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魔王の力をお借りします!  作者: 働く猫の日常
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あなたの罪を許します(8)

「放しやがれ!クロエ姉ちゃんを早く助けないと!」


そんな罵声とも癇癪とも区別がつかない、わかりやすく言えば子供が駄々を捏ねる声で俺は目を覚ました。体は簡単な回復魔法と応急手当がされていた。いくつもベッドが並べられており、救護室というよりは寄宿舎の寝室というような感じだ。


声はどうやら隣の部屋から聞こえてくる。全身が軋むがこんなのはいつものことなので気にしないことにしているのだが、それでもやはり痛い。隣の部屋はどうやら礼拝堂になっているようだ。


「ソフィア、もう諦めなさい。お前に賛同し暴動に加わった人たちはもう捕まったか、死んでしまったのだ。もうどうしようもないことなんだ」


そう落ち着いた様子で話す初老の男は聖職者なのだろう。良く見ると部屋の角や椅子の影に小さい子供たちが何人もその二人のやりとりを不安そうに見ていた。


この教会では孤児の面倒も見ているのか。あのソフィアとかいうジャンヌもどきの女の子も孤児なのだろう。


「このドミニクさんがあの場にいなければクロエ、お前の命だってどうなっていたことか」


「いやいや、僕なんて何も大したことしていないですよ。ちょっと少女を抱きかかえて現場を後にしただけですから」


わざと自分が為したことを自虐的に話す彼をみているとサーカスの道化を思い出す。陽気な場所でなら彼は大いに喜ばれるだろうが、ソフィアはそうではなかった。


「あんたが、あそこで邪魔していなければ」


「君たちは全員、死んでいたでしょうね」


その瞬間、ドミニクに向けて蝋燭の燭台が投げつけられ咄嗟に躱した彼の右頬をかすめたらしく、ツーっと赤い血が頬を伝う。


投げたのはもちろんソフィアで、鼻息を荒げながらドミニクを視線で殺そうとばかりに睨みつけていた。込みあげる怒りは行先を失ったようで、ただその両手は強く握られていた。


「お前らなんか知るか。私一人でどうにかする」


ソフィアはそう言うと部屋の扉を勢い良く開けてそのまま外へと出ていった。


「引き止めに行ってもらえますか」


いつから気づいていたのか。ドミニクは覗き見ていたことなど百っも承知の様子で俺にそう促した。


「僕はどうやら反感を買ってしまったようです。このままでは本当に一人で突撃しかねませんので。あなたなら追いつけるでしょう?」


「言われるまでもなくいくところだったよ」


このドミニクの正体については確認しなくてはいけないが、今はソフィアの身の安全が最優先だ。俺はクロエが向かった方向へと駆け出した。


ソフィアを見つけることは容易かった。夜も更けた石造りの道に人ひとりが走る音が響いていたからだ。あとはその音に向かって直進するだけ。建物伝いに移動するくらいの身のこなしなら、この旅で身についている。


俺は屋根から大きくジャンプをしてソフィアの正面に着地した。突然のことでソフィアは驚き尻もちをついた。


「何しにきやがった!」


「こんな夜道を一人で可愛らしい女の子が出歩くなんて感心しないな。外には変質者がいるんだから」


「お前のような奴か?」


「おいおい俺のような聖人を捕まえてなんてこと言うんだ」


「お前が女の子に悪戯をして衛兵に連れていかれるのを見た」


ギクッ


「あの法廷にいたのだって、その罪に問われていたとこだろうが。この変態!」


「やれやれ、ちょっと仲間のあばら骨を触ったことぐらいで疑いがかけられるなどと。この町はちょっと異常だよ」


「お前の性癖が異常だ」


この手のやり取りには正直飽き飽きしているのだ。俺とメイヴの関係を他人の常識で量って欲しくないものだ。


「俺のことはこの際どうでも良い。とにかく今君が一人で行ってもそれは自殺行為にしかならない」


「だからと言ってこのままクロエ姉ちゃんを見殺しになんてきない。それは他殺行為だ」


性癖やら他殺など小難しい単語を知っているものだな、この少女は。よほどあの孤児院の教育が行き届いているのだろう。


「クロエ姉ちゃんは私のせいで死刑になるんだ。だから私が助けないといけないんだから、そこをどけよ」


「?。どういうことだ?死刑になるなんて余程のことをしなければそんなことにはならないはずだ。なんでお前のせいで誰かが死刑になるんだ?」


「お姉ちゃんは私を助けるために人を殺したんだ」








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