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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第五章 あやかし連合による警察所襲撃
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第76話 女の意地

元輝はエリオットを蔦で縛ったまま、榊と数人の第四隊の方へ刀を向けた。




「そこで仲間が死ぬのを見ていると良い」


エリオットの横を通る際、元輝は嬉しそうに笑いかけた。




「外道がっ」


エリオットは蔦に首を絞められながらも、元輝に聞こえるように声を絞り出した。





榊は手が震える。


刀で戦えるほど、自分に実力があるとは思えない。


ましてやこの敵は、確実に腕がたつ。




(銃だけでなく、もっと剣の腕も磨いておくべきだった)


(もっと!もっと!!死ぬ気でやれば良かった!)




榊が元輝に目を向けた瞬間 ――




「うわぁ!!」


叫び声と血飛沫をあげて、横にいた仲間が地面につっぷした。




(今 ――


 斬られた?


 何も見えなかったけど……)




心臓が高なる。




おそるおそる横を見る。




第四隊の仲間が斬られ、絶命していた。




「……」




榊と、残り二人。




元輝から目を離さずに、じりじりと後ろに下がる。




(こんなところで、


 こんな奴に


 やられたくない!)





「まずは私から殺せ!」




エリオット隊長の叫ぶ声が聞こえてきた。




榊は汗にまみれた手で刀を握り直した。






元輝とともにあらわれた鬼は、人間ほどの大きさだ。


しかし、振り下された拳は地面にめりこみ、大きな穴をあけた。




「あんなもの、刀で受けるのも危うい」


高岡は土色の肌の鬼をひきつける。




黄土色の鬼は、神崎と数人の隊士が立ちあっている。




高岡の振り下ろす刀を鬼は腕で受け止める。




「うわぁ!」


背後で、隊士の一人が鬼の拳をもろに受けて吹き飛ばされるのが見えた。




高岡は元輝のいる方を見た。




一人が斬られ、榊たちが追い詰められている。




(くそ、このままじゃ全員やられる)




ブン!!




風を切る音とともに、鬼の拳が高岡の目の前を通り過ぎた。




(清雅!


 お前の兄上、最低だぞ!)




高岡は数歩後ろに下がった。





鬼がふたたび拳を上げる。




その鬼の上に、黒い影が重なった。




(!?)




高岡は後ろを振り返る。




振り返ると同時に強い風が顔を打ちつけた。




背後から九曜が鬼を真っ二つに切り裂いたのだ。




高岡の目の前で鬼は一瞬で塵と化した。




「九曜!」




期待のこもった目で高岡は九曜を見上げたが、九曜の口からは大量の血が吐き出されていた。




「おい……


 どういうことだよ……」




九曜はそのまま立ち上がると、今度は神崎たちが戦っている黄土色の鬼の方へと歩き始める。




足を引きずりながら歩くため、歩を進めるたびに土煙が舞い上がった。




再び、太刀を振り上げる。




鬼は両腕を頭の上で交差させ、防御の姿勢をとった。




「神崎!


 お前たち、離れろ!」




高岡の声とほぼ同時に、九曜は太刀を振り下ろす。




激しい風とともに、鬼は腕を交差させたそのままの状態で真っ二つに斬り裂かれた。




「強すぎる……


 でも……」




九曜は太刀を振り下ろしたまま動かなくなった。




振り下ろされた太刀の隙間から、斬られた鬼の残骸が風に飛ばされ粉々に宙に舞う。




神崎と高岡は動かぬ九曜を覗き込む。




ふいに風が吹いたかと思うと、パラパラと黒い蝶が舞い上がり、まるで蝶に連れて行かれたかのように、九曜もその場からかき消えた。




「近衛……」




高岡は舞い上がる黒い蝶を見上げ、不安げな顔で刀を強く握りしめた。






元輝の太刀筋は全く見えなかった。


今度は自分を守って前に出た第四隊の隊士が斬られ榊の前で膝をおった。




これで三人やられた。




次は自分の番だ。




榊は唇を噛み締める。




第四隊が弱すぎるのか、この、あやかし連合の頭が強すぎるのか……。




「小娘が」




ふいに元輝が言葉を発した。




「侍気取りもはなはだしい」




榊の顔が真っ赤になる。




「死してつぐなえ」




「おまえが!!!」




榊は元輝が驚くような大きな声で言いかえした。




「病を使わなければ勝てぬおまえが!!!」




乾いた喉に唾を送り込む。




「侍のなんたるかなど語るな!!!」




言ってやった。




最後に言ってやった!




女だからと舐めるな!





榊は一か八か、たとえ一太刀であっても、この憎き相手に浴びせてやりたいと思った。


「仲間の仇!」




走り出そうとした榊の前に、突然大きな影が立ちはだかる。




榊は、その背に、勢いよくぶつかった。




「!??」




面食らって、思わず落としそうになった刀を握り直す。


そしてその背を見上げて叫んだ。





「相良隊長!!!」





黒い大きな背中。


振り返った目は、榊を優しげに見返すが、その口元はぎゅっと強く結ばれていた。

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