第22話 待ち伏せ
清雅は岩崎が西洋人を路地の方へ誘導しているのを見ていた。
「岩崎くん、ちょっと待った方がいい」
岩崎は眉をよせて清雅を見ると「なんですか?」と答えた。
清雅の勘は路地が危険だと告げていた。
「打ち合わせでも、刺客に襲われたら路地へ避難すべきだと言っていましたよね……」
「それはそうだけど、念の為、相良隊長に指示をもらった方がいい」
清雅の言葉に岩崎の顔が曇る。
「今、相良隊長はそれどころじゃありません」
「え?」
「おい、第一隊の奴ら、まったくこっちに来ないぞ」
高岡が息を切らせて走ってくる。
「何かおかしいですね……」
綾小路の笛を聞きつけても助けに来ないというのは、何かあったと考えるべきか。
「重田さんも、もしもの時はこの路地に避難させるべきだと言っていました!
西洋人だけでも安全なところへ連れて行くべきです」
「え……」
岩崎の言葉に高岡は思わず後ろに一歩下がった。
「お前、この作戦、重田さんにもらしたのか?」
「……」
清雅も岩崎を見た。
「助言を……」
いきなり高岡は岩崎の襟首を掴み上げる。
岩崎より背の低い高岡だが、その力は相当なものだった。
「誰の作戦に対して、誰に助言をもらおうってんだよ?
相良隊長が、寝ずに練った作戦だぞ!!」
怒りがおさまらない高岡は、そのまま岩崎を地面に投げつけた。
思っても見ない力で地面に叩きつけられた岩崎は、驚きのあまり清雅と高岡の顔を見上げる。
「だって……。
相良隊長だって、間違うことがあるかもしれないじゃないですか……」
「そんな程度かよ。
お前の隊長に対する信頼は!!」
ふと、屋根の上に気配を感じた。
清雅は素早く周りを見渡す。
「高岡さん、屋根に数人います。
待ち伏せされているのかも」
小声で耳打ちすると、壁際にかたまっている西洋人たちに目を走らせる。
ここで乱闘になっても困る。
屋根の人物が、バラバラと立ち上がったのが見えた。
前後左右、囲まれている。
全員、手に弓をもっていた。
「まずい!」
弓を引く音がする。
一斉に弓を放たれては、ひとたまりもない。
「九曜!
参れ!!」
咄嗟に清雅は九曜をよんだ。
「おうよ!!」
言うと、刀から赤い光と共に戦国武者が薙刀を持って立ち上がる。
岩崎はその様を、口を開けたまま、驚きの目で見ていた。
「な……なんだこれ……」
九曜はものすごい速さで屋根まで駆け上がると、弓を構える男どもを一振りで吹き飛ばした。
見ていた西洋人の何人かが腰を抜かす。
「monster」
屋根から屋根へ身軽に飛び移った鎧武者は、まるで忍者のように身軽に屋根をわたり、次々と弓を構える男たちを薙ぎ払った。
「お前!
九曜がめっちゃ強くなってるじゃないか!」
高岡が嬉しそうに清雅の肩を叩いた。
九曜が暴れ回るその中で、岩崎は目の前の信じがたい出来事と、重田への自分の発言の後悔とで、頭の中が真っ白になっていた。




