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二九 天狗 1/3
鶏頭山は早池峰の手前にある峰です。麓の里では前薬師とも言います。
天狗が住むと言われており、早池峰に登る人も決してこの峰は通りません。
山口(土淵。遠野の町から北東にあり、六角牛山の北)のハネトという家の主人は、佐々木さんの主人と子供の頃からの友人です。きわめて無法者で、まさかりで草を苅り、鎌で土を掘るなど、若い頃は乱暴な振る舞いが多かった人です。
ある時、人と賭けをして一人で鶏頭山に登りました。彼が帰ってから話したことによると、頂上には大きな岩があり、その岩の上には大男が3人いました。
彼からは数多の金銀を広げていました。そしてこの男が近寄るのを見ると、むっとして振り返りましたその眼光はとても不気味だったそうです。
「早池峰に登っているのですが、道に迷ってここに来てしまいました」
と言えば、
「ならば送ってやろう」
と言ってハネトの主人を先導し、麓近くまで来ました。
「目を塞いでろ」
と言われたので彼が少しそこに立っていると、たちまち彼らは見えなくなったと言います。
彼らは排他的ですが温厚ですね。こんな妖怪(というと失礼かもしれませんが)もいるようです。




