第12話 氷の国へ帰る日
ルミの帰国日、帝都の空はよく晴れていた。
病院前には、イルヴェリア王国の紋章が入った大型の魔導馬車が停車している。車体には冷却魔法が組み込まれており、周囲の空気が白く霞んでいた。護衛騎士、医療魔術師、使用人たちが慌ただしく動いている。フェルナンドは最終調整をしている技師に話しかけた。
「……魔石、足りそうか?」
「帝国が少し融通してくださったおかげです」
「しっかり冷やしてやってくれ」
フェルナンドの言葉に、技師は真剣な表情で頷いた。やがて準備が整った頃だった。
タオルでぐるぐる巻きにされたルミが、医療魔術師に付き添われながらゆっくり歩いてくる。タオルは濡れていて霜が付いている。保冷剤が入っているのだろう。顔色はまだ白い。だが、意識を失っていた頃よりはずっとしっかりしていた。
「……フェル」
彼女はフェルナンドを見つけると、小さく笑った。
「歩けんのか?」
「……ちょっとふらふらする」
「なら無理すんな」
フェルナンドは自然な動作で彼女の肩を支える。周囲の使用人たちが一瞬だけ視線を逸らした。
「……ありがと」
「気にすんな」
彼はそのまま馬車まで付き添う。馬車に乗り込んだところで、ルミは冗談を言うように笑った。
「……フェルも来る?」
「行きたいのはやまやまなんだけどな。やることがあるから」
「残念」
「春休みには行くから。……しまちゃん、ルミを頼むな。無理をしないよう、見張っとけよ」
「ぴ」
しまちゃんは胸を張る。頭をくりくりと撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細めた。
「お土産、何がいい?」
「アイス」
「相変わらずだな。分かった。またな」
「うん、また」
フェルナンドはひらひらと手を振る。馬車の扉が閉まった。大使が話しかけてくる。
「フェルナンド殿下、多数の便宜を図ってくださり、ありがとうございます」
「むしろ、こちらの不手際で危険な目に合わせて申し訳ない。真相解明は、必ず」
「頼みます」
彼は深々と頭を下げる。フェルナンドも帝国式の礼をした。
大使が馬車に乗り込む。馬車列は、ゆっくりと帝城を後にした。
フェルナンドはその姿が見えなくなるまで、馬車の後ろ姿を見つめていた。
読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。




