第33話 油断大敵
警察隊は江戸城までルブランたちを送る隊と、そのまま警察所へ戻る隊に別れて行動することとなった。
相良と黒崎、綾小路、清雅は、怪我をした隊士たちを連れて帰途につく準備をしていた。
「歩けるものは、怪我をした者に肩を貸せ」
江戸城に戻る隊は、また襲われる可能性もある。
まだ戦える隊士たちがそちらに加わった。
「紫苑、お前は大丈夫なのか?」
相良の問いに「これくらいなら、まだ戦えますよ」と一ノ瀬は答えたが、本音は清雅と少し距離をとるためだった。
ゆっくり頭を巡らせたいと思っていたのだ。
相良はぐるりと全員を見渡す。
幸い死人は出なかった。
しかし、自分のたてた計画が見事に見抜かれ、この状況を招いた。
いや、どう考えても、情報が筒抜けだったことは確かだろう。
「戻って、誰が情報を漏らしたか追求すべきですね」
黒崎が相良の横顔を見る。
「ああ、まあ西洋人に怪我がなかっただけでも助かった」
二人が顔を見合わせて話しているところに、ルブランが仲間から離れ歩いてきた。
「相良、黒崎、助けてくれてありがとう」
黒崎はため息をついたが、相良は黒崎に肩を借りたまま、ルブランに手を差し出した。
「危険な目に合わせてすまなかったな」
ルブランは茶色の瞳を見開き、相良のさしだした手と顔を交互に見る。
「そんなこと。
それより相良、その台詞を言いながら握手を求めるのは、少し違う気もしますよ」
そう言って、人懐っこい笑顔で笑うと、両手で相良の差し出した手を握りしめた。
「そうか?
どうもわからん」
相良は少し顔を赤らめ、照れ隠しのように視線を外した。
(本当にありがとう)
そんな相良にルブランは再度、心の中でお礼を言った。
各々が腰をあげようとしたその時、町人の格好をした男が角からすごい勢いで走り込んできた。
皆が油断した頃合いを見計らっていたのかも知れない。
誰もがその男に気づかなかった。
背に日本刀を隠し持っている。
走る足音を消しているため、誰も振り返らない。
「おい!!!」
気づいた相良が大声を上げたが時すでに遅し。
町人の男は背から刀を抜き放ち、西洋人の一人に飛びかかった。
ズバッ!!
血が飛び散る。
誰もが声も出せなかった。
「斬られた!!」
近くにいた隊士が叫んだ。
地面につっぶす西洋人。
そしてとどめを刺そうと振り上げた男を
―― パァアンン!
エリオットが銃で撃ち抜いた。
「エリオット隊長……」
榊は離れた距離から確実に敵を撃ち抜いたエリオットを呆然と見ていた。
「怪我は!!?」
鬼頭が西洋人に走り寄ったが、幸い肩を斬られただけで命に別条はない。
そのまま急いで止血する鬼頭を見ながら、黒崎は深いため息をついた。
「これは――」
相良も横でうなる。
「大変なことになりましたな」
ルブランは慌てて仲間の元へと走り寄った。
戻りしだい、江戸城から呼び出しをくらうのは必至である。




