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9. 究極という栄光、但し有償

オプションといいつつ、実際には標準品かと思うぐらい、皆さまお買い上げですよね。なんか、あなたのお子さんの頭脳に敬意を評して、支払いの権利を差し上げます、って言われてる気分でした。

 たぶんお前のことだから、塾からの連絡事項とか伝えてなくて、策さんに小言を言われたのは一度や二度ではないと思う。その点、僕は完璧だったよ。中身はオトナだからね。

 そんな僕でも陽一郎さんと美沙子さんに、絶対に見せないものがあった。選抜特訓の申込用紙だ。僕たちの主戦場だった絶壁特訓も、そういう選抜特訓のひとつなんだよね。お前、わかってたか?

 夏期講習の案内はちゃんと見せて、それには行かせてもらうことにした。まあ、別にいらんかなあって、思ったけどねえ。でも、毎日決まった時間に教室に向かうことは、いいペースメーカーになるもの。

 でも選抜特訓は金額を見て隠しておくことにしたんだ。だって高いもの。一番難しい問題は季節講習だ、という話も聞いたので、あえて追加金額を払わなくても、と思ってた。それに、まだ土曜日は遊びたかったもん、ピアノや英語もあったしね。

 夏期講習から戻って来たある日、美沙子さんがいつになく上機嫌で出迎えてくれたんだ。

「かなた、あなたってすごいのね!」

その日は塾で元塾生の親たちの話を聞く日で、美沙子さんは行って来たんだって。話していた母親がその子供の進学先の卒業生で、

「同じ学校に通ってくれてうれしい」

とか語っていたらしい。塾に何度も電話したとか、入試間近になって泣きながら覚えられないって電話してきた子供とか、そんな話を聞いたらしいよ。

なんで覚えられないぐらいで泣くのかってお前なら聞きそうだけど、そういう人もいるんだよ。お前は覚えてないなら覚えたらいいじゃないか、とかサラッと覚えてきちまうからなあ。

 そこで僕とお前の名前並んだ張り紙を何枚か見たと言っていた。塾生だけでやる到達度テストと、塾外生も引き受ける公開模試。三位以下を引き離して競ってる二人をの点数に驚いた、と言ってた。

「こんな点数取る子、ホントにいるんだ」

ってぽかーんとしている親御さんもいて、鼻高々だったと言ってた。

 そして、リビングには金で装飾された仰々しい紙が置かれていた。

「認定証」

そう、お前は僕に初めて会ったと思っている、アルティメット特訓、通称アル特の認定証だ。75位以内にはいったら認定され、3回連続で75位以内から外れると受講資格を失うという、なかなかに親心をくすぐる仕組みになっていた。一学年1500人ぐらい生徒がいて、僕らの教室は2クラスということはだ、750位ぐらいで分割されるわけだ。僕たちの教室は優秀な生徒が比較的多くて、ちょっと基準は上振れしていたらしいけどね。

「すごいすごいすごい」

美沙子さんは舞い上がってる。前世の親の時も思ったけど、どうして親ってのは子供の手柄で喜べるんだろね。前の母親も「優秀な息子さんでうらやましいわ」って近所のおばちゃんに言われるたびに満更でない顔してたよ。

「喜んでくれるのは嬉しいけど、これ。お金かかるんだよ」

「え、そうなの?」

美沙子さんの表情が変わった。

「そうなの」

僕は説明したんだ。受験に必要なものを細切れにして、追加料金を払わないと教えない仕組みになってるんだよ、って。情報の散らばせ方がもう、芸術的だよね。

 あとで聞いたんだけど、なんか一緒にいた知り合いママから、特訓に行ってないっていうと、「じゃ、大したことない」ってマウントを取られたんだって。掲示板に貼られている時点で、有資格者なのは決まってるんだけどね。学年が違うから気が付かなかった、ということにしておこう。



息子の時もよその教室の最高レベル特訓に月イチで通ってました。もちろん、豪華な認定証なんかフィクションですよ。

親にも問題配ってくれて頑張って算数を解くのですが、一度も満点取れなかったです。かなた同様、子供たちに敗北するという。息子に負けたときは親の威厳が。くうっ。

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