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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第二章 西洋人の江戸見学
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第24話 嫉妬

清雅たちは、屋根の上で待機していた弓部隊を一掃し、全て縄で縛り上げた。


岩崎と、いつの間にか合流した榊と神崎は、積極的にその手伝いを行った。




ただ、岩崎の表情は沈み込み、同期二人はおろか、清雅たちとも一切目線を合わせようとしなかった。




「岩崎」


神崎が横に座り込む。




「お前、情報もらしたんだろ」


その場にいた全員が岩崎の表情を確かめるように視線をやった。


「重田さんに……」


そう言うと、嗚咽混じりに頭を抱え込む。


「どうかしていました。


 焦っていたんです。


 同期が全員、相良隊長に指名されて、俺だけ……」




「でも、なぜ重田さんに?」


清雅は岩崎と重田が親しくしているようには見えなかった。




「重田さんは、人一倍努力していたから。


 俺の努力も、あの人はわかってくれた」


清雅の胸に、岩崎の痛みが流れ込んできた。




清雅は座り込む岩崎の肩を優しくつかむ。


「岩崎くんの焦りに、重田さんは入り込んできたんだね」




「正直、近衛さんにも嫉妬していました」


地面についた手をきつく握りしめた。


「隊長たちと、いつも一緒で、なんで入隊時期もそんなに変わらないのにと……」




清雅は思わず息を呑んだ。


(あぁ。だからあの時、道場で手合わせを願い出てきたのか。


 俺は、岩崎くんの心内を気づくことができなかった)





「ああ!でも、それ、わかるわかる。


 俺も嫉妬したもんなぁ」


高岡が急に空を見上げた。




「え?そうなんですか?


 どうりで、最初すごく嫌われてると思っていました」


清雅が納得したように腕を組む。




「顔」


高岡が清雅の目の当たりを指差す。




「は?」




「苦労してませんって顔してるところ」




「それ、今の流れだと、ちょっと話が違いますよね」




清雅は高岡の指を振り払った。




「じゃあ、重田さんはムカデ衆ですか?」


榊の問いに、「判断はまだ下さない方がいいかもな」高岡は注意深く言った。






西洋人たちを壁側に避難させながら、清雅たちは、警察隊と刺客が斬り合っている方を確認した。




「なんか、向こうが騒がしくなってますよね」


言って、清雅は九曜を握りなおす。


「敵がさらに現れたのかもしれない」




「ここは、私たちにお任せください」


神崎は岩崎と榊に目配せした。


「相良隊長が怪我をされているので、どうか隊長をお守りください」


言って頭を下げる。




「え?


 相良隊長が?」


清雅は胸のあたりのモヤモヤする感じを手で押さえつけた。




(この、嫌な感じは、そのせいか)




「近衛、俺たちも戦いに加わるぞ」


そう言うと、高岡と清雅は隊の方へ戻って行った。






他の西洋人たちは岩崎たちと共にいたが、ルブランだけは相良の近くを離れなかった。


邪魔になるかもしれないと思いながらも、この男の、自分を守り切ると言う意思に惹かれたからかもしれない。




(侍は義を重んじる。まさに相良はそれか)


この男の戦いを目に焼き付けたいと思った。




ほぼ全ての刺客を薙ぎ倒し、周りは静かになりつつあった。


ルブランの仲間たちは新人隊士たちと逃れたようだ。




相良は黒崎に抱えられながらルブランのところまで戻ってきた。




「いったん、城へ戻ろう。


 江戸見学は中止だ」


言葉ははっきりしているが、体は限界のようだ。




「はい。


 まさか、こんなど真ん中で殺されそうになるなんて」




「それが今の江戸だ」


黒崎が当たり前だと言わんばかりにルブランを睨んだ。




(この人には良く思われていないのでしょうね。きっと)


ルブランは黒崎から目を逸らした。





ふと、後方が騒がしくなる。


黒崎は目をこらし、思わず舌打ちをした。




「次は、あやかし連合のお出ましだ」




言うと同時に、後方に黒い影が立ち上がった。

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