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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第三章 信じるということ
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第49話 レイとの再会

警察内を全て探したが清雅は高岡をみつけることができなかった、


黒崎の部屋の前を通ったとき、ゲホゲホと咳き込む声が聞こえてきた。


思わず、そろりと障子を開ける。




奥の暗い部屋で黒崎が目を閉じ、あぐらをかいて座っていた。


何かに集中しているようで、清雅が部屋の入り口にいることにも気づいていない。




しばらくすると、また肩を振るわせ、前のめりに咳き込み始めた。




「黒崎隊長、大丈夫ですか?」


清雅は思わず駆け寄る。




そんな清雅を黒崎は片手で制した。




「問題が起こっている」




「風邪が流行っていることですか?」




静まり返った部屋に、別の部屋で誰かが咳き込む声が聞こえてきた。




「風邪ではない。


 妖がまいた、病の種だ」




そこでまたもや咳き込んだ黒崎の背中を、清雅は後ろからさすってやった。




「もしかして、先日のあやかし連合との戦いの折…」




「不覚にも、私にもその種がまかれたようだ。


 いずれにしても、疫病がひろがっている。


 相良隊長が心配だ」




「多分、大丈夫です。


 元気そうでした」




清雅はさらりと答えた。





そこで、はっとしたように黒崎の顔を見る。




「高岡さんが、見当たらないんです」




「あいつは診療所に行った。


 かなり具合が悪そうだったからな」




「高岡さんが……」


居ても立ってもいられなくなった清雅は、失礼しますと黒崎に頭を下げ、部屋を出ていった。




(具合が悪いって、どれくらい?


 まさか、死ぬ病ではないよな)




清雅の頭の中に、黒い妄想が膨らむ。


途中、廊下で一ノ瀬とすれ違った。




「清雅くん!」


一ノ瀬が、すごい力で、走り抜けようとする清雅の腕をつかんだ。




「所内で疫病が蔓延している。


 具合の悪いものを隔離しているから、近づいてはいけないよ」


それだけ言うと手を放した。




「はい」


清雅は深くうなずき、また診療所に向かって走り始めた。






診療所に向かう途中、久しぶりにレイと出会った。


レイは診療所に薬を取りに行くところだった。




「警察所はどう?


 皆、元気にしている?」


レイは、華やかな刺繍が施された着物に、打掛を羽織っており、いつもに増して艶やかに見えた。


しかし、清雅に尋ねる目は真剣で、黒い瞳が今の江戸の状況を物語っている。




「警察では風邪のような病が流行っていて、幾人かは寝込んでいます」


「江戸の町でも同じよ」




二人は診療所への行きすがら、お互いの情報を交換した。




「ところで、紫苑は大丈夫なの?」


相変わらず一ノ瀬を心配するレイだが……。


(確か、レイさんって、昔、相良隊長と恋仲だったんだよな)


なぜ相良を心配しないのか清雅は不思議に思った。




「レイさんは、どなたの薬を取りに行かれるのですか?」


清雅はレイが病気なのかと心配になった。


「旦那のお薬よ。


もう長いこと、胸の病を患っているの」


これは、余計なことを聞いてしまったかと、一瞬後悔した。


「六十を過ぎたあたりから、体を壊してしまって。


働きすぎが今頃になってね……」 


清雅は思わずレイの顔を見る。


「レイさんとご主人は、ずいぶん歳が離れているんですね!?」


思わず、言葉に出してしまった。




レイは少し笑って、「ではここで」と、診療所の前で上品に頭を下げた。




「あ、清雅くん。


くれぐれも、紫苑のこと頼むわね」


念押しするように告げた顔は、まるで姉のようだ。




「あと……」


急に口ごもると、視線をそらした。




「稔のこと……」


小さ過ぎて聞こえにくい。


清雅は思わず、耳に手をやる。




「アイツがバカなことしないように、見張っててね」


言い捨てると、そのまま診療所の扉をくぐって行ってしまった。




(なぜ、相良さんにだけ、アタリがキツいんだろう)


『主は、にぶいのぉ』


清雅の疑問に、九曜がさも理由でも知ってるかのように答えるのだった。

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