第21話 冷たいキスと春の熱
半壊した白陽学宮は修復され、四月から新学期が始まる。さんさんと太陽が照りつける春の陽気の中、真新しい教室で一人の少女が机に突っ伏して溶けていた。
「……あつい……」
「……ぴぃ」
しまちゃんも羽を広げ、机にべちゃりと溶けている。ふっと影が差す。次の瞬間、頬に冷たい感触が走った。視線を上げるとフェルナンドがアイスキャンディーを二つ持って立っている。
「大丈夫かよ。ほい、アイス」
「何味?」
「ソーダ」
「……食べる」
ルミはむくりと体を起こしてアイスを受け取る。彼は彼女の首元に視線を向けてつぶやいた。
「そのシャツでもだめだったか?」
「ううん、かなり快適だよ。溶けるのは標準仕様」
「……標準仕様かよ」
フェルナンドは軽く笑い、アイスをかじる。ルミはその唇をじっと見つめていた。
「……フェル」
「どした?」
「こっち向いて」
「ん?」
彼が顔を向けると、ルミはその唇に向かって口づけた。ざわめきが広がる。フェルナンドの頬はみるみるうちに赤くなった。
「……おい」
「なあに?」
「おい」
「フェル?」
「……おい」
「……壊れた?」
「……はぁー」
彼はため息をつきながらしゃがみ込んだ。
「なんで今」
「今は口が冷たいから、ちょうどいいかなって」
「ふざけんなよ……」
「やだった?」
「……最高」
「もう一回する?」
「……ここ教室」
「……あ」
ルミは慌てて周りを見る。クラスメイトが視線を逸らしていた。
「……マーキング、ってことで……」
「……はぁー。お前それ好きだな」
「フェルはかっこいいもん。うかうかしてたら取られちゃう」
「……あのなぁ」
フェルナンドは頭を抱える。その目は据わっていた。
「……結婚したら、マジで覚えとけよ」
彼女は一瞬首を傾げた。だが、遅れて顔が熱くなってきた。
「……フェルのばか」
「……悪い。頭沸いてたわ。暑さにやられたか」
「フェル、これくらいなんともないでしょ」
「……帝国人でもやられるときはやられんの」
フェルナンドは立ち上がり、胸元をパタパタと揺らす。
「……あっちい」
汗が光る。ルミはシャツの下、黒い肌から目を離せなかった。
これにて完結です。最後まで読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。
次作(2026/07/22投稿)→https://ncode.syosetu.com/n4373mm/




