11. 君には僕は僕ではなかったみたい
うおお、前書きつけるの忘れてたよ
次の塾の日、僕が教室で座ってると、シグマは僕の横の席に座ったよね?ちょっとうれしかったんだ。優里ちゃんは僕たちが仲良くしているのを見て、
「何があった」
という顔をしていた。お前は僕に頭を撫でられて満更でもなさそうな顔をしていた。
優里ちゃんもお前が水無月至馬だとわかってなかったな。
「この子誰」
って聞かれたので、
「コイツがあの水無月だよ」
と答えたら、あり得ない、って顔してたよな。
「教室のワン・ツーが性別不詳と謎の小動物って、この塾いったいどうなってんのよ」
あ、ちょっと傷ついたぞ。
「なんでこの人ボクの名前知ってるの?」
お前が無垢な目で僕と優里ちゃんを見たの、よく覚えてるよ。お前の名前だけは教室の同じ学年の生徒ならみんな知ってる。毎月掲示板で見るからね。
さて別の日のことだ。その日は算数の授業がなかったから、スカートをはいて塾に行った。お前は知らなかったみたいだけど、教室のエース、逢坂かなたがいつもは男の子に見える格好で来たり、ときどき女の子の格好で来るのは、この教室ではわりと有名な話だったんだよ。
お前はいつものように僕のそばに座るのかと思ったら、誰かを探す仕草をして、僕が座っているところとは反対側に座った。僕はちょっとムッとしてお前に近づいて、
「おい、どういうつもりだよ」
と、机を叩いたら、お前は怯えて顔を隠した。僕は頭にきて、元の席に戻ってきたんだ。
優里ちゃんには、
「あら?彼氏とケンカ?」
とからかわれた。僕は、
「彼氏じゃないよ」
と言い返し、プリプリしながら授業を受けていた。その日は久々に一人だった。
次に教室に行くと、以前のようにお前は僕に寄ってきた。
「時々、すごくかわいい子が座ってるんだけど、かなたくん、気づいてた?」
僕は何か、嫌な予感がした。
「この前せっかくその子が僕のそばまで来たんだけど、なんか怒ってたんだ」
と、せっかくのチャンスを無駄にしたとこぼしてきた。
「怒ってたとは言え、せっかく話しかけてくれたのに、何も喋れなかった」
と、しょぼんとしてる。
「あ、そう言えばこの前かなたくん、いなかったよね。算数がなかったから?」
そこで、ようやく状況が飲み込めてきた。お前がスカート履いてる僕が僕だと分かってなかったんだって。
このやりとりを聞いていた優里ちゃんがくすくすと笑っているのに僕は気づいて、
「何笑ってんだよ」
と怒ったんだ。そしたら、優里ちゃんは、
「よかったじゃない、両思いで」
と耳打ちしてきた。
違う日に、わざと「水無月くん」と声をかけたら、同じように逃げたよな。覚えてるか?お前は次の授業で、「あの子、僕の名前覚えてたんだよ」と僕に興奮気味に話していたよな。
そして、僕は優里ちゃんが僕たちのやり取りをみていた時の表情の方を、よく覚えている。
小学生の女の子でいますよね、
男の子だと思ってたら、ある日スカートはいてきて、「え?、女の子だったの」って距離感微妙になったりとか。子供の頃に、たまに会う女の子で、そんなことがありました、脳内の認識を変えるだけですが。




