あなたの罪を許します(20)
気づけば闇深い樹海の中にいた。
ここがどこだがわからないが、不思議と混乱はなかった。
「ここが死後の世界というわけだ」
あたりを見回せば鈍く光る獣の目がいくつも俺を取り囲んでいる。今か今かと俺の血肉を欲しているのだろう。
これが俺に与えられた処罰というわけか。
後悔はない。例え数多の屍の上に成り立つ血塗られた道であったとしても。
「フローラ姉さんのような善人が、権利が、尊厳が失われる世の中など許せるはずもないのだから」
野獣がジリジリと距離を縮めてくるのを感じる。
抵抗などしようもない。
「散々、判決を言い渡しておいて自分だけ言い逃れようなんてあまりにも虫が良い」
獣どもが一斉に飛びかかり、俺の体にその鋭利な牙を突き立てる
「異議申し立てぐらいしなさいよー」
懐かしい声がした
もう2度と聞こえることはないと思っていた声が
「全く、いくらあの世が繋がっているって言っても移動も簡単じゃないんだからねー。ベネディクトのことと言い、私って本当に働きものなんだから」
樹海の中に現れた3体の召喚獣ハーピー、それらを同時に使役できるものなど一人しかいない。
「フローラ姉さん」
「元気にしてた?、なんて、そんなことないわよね。さあ、こんなところにいる場合じゃないでしょ」
「いいんだ、姉さん。俺は多くの人を犠牲にした。これは当然の報いだ」
「ケレス、あなたの判決は厳格過ぎた。けれど、そのおかげで狡猾な悪人の多くも姿を消した。あなたの正義は歪なものだけど、確かに守っていたものあったのよ」
グイっと。両肩が空中に引っ張られたかと思えば体が宙に浮いた。ハーピーの一体が俺を樹海のはるか上空へと引っ張り上げる。
「やめてくれ、姉さん。姉さんのいないあの世界になんの未練もない。それに今更罪人である俺にできることなんて」
「ベネディクトはちょっと慎重過ぎるから、あなたがしっかりサポートしてあげて」
あなたが罪人だと言うのなら
遠目に見えるフローラはイタズラな表情で言った。
「私があなたの罪を許します」
どうやら復帰後、最初の仕事は「裁判長は身内であってはならない」という条文を足すことになりそうだ。




