第79話 ボロボロじゃないか
「しかし……」
吹き抜けた一室。
太陽の光がそのまま差し込み、冬の寒さを照らしてくれる。
壁も障子もない。
横を見ればそのまま庭が見渡せる。
畳の上に座しながら、相良は無くなった天井を見上げた。
「ボロッボロだな」
言うと、上に向けていた顔を、前に戻した。
そこには、頭と足に巻木綿をぐるぐるに巻いた鬼頭が、積み上げられた座布団の上に座っている。
首と手首を固定したエリオットが隣に座る。
その横には、首から右手を巻木綿でつるし、胸も固定している一ノ瀬が座っていた。
黒崎は腕を組み、あぐらをかいている。
風が一同の前を音をたてて吹き抜けた。
「面目ない」
鬼頭が頭を下げた。
「いや、もっと悲惨な奴を、町の診療所に置いてきた」
綾小路のことである。
「だが、あいつのお陰で、皆が助かったことを、きちんと伝えておかねばならん」
相良はため息をついた。
「それで?」
一ノ瀬はすぐさま話題を変える。
「清雅くんを取り戻しにいく件は?」
相良は渋い顔で一ノ瀬を上から下まで見やる。
「お前はその状態で行けるのか?」
「行く」
黒崎が一ノ瀬を睨んだ。
「私は難しいかもしれません」
鬼頭は自分の足に目をやる。
「私は行きます」
エリオットが進言した。
「お前、最近言葉が流暢になったな」
相良が関係ないことで感心した。
「私も連れて行ってください!」
藤堂が廊下(があった所)から突然現れる。
「一度、近衛の裏切りを疑いました。
連れ戻しにくのであれば、私もぜひ加えてください」
藤堂も肩を固定し、腕を吊り下げている。
「まともに戦える奴は残っておらんのか」
「私、あと……」
高岡が庭から手を挙げる。
つられるように、新人三人も手を挙げた。
「近衛さんを、絶対に連れ戻します!!」
岩崎がひときわ大きい声で両手を挙げて宣言した。
「うぅむ」
皆、病み上がりだ。
相良は唸る。
「出立は三日後」
「そんなに待つの?」
一ノ瀬は相良に詰め寄る。
「それくらいは待て。
お前も、その間、薬はきっちり飲むように」
「作戦の途中で倒れられたら迷惑だ」
黒崎が前に進み出た一ノ瀬の肩をつかみ、後ろにひき戻した。
「黒崎さんには言われたくない」
「何が?」
「今朝、薬を捨てていた」
「なんだと!?」
相良が聞き捨てならないといった顔で黒崎を睨みつける。
「違います!」
皆が黒崎の顔を見る。
黒崎は一瞬言葉につまった。
「あれは、手元が狂って……」
「こぼしたのか?」
エリオットが神妙な顔で確認してくる。
「くっ」
黒崎の顔が赤くなった。
そしてそのまま一ノ瀬を睨む。
「お前とは、二度と話をせん!」
そこで会議はお開きとなった。




