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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第四章 裏切るということ
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第61話 頭と呼ばれる者たち

清雅は元輝と食事をとっていた。




「この焼き魚、美味しいなぁ!」


元輝(もとてる)が笑顔で話しかけてくる。




「骨、とってあげよう」




「え?いいです」




「……」




部屋が静かになった。




「実はな」




元輝は声をひそめて周りを見渡した。


姿勢も低くし、目を細める。




「清雅が喜ぶものを用意した」


言っている本人が一番嬉しそうだ。





「薬ですか?」





そこで、嫌味を言えるのが清雅だ。





「……


 違うのだが……」




元輝は出鼻をくじかれたように口籠る。






「アイスクリームがあるのだ」




気を取り直して明るい声で言う。




「え?」




清雅は目を見開いた。




(今、俺、みんなを裏切りそうになった!)




己の腹を拳で殴りつける。





「なに?


 どうした清雅??」




元輝は、おかしな行動をし始めた弟を見て動揺した。




「それは喜んでいるのか?」




「私はそれくらいで、兄上になびいたりはしません」




断固拒否した。





―― ドタドタドタ





廊下から騒がしい足音が近づいてくる、と同時に、髪を剃り上げた大男と細い痩せた男が部屋へと入ってきた。




「お頭!!


 大変です。


 あいつが押しかけてきやした!」




清雅は二人の顔を見るなり、驚き、思わず横に置かれた刀に手を伸ばす。




「大丈夫だよ。


 この者たちは、私の配下の者。


 清雅には手出しはせぬ」




元輝がいつもにまして穏やかな口調と視線を清雅に投げかける。




が、それも一瞬のこと。




元輝の目は、瞬時に鋭く冷たい視線へと切り替わり、部屋の入り口を見た。


同時に、あぐらをかいた足の上に肘を置き、その手の甲の上に顎を置いて冷笑を浮かべた。





「あやかし連合の頭はおるかー!!!!」




ほどなくして現れた男は、顎に髭をたくわえ、戦国武将の出で立ちをした、殺意丸出しの武人であった。




「話が違うではないか!」




男はドスドスと部屋の中まで押し入ってくる。




思わず清雅は立ち上がり、部屋の端へと退いた。




戦国武将の男は、あぐらをかいて手に顎を置く元輝の目の前に立ちはだかる。




「江戸の人々には手を出さぬ。


 そういう約束であっただろう!」




叫ぶ口から唾が飛び散る。


清雅の焼き魚の上に豪快にふりかかった。




「なんのことかな?」


「貴様!」


戦国武将は片足を一歩後ろに引く。




「約束を違えるのであれば、貴様の弟もこの場で斬り殺す」




その一言に、元輝の目が血走った。


額に血管が浮く。




「今、なんと申した」




言うと、悠然と立ち上がり、戦国武将をしのぐ背丈から、相手を睨め付けた。


その迫力に一瞬武将は慄くが、「舐められては困る」と言い放つと、刀を鞘から抜き放った。




元輝は左手を横に伸ばす。




その手に、藤乃がすっと、元輝の日本刀を差し出した。




「この場は汚したくなかったが」




清雅は素早く入り口へと下がる。




配下の者たちも、一言も発することなく、端の方へと下がり始めた。





「いたしかたあるまい」





「ほざけ!」





武将が刀を振り上げた瞬間、元輝の日本刀がうなりをあげ、武将の額から胴までを一瞬で斬り裂いた。




斬り裂かれた男は声もあげずに、刀を振り上げたそのままで、汁や飯を派手に散らばしながら、膳の上へとつっぷした。





清雅はただ呆然とその様子を見ていた。





  兄は……




  兄は己とは違い、何の躊躇もなく人を斬る……




  今、その刃は、自分の大事な仲間たちに向けられているのだ……





「お頭!


 良かったのですか?


 その人、ムカデ衆率いる戦国復古派の頭領では?」




元輝の配下の大男が、声を震わせながら元輝の方を見た。





「ん?


 頭領?」




元輝は、「ふうむ」と言って顎に手をやる。




「確かにこの男とは取り決めをしたが、これは頭領の器ではない」




そこで天井を見やる。




「戦国復古派の頭領なら、もっとこう……」




清雅を含め全員が元輝の思案する顔を見やった。




「いかにも、悪役といった出立の、背が高く、鋭い刀のような男であろう」




清雅の眉間に皺がよった。




「まぁ、会うたことはないがな」




元輝はおかしそうに笑って見せた。

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