した。美沙子さん、マジでキレイだった。美人だと思ってたけど、本気で盛ると半端ない。

「綺麗だよ」

「そう?」

僕は彼らに背中を向けた。キスでもしてたらいいな。でもちょっと疎外感を感じたよ。しょうがないけど。

 その後美沙子さんは僕を一瞥すると、僕にリテイクを命じた。カタログを持ってきてもやって、オプションのアクセサリーから何点かを選んで身につけることになった。

 それからはとにかく気分が良かった。

「うわ、綺麗。娘ちゃん可愛い」

という声が聞こえてくるし、

小さい女の子や男の子が僕たちの方にきて

「二人ともキレい」

とか言ってくれる。ドレス姿のままアトラクションに乗ったりもした。僕は一日お姫様気分で、本当に楽しかった。また大学生になるまでに、シグマとも行きたいな。絶対に惚れ直して貰える自信あるよ。

 お城に戻って僕は男の子の姿に戻った。でも、僕にかかった魔法は、たぶんそのままだったと思う。

時々テレビでアナウンサーさんやタレントさんがドレス着て夢の国をめぐってますよね。

娘がいたら楽しかったろうなあ。僕自身はもちろんやったこともなければ、見たこともないんですが。

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