幕間(1)
「兎にも角にも今回もなんとか乗り切れたな」
ベネディクトが召喚魔法「ホルス」を使用して、ケレスのアヌビスを消滅させてから早1週間が経った。
体の状態が万全とは言えないが、長いは無用と考え俺たちは街の門を出たところだった。ベネディクトやケレスはまだ目を覚ましていない。
怪我は魔法で回復しているはずだ。恐らくは内面が回復し切っていないのだ。精神的にも負担が大きいはずだ。
若干の不安も残るが、俺たちは他国では指名手配の身である。心身の回復具合を確認し、こうして今は次の街へ向けて出発した・
「裁判にかけられた女の子の裁判はやり直すこととなったようですね。ベネディクトさんが戻ったのですから、もう大丈夫でしょう。罰は科されることになると思いますが、それはむしろ女の子のためになると思います」
「ええ、そうね。罰は救いよ。理由が何にしろ、人を殺めてしまった罪悪感は拭がたいもの。償いは必要でしょう。人が前に進むためには」
「あら、まるでシスターみたいなことを言うのね。らしくなくてよ」
「私は正真正銘のシスターよ!ぶち殺されたいの?あなたは殺めてしまっても罪悪感なんて微塵もわかなそうだし、やっちゃおうかしら」
どうどう
「そんな喧嘩をできるまでに二人とも回復したなら重畳だ。そういえば次に向かう国の名前はなんだっけ」
「セファリエです。砂漠の国ですね。あそこは魔族からの侵攻が激しい地域ということですが、悉くを退けていると聞いています」
「そうか、より一層気を引き締めないとだな」
などど、呑気なことを考えていた自分が恥ずかしい。危険な場所に行くから気を引き締める?油断していた。ここがもうすでに危険な場所であったのにも関わらず。
「エリック様!」
一番初めに気づいたのはシルビアだ。やはり歴戦の戦士は違う。瞬間的に氷壁が俺らを囲う。
時が止まったようだった。
隕石が落ちてきた。
そう言われても納得がいくような衝撃が氷壁を震わせたかと思うと、遅れてきた音とともに、その攻撃によって氷壁は全て崩れ去った。
否。
それは攻撃ですらなく、ただの移動魔法に過ぎなかった。あの規格外の魔導士にとっては。
「いやー。随分探したよエルザちゃん。初めての家出にしちゃあ、ちと遠出が過ぎるんじゃないかな」
そこにいたのはエルザの父。ジークだった。




