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第1話 暑さで溶ける氷姫

新連載(再掲)です。完結まで毎日投稿します

挿絵(By みてみん)

「……私がやらなきゃ、みんなが死ぬ」


 ルミの目は覚悟に染まっていた。フェルナンドは息を飲み、小さく「……分かった」と答える。


「……じゃあ」

「俺にも噛ませろ」


 彼の目には小さな炎が宿っていた。





 常夏の帝国、ヴァイデソル帝国。名門、白陽学宮。世界中の王侯貴族の子弟が集まる学園の、中庭のベンチにて。一人の少女が溶けていた。


「……あつい……」


 白銀の髪をベンチに広げた少女――イルヴェリア王国の次期女王、ルミ・ハーヴィは、ぐったりと空を仰いだ。彼女のそばには使い魔であるシマエナガがいたが、彼もぺたりと胴体を広げて溶けている。その時、首筋にぴたりと冷たいものが当てられた。顔を上げると、ヴァイデソル帝国第七皇子、フェルナンド・メディナ・ガリゲスが立っていた。


「……ん? あ、フェル」

「相変わらず溶けてるな」

「だって、暑い……」


 フェルナンドはくつくつ笑う。彼は二人で食べられるアイスを差し出した。


「あ、アイス!」

「食うだろ?」

「食べる食べる!」


 ルミは体をくい、と起こす。フェルナンドは先端を切った細長いアイスを片方ちぎり、ルミへ渡した。

 彼はアイスをハンカチで包んで溶かしながら食べる。ルミも少し柔らかくなるのを待っているが、こちらは素手のままだ。


「冷たくね?」

「そう?」

「……まあ、氷龍の加護持ちからしたら、そんなもんか」

「……溶けにくいなぁ」

「手、冷たいもんな。貸してみろ」


 フェルナンドがアイスを揉み込むと、すぐにそれは柔らかくなる。


「ほい」

「ありがと。ん〜、美味しい」

「あ、やっべ。一気に食べ過ぎた」


 彼は眉をひそめて眉間を押さえる。


「どうしたの?」

「……アイスクリーム頭痛だ。一気に食べるとなるんだよ」

「なったことない」

「……体温低い分なりにくい、のかもな。平熱何度だっけ」

「30度」

「ひっく」


 彼はけらけら笑う。


「そりゃ暑いの苦手だわ」

「そう? 北国の人ってそんなもんじゃない? フェルだって寒いの苦手でしょ」

「まあ、そうだな。……イルヴェリアって冬何度だ?」

「−15」

「さっむ」

「暖房がしっかりしてるから大丈夫。むしろ暑いくらいだよ」

「ルミの暑いは当てにならないんだって……」

「安心して、夏はあるから。25度くらいだけど」

「冬だろ、それは……」


 フェルナンドは肩を落とす。ルミはくすくす笑った。


「でも、来るんでしょ?」

「まあな。王配計画は進行中だ」


 フェルナンドは軽く笑う。その時シマエナガが「……ぴ」と鳴いた。


「しまちゃんも食う?」

「ぴちぴ……」

「はいはい」


 フェルナンドがアイスの蓋側を渡してやると、彼はおいしそうについばむ。少し形を取り戻したようだ。


「そろそろ授業じゃね?」

「あ、ほんとだ。アイス食べて復活したし、がんばろっか」

「おう」


 二人は笑って立ち上がる。しまちゃんもベンチから羽ばたき、ルミの肩に乗った。

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