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明治維新がこなかった....(下)  作者: yuyuko50
第二章 西洋人の江戸見学
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第21話 計画どおりに

岩崎は、いきなり現れた刺客がルブランを襲い、躍り出た相良が代わりに斬られたところまでを、微動だにせずに見ていた。




「そんなっ」




理想と現実は違う。


あの時、とっさに身を挺して庇うことが、はたして自分にはできたのだろうか。




そうこうしているうちに、隣にいた神崎が突如走り出し、刀を振り下ろそうとした刺客の一撃を必死に受け止めていた。




(自分は何をやっているのだろう)




呆然と見ていただけだった。




重田の言葉を思い出した。




(これは良い機会かもしれない)




その言葉も、今この死闘が繰り広げられている場では、世迷言のように感じてしまうのだった。




「俺も何かしなければ」


ぐるりと周りを見渡す。


重田の言葉が脳裏に浮かんだ。




「いざとなったら、路地へ西洋人を連れて行け。


 あそこなら、周りが建物に囲まれ守りやすい」




確か相良も、奇襲を受けた場合、敵をしとめるために路地へおびき寄せるという計画を立てていた。




「俺がやらなければ」


(せめて、最初に立てた計画を実行するくらいなら、それなら俺にもできるはず)




真ん中で怯え、ひとかたまりになっている西洋人のところへ岩崎は走り寄った。







黒崎は刺客の一人を斬り捨て周りを見た。


相良から「奇襲を受ければ路地へ入り込む」と前もって指示を受けていた。




今も、一ノ瀬から路地に向かうと通達を受けたばかりだ。




しかし襲ってくる刺客を見ると明らかに数が少ない。




(何か裏があるな)




このまま路地に、西洋人たちを連れて行くのは危険だろう。


もし、我々の計画をすでに敵に知られていたら?


路地に連れ込むよう、誘導されている可能性がある。




幸い、刺客に襲われても、相良から直接の指示はまだ飛んでこない。


(このままいったん様子を見るのが無難だな)




黒崎が頭をめぐらしている時、背後から誰かが黒崎の肩をひいた。




「相良を助けて」




振り返ると、ルブランの茶色の瞳が黒崎を必死に見つめていた。




(こういう顔もするのだな)




場違いだが、黒崎はこのルブランという男の必死の顔を見て、初めて人間だったのかと思った。




「相良が、私を庇って怪我を負った」


ルブランのその言葉に黒崎は、はっと我にかえった。




「なんだと!」




急いで相良の方へ向かう。




後ろ姿の相良は、敵の一人と斬り合っていた。




確かに、足元がおかしい。




あきらかに、ふらついている。




(どの程度、深く斬られたか?)




相良の性格から、たとえ斬られたとしても、前線をひくことはないだろう。




(一ノ瀬は何をしている?)




なぜだか知らないが、一ノ瀬がそばにいないことに怒りが沸いた。





相良の首めがけて振り下ろされた刺客の刀を、黒崎は弾き返した。




「まさかとは思いますが、西洋人だけでなく、相良隊長の命も狙われています」




刀をはじいた黒崎を、相良は振り返り見た。


相良の周りに集まる刺客の数が、他と比べて異様に多い。




「まさかではない。


 確実にワシの首も狙ってきている」




どうやら相良も気づいていたようだ。




黒崎は、相良の怪我の具合を素早く確認した。


胸から脇あたりに幅広く血が広がっている。


(庇ったということは、受け身を取れていないか)




「内臓は無事だ。まだ戦える」


黒崎の視線に気づいたのか、言い訳のように相良が言う。




早々に戦うことをやめさせたいという衝動にかられたが、本人がそう言うのなら仕方ないだろう。


言って聞く男ではない。


「そうですね。では、ご納得のいくまで」




無表情で返す黒崎の言葉に、背後でルブランが息をのむのがわかった。

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