第15話 重大任務
「岩崎!西洋人の話、聞いた??」
昼飯を食べながら、同期の榊が目をキラキラさせて話しかけてくる。
「あ?あぁ。見てねぇけど。建物くらい背が高いらしいな?」
適当な相槌に榊が頬を膨らませる。
「そんな化け物ではないな。確かに背は高いが、相良隊長より少し大きいくらいだ」
もう一人の同期、神崎は冷静に言葉を付け加えた。
「私、西洋文化にふれてはならないという決まりがあるから、全く知識がないんだよね。
でも、第四隊でボトルアクション銃に触れてから、一気に最新の情報に興味がわいたわ。
そしたらあの飛行船!!
それに、あの人たちの考え方といったら……」
興奮気味で喋る榊に神崎は小声で注意を促した。
「言葉を選ぶべきだろう。西洋人たちのあの言葉と態度は本心とは限らない」
(俺は見てもいないから、わからないけどな)
岩崎は煮魚の目をつつく。
同期の中で、自分だけあの場にいなかったことは、今でもうらめしく思っている。
(今の日本は、刀と武士の魂で守られている。新しいものばかりに目を向けるのは、今、努力を怠っているという何よりの証拠だ)
岩崎は、榊に冷ややかな視線を送った。
食事を囲む三人の卓に、突如長い黒い影がさした。
見上げると、第四隊隊長のエリオットがこちらを見下ろしている。
「新人たち、全員、食事がオワッタら、第四隊にきてください。
急な任務が立ち上がりました」
(まじか。
腕の見せどころじゃねーか)
岩崎は興奮した。
ようやく、それらしい任務につけるのだ。
第四隊の部屋には、第四隊の数人に加え、第一隊の高岡と藤堂副隊長、鬼頭と黒崎、清雅が座していた。
そこへ京都警察の綾小路と、相良、一ノ瀬が入ってくる。
(なんか、物々しい面子だな)
岩崎は居住まいを正した。
「信頼できる者しか声をかけていません」
藤堂の言葉に、新人三人は顔を見合わせる。
自分たちの腕も、信頼できると言うことだろうか?
「今から伝える情報は、絶対にここにいる者以外に漏らしてはいけない」
エリオットが三人に小声で話しかける。
その言葉に神崎がはっとした顔をした。
「内部に、テロリストがいるかもしれないからですね」
小声で返す神崎を、岩崎は眉をひそめて見つめた。
「西洋人の奴らが、江戸を見学するらしい」
相良の耳を疑うような言葉に、一同息をするのを忘れたかのように静まり返る。
「……」
「なですかそれ?」
清雅がすっとんきょうな声をあげた。
「今、江戸がどういう状況か、上はわかっているのですか?」
すかさず藤堂が膝たちになる。
「こないだ、京都警察の所長が殺されたんですよ?」
「視察というものらしい。
どれほどワシらが遅れているか、見たいそうだ」
相良の言葉に一ノ瀬が急に笑い出した。
「見なくてもわかりますよね。
着物着て、馬に乗ってるんだから」
そんな一ノ瀬の側頭部を相良がはたいた。
「で、ワシらがその見物の護衛につくそうだ」
言い方が、まるで他人事だ。
「そりゃ、えらいことですね。
もしテロリストが仕掛けてきたら、どうやってその人たちを守るんですか?」
綾小路のふざけた言い方に「身を挺して守れとのお達しだ」と、面白くなさそうに相良が言う。
「この人数で、テロリストと戦うということですか?」
神崎が不安げに手を上げ相良に問うた。
「まあ、人数は少ない方が良い。
立ち寄る場所など、情報を渡す人間は少ない方が良いからな」
相良はテロリストに襲われる可能性よりも、情報が漏れる可能性の方を恐れているようだ。
「狙われたら、絶対に守れるという可能性が減る。
狙われないように策を弄する。
まあ、自分の身くらい、自分で守ってほしいものだ」
相良は黒崎と清雅を見つめた。
「お前たちの力、あてにしている」
深くうなずく清雅を、面白くなさげに岩崎が見ていた。




