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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第四章 裏切るということ
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第63話 今度こそは守りたい

相良が綾小路の止血をしている間に、先ほど斬りつけたはずの高階の姿が、忽然と消えていた。




相良はそれに気づくも後を追おうとはしない。




「いいんですか?


 あいつ、テロリストの親玉やけど」




綾小路の困惑した顔に、相良はふっと意味ありげな顔で応じた。




「最後はあいつにカタをつけてもらう。


 おまえは何も気にせず休め」




(あいつ?


 相良さんは、誰かと一緒にここへきたんか……)




相良の処置は手際がいい。


きっとこの男は今までにも死線をいくつも超えてきたのだろう。


綾小路は仰向けになったまま、ふと空を見上げた。




(肩を並べて信頼し、共に戦える相手が私にもあれば……)




「すまなかったな」


処置が終わったのか相良は、空を見上げる綾小路の目を覗き込んだ。




「何に謝ってます?」




「江戸のごたごたに巻き込んだ上、薬まで調達してもらった」




本気ですまなそうな顔をしている相良に、綾小路は思わず吹き出した。




「何かと思ったら。


 あぁ。そうですねぇ。


 私、やりすぎるのが、良くない癖なんで」




「お前のおかげで皆が助かる。


 ワシはお前のことを誤解していた」




相良の目はまっすぐ綾小路を見据える。


太陽の光と意思の強い黒い目が、やたらと眩しく見えた。




「やめてもらえます。


 そういうの、私、苦手や」




言うと綾小路は頭をかいて、自分の袖で顔を隠した。




「まあ、感謝してるって言うなら……」


袖で顔を隠したまま、綾小路は続ける。




「紫苑くんを、京都警察にください。


 あそこ、人手不足なんで」




「やれるか!」




二人は同時に苦笑した。






薬の隠してあるご神木まで相良は綾小路を背負って進んだ。


相良の懐には、京都警察から送られた、綾小路宛の手紙が差し込んである。




「気づいてもらって良かったわ」




一見、普通の手紙である。


一ノ瀬が相良に差し出した時も、一ノ瀬自身も気づいてはいなかった。




手紙を見た刺客も気づきはしなかっただろう。




そう。




この手紙には細工がしてあった。




京都警察から来た手紙に、綾小路が薬を隠す予定の場所を上から塗り込んだのだ。




「紫苑くんが私の部屋に来た時に、私が読んでいた手紙を見ていたから、絶対後から探しにくると思ってました」




綾小路は相良の背でゆられながら、面白そうに語る。




「ただ、その手紙を置いて行ったとして、ネズミもその手紙を嗅ぎ分けるのはわかっていたこと」




「高階だな。


 あいつは結局、手紙の仕掛けに気づいたのだろうか」




「いえいえ。


 高階が手紙の仕掛けに気づいたわけではありません。


 たまたま、鉢合わせただけです」




あの手紙は、明るいところで見なければ仕掛けに気づかない。


暗いところで、こそこそ人の手紙を探し見る刺客には、到底気づくことができないだろう。




相良は行燈に手紙を照らした時に、かすかにシミが見えたことで、あぶりだしになっていることに気づいたのだ。




「もし、私が途中で死んでも、薬だけでも相良さんの元に届けば、皆は助かるでしょ?」




「お前がそこまでして自分の命を危険にさらす必要があったのかはわからん」




ご神木が見えてきた。


荒らされた形跡はなく、薬はどうやら無事のようだ。




「まあ、ひとつは意地かな。


 やられっぱなしは気に食わんから、全員助けたったらスッとする」




少し疲れたかもしれない。


話しながら綾小路は思った。




「もう一つは……」


目が勝手に塞がってくる。




「相良さんに……影響されたかな……」


言葉も途切れ途切れになってきた。




「私は……誰も守れんかったので……」


言うと、ふっと全身から力が抜けた。





相良は薬の無事を確認すると、その場では掘り起こさず、綾小路を背負ったまま、近くの町へと降りて行った。

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