12.これが天才というやつか?
アクセス解析を楽しみに毎日生きてます。
毎回読んでくださる方、ありがとうございます。
4年生も半ばを過ぎると塾の内容もだんだん難しくなってきて、僕もだんだん前世チートだけでは戦えなくなってきた。よく、難関大学生が難関中学に入れるか、って話が話題になるけど、有利ではあるけど、無敵ではないね。それは逆も同じ。中学受験で最強の称号を得たお前だって、安穏としてたら僕がいた大学も難しい。
そんな僕から見て、お前はとにかく不可解だったよ。同じ授業を聞いたはず。元算数教師として、まあこれは分かってるだろう、って内容があるんだよ。優里ちゃんなんかは普通に分かってる。
しかしだ、授業後の自習時間僕がテキパキと宿題を片付けいるのを見てお前は言ったんだよ。
「どうして解けるの?」
って。首を傾げて、えへへ、っていう態度が可愛かったからつい頭を撫でちゃったけど。
「さっき、授業で習っただろ?」
お前は首を傾げたまま変わらない。天然だから、もう可愛さマックス。だが、この時は元教師としての興味が勝った。
「お前さ、今までも授業を受けて、なんもわかってなかったのか?」
お前は怯えた目で無言で頷いたね。
「怒ってんじゃないよ。じゃ、どうしてたんだ?」
「お父さんが教えてくれるの」
「お父さんが?」
シグマのお父さん一体何者だ?
再び頷いた。
「僕が説明してやる。よく聞いておけよ」
それから自習時間は、僕の実験の時間になった。不思議なのは、授業の内容はほとんど頭に入っていることだ。
「うん、この問題はこうやったよね」
ちゃんとわかってる。しかし、なぜ書かない目の前の問題と接続されない。しかしだ、僕とデッドヒートを繰り広げているエースの一角なのだ。これまでも、どこかで接続されているはずだ。
なんの手応えもないまま時間切れになったんだ。ところが次の算数の日、お前はこう言ってきた。
「かなたくんの説明のおかげで、なんか解ける様になったよ」
可愛さに磨きをかけて頭を撫でるような仕草を見せたから、頭を撫でてやった。お前はその場でくるくると回り出した。
その日の自習時間、お前は僕にかまって欲しそうにしていたけど、あえて無視したんだ。捨てられた猫みたいな顔に負けそうになったけど、ぐっと我慢した。
次の算数の日、
「かなたくん、教えてよ」
とお前は言ってきた。
「お父さんに教えてもらうんじゃないのか?」
「今週出張中でいなかったんだ」
そっか、ちょうどいい。自習時間で、先週分もまとめておしえた。次の授業の日
「かなたくん、ありがとう。かなたくん、やっぱりすごいや」
とお前は言ってきた。なんか解せないと思ったよ。と同時に、こういうのが真の天才なのかも、とも思った。こういう奴らは、僕の周りにはいなかったからね。
僕の周りにいた秀才は、自分も含めて、こんなタイプが多かった。授業を聞くとおおむね内容を理解する。自宅に戻って復習する。分からなかったら、先生に尋ねる。そして理解を深める。
ま、おおむね初回の習得の筋がいい。しかし、お前みたいに何もかもができないやつは初めてみた。そんなやつに、僕は何度も敗北していたわけだ。前世チートがあるのに、だ。
軽くショックだったのは、僕が解けなかった問題を模試やアル特ではお前が解いていたことだ。確かにちょっと発想の転換が必要だったけど、僕が教えた単元の問題だった。なのに、僕は解けなくて、お前は解ける。正直、これが才能の差だと思ったよ。ズルいな、って思った。
ただ、ズルいのは僕の方がズルいからな。お前の倍以上生きてるおねーさん(?)だもの。だから、お前に授業解説をするのをやめようとは思わなかったよ。それに、どんな形にせよ弟子が成長するのは見てて楽しいものだ。
塾が終わったある日、受付の前にすごいイケメンなおじさんが立っていた。ただパンツにシャツとジャケットを羽織り、コートを持っているだけなのに、妙に絵になっている。しかし、どこかで見た覚えがあるんだよな。
誰の父親だろうかと思っていたら
、お前が「お父さん」と呼びながらかけていった。え、あの愛玩動物系が、成長したらあんなイケメンになるのか?そんなわけで、おねーさんは期待してるぞ。
僕がお前を目で追っていたら、おじさんと目が合った。そしたら、僕の方に来て、言ったんだよ。
「君が、かなたくんかい?」
僕は肯いた。おじさんは僕の全身をジロジロ見ると、耳元でこう囁いた。
「間違ってたらごめんね。女の子だよね?」
僕は目をパチクリさせた。この格好で女の子扱いされるとは思ってなかったからね。
「間違ってないです」
僕はお前に聞こえるように言った。すると、もう一回耳打ちされた。
「シグマが毎週探してる、可愛い子ってのも?」
「自信ないですけど、たぶんそうです」
「かなたちゃんのお母さんとは、何回かお話したことがあるんだ」
アル特の時に、同じ教室だったので意気投合したらしい。周りからは美男美女が並んでいて、別の意味で目立っていたみたいだけど。
「シグマに算数教えてくれてるんだってね。ありがとう」
「いいえ、僕も勉強になりますし」
ほとんど違う意味だったけど。謎の新生物の生態観察、みたいな。
「あいつ、おかしいだろう?」
流石に僕は二十年以上生きてるおねーさんなので、即座に肯定したりしなかったけど、時間の空白が彼の言を肯定していたのは明らかだった。
「無理しなくていいよ。親の僕がよく分かってる。昔から入力と出力の相関がおかしい」
そこで、面と向かって僕に言ったんだ。
「塾でいい友達が見つかってよかったよ。末永く、僕たちを頼むね」
これが策さんとちゃんと話をした最初の記憶だよ。
ところで、策さんに聞かなきゃと思ってることがある。このときの末永くって、いったいいつまでのつもりだっの、って。
ここまで極端ではなかったのですが、ほんと息子の理解力は意味不明でしたよ。ええ。「なぜこれが分からない」と疑問に思うぐらい、習った直後の定着が悪い、でも、模試になると点を取ってくるんですよね、自分の知る秀才の定義に当てはまらない。
コイツはこういう生き物だと思うことにしました。皆さんの周りにはそんな人いますか?




