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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第五章 あやかし連合による警察所襲撃
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第67話 警察所入り口での防衛戦

腐敗臭と唸り声、地面をするような足音が、警察の塀の外側から聞こえてくる。


開け放たれた門を目指して、妖どもが塀に沿って蠢いていた。




月は雲に隠れ、夜風は異様に冷たい。


隊士たちは巫女が祈祷した刀を抜いたまま、ただひたすら、声の主が門をくぐり現れるのを待った。




門をくぐれば、第四隊の鉄砲隊が待ち構えている。






「来たぞ!!!」




叫んだのは、屋根の上で鉄砲をかまえるエリオットだ。




狭い警察の門を妖たちが我先にとむらがっていた。




「やはりな!」


屋根の上のエリオットが、あざけりの入り混じった声で叫ぶ。




「狙え!!」


寝そべった姿勢から肘をつき、銃を構えたまま待ち構えていた隊士たちが一斉に狙いを定める。




「撃て!!!」




パン!


パパン!!




門に群がる化け物たちは、巫女の力を得た銃弾を受け、粉々に砕け散る。




しかし、その砕けた妖の残骸を踏みつけるように、背後から次々と妖たちが門へと押し寄せた。




「狙え!!」


「撃て!!」




これを数回繰り返す。




「一歩たりとも中には入れぬ!」




完璧なまでの統制のもと、第四隊は一発の弾も無駄にすることなく妖を蹴散らした。





その時、妖たちの背後から大きな影が現れる。


三体の巨大な妖のうちの一つが姿を現したのだ。




「撃てぇ!」


エリオットの指示につぐ一斉攻撃。




しかし、巨大な影はその弾全てを、腕の一振りで吹き飛ばした。




緑色の肌、ギョロリとした目、大きな口。


鉄砲の弾など全く気にも止めず、ぬったりと門をくぐり抜ける。


門はミシミシと音を立てた。


巨体が通ると同時に、警察所の門は派手に吹き飛ばされた。




「いかん!


 全員、目を狙え!!」


エリオットは瞬時に判断を切り替える。




「撃てぇ!!!」


自らも銃を構える。




ダン!!!!




「やったか?」


隊士たちの何人かが中腰になり、煙の中で妖を探す。




しかし、巨大な妖は目の当たりを両腕で庇い、すべての弾を弾き飛ばしていた。




「くそっ」


エリオットは素早く隊士の半分に、銃剣の装備を指示する。




まさにその時、




「今だ!


 突撃!!!」




群れの間から、妖を扇動する男の声が聞こえた。




髪を剃り上げた大男と、細い痩せた男の二人組だ。




「人間がおるぞ!」




エリオットは即座に銃を二人に向かって構えた。




無能な妖たちに指示を出されたらやっかいだ。




(あの人間を先に倒す!)




エリオットが引き金に指をかけた瞬間。




「ちょっと、遠方から人を狙うなんて、武士としてどうなの?」


すぐ背後から声がした。




屋根の上に……子供?




エリオットと、第四隊隊士たちは、一斉にその子供から距離をとった。




足場の悪い屋根の上をもろともせず、コツコツと高下駄を打ち鳴らす。


その子供は、紫色の水干すいかんを纏い、太刀を肩に置き不敵な笑みを顔に貼り付けていた。




「お前が遮那(しゃな)か」




エリオットは思わず、構えていた銃をおろし、その目を睨みつけた。







入り口で暴れ回る妖たちの咆哮に、庭で待機している隊士たちの足は、自然と半歩後ろへ下がった。




皆で作った土壁の隙間から、どろどろとした体、首の長い女の顔など、禍々しい生き物たちが見え隠れする。




(入り口が突破されたのか?)


庭で待機していた高岡は唾をごくりと飲み込んだ。






「ここまで侵入した化け物は、我らが刀で残らず討ち果たす!」


鬼頭が隊士達を鼓舞するように大声を張り上げる。




門を抜けた庭の入り口付近には、高岡を含む十人の隊士が刀を構え待ち伏せていた。




ここを突破されても、後ろに残りあと十人が控えている。




しかし、もしそれを突破されれば、警察内部へ侵入を許し、床に伏せる隊士たちは確実にやられるだろう。




(俺、もう少し寝込んでても良かったかもな)


高岡は額に流れる汗を腕で拭った。




またもや銃声が空に響き渡った。




「近衛、せめてお前がいれば……]





ドドォン!!!!





高岡の考えは、大砲でも撃ち込まれたような爆発音と、目の前の土壁が吹き飛ぶもうもうとした煙に打ち壊された。




煙の中から、緑色の肌の大きな拳を持つ男が現れる。




「なんだあれ!


 海坊主か??」




大きな口と、ぎょろりとした異様に大きな目。


高岡たち十人ほどの隊士はおののきながらも身構える。




「取り囲め!


 中に通すな!!」


鬼頭が前に躍り出た。




「怯むな!


 足を狙え!!」




しばらく呆けていた高岡は鬼頭の指示で現実に引き戻された。




「五人に分かれて、左右の足を同時に狙うぞ!」


藤堂の一声で、刀を構え走り出す。




―― まずは一太刀





ギィエ!!!!!





人のものとは思えぬ叫び声がこだまする。





皆が何度も足に刀を食い込ませ、徐々に緑の化け物は足を庇い始めた。


しかし、するどい拳での攻撃が隊士を狙う。




拳の一振りで、近くの木が吹き飛んだ。




(あれにやられたら、骨が折れるだけじゃすまない)




高岡は足を狙う皆の隙間を塗って、化け物の死角から腕へと近づいた。




(俺の剛鳳(ごうほう)なら、もしかしたら)




昔、藤堂に教えてもらったように、全ての意識を剣先、指先に向ける。


息を吐き、刀を握り直す。




足元に気を取られた化け物が、下の隊士たちに向かって拳を振り上げた。




その威力を真っ向から受け止めはしない。


刀の刃をなめらかに繰り出し、垂直に斬りあげる。





―― ズババババ!!





拳を振り下ろした化け物の力を利用し、高岡はその腕を見事に切り落とした。





―― ギャアアアア!!





暴れる妖の足を、ここぞとばかりに隊士達が取り囲み斬り刻む。




妖はたまらず背中から仰向けに倒れ込んだ。




その上に、鬼頭が飛び乗り首を掻っ切る。





見事、人の倍以上もある化け物を、庭の入り口で討ち取ることができた。





「このままの勢いで守り切るぞ!!!」





鬼頭の声を耳に受け




オオォオオオオ!!




隊士たちは雄叫びを上げる。




(壮絶するぎるんだけど……)




高岡はげっそりと空を見上げた。



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