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私、偽物だと思ったのですが......  作者: 赤木典子


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6/11

6.三年ぶりの青空

ゲルダのイヤリングが見つかったことは、リフトに乗れた八人はまだ知りません。

 ズズ、ズズ。


 定員8名をきっちり乗せたリフトはグース山の頂上の祭壇へと向かっていた。


 リアナが確認する。

「無事に乗れてよかったわ。ゲルダが偽物だったっていうことでいいのかしら」


「そう......よね」

 グレースも何か引っかかるところはあれど、ゲルダがリフトに弾かれたのは事実なので、同意せざるを得ない。


 普段はおとなしいシンシアが、珍しく口を開く。

「リフトは定員オーバーと言っただけで、偽物とは言いませんでした」


「それもそうよね。じゃあ祭壇に石をはめてみるまで決まらないってことかしら?」


「私もそう思います」

 沙希も同意した。


 普段はあまり発言しないシンシアと沙希が意見を言ったので、いつものようにグレースとリアナだけの意見で決まってしまう事はなかった。




 やがてリフトが頂上に着く。山頂は、分厚い雲を突き抜けた先にあった。

 眼下には雲が広がり、山頂だけは、これまで見たこともないほど澄み切った青空だった。


「三年ぶりの空だ」

 エドワード王子が感慨深げに言う。


 そこには古い祭壇があり、四方に窪みのある円盤状の物が乗っていた。


「この窪んだところに、それぞれの石を乗せるのね」

 言いながらグレースが指輪を外して置いた。


 リアナも自分のブローチを外して置く。


 シンシアは、服の下につけた自分の赤い石を外すために、少し人の輪から外れたので、その間に沙希がペンダントを置く。


 今まで誰も一度も見たことのなかったシンシアの赤い石は、立派なブローチだった。



 全員が円盤の上に石を置いた。


 前回の記録には、ここで「石が光り出し、円盤が回転し始め、円盤の止まった位置により、それぞれの役割が決まる」とある。


 その順番は、帰還、再生、選別、守護。だという。

 しかし、全員が石を置いたのに石は光らず、円盤も回らなかった。


「どういうこと?」


 動揺したリアナがロジャーに詰め寄る。


「この期に及んでまだ偽物が混じってるの?」

 グレースがため息交じりにそういう。


「では、ゲルダは本物だったけど定員だから乗れなかったっていうことですね?」

 エドワード王子が冷静に分析する。


「私たちは本物であろうゲルダを、ふもとに置いてきてしまいました。さて、どうしましょう」


「思ったよりここが寒いので、もっと厚着をしてきたいので私たちが一度下に降りますから、ゲルダとフィリップ王子を乗せて来ましょう。本物の特定まで、まだまだ時間がかかりそうなので」


 リアナとロジャーが申し出た。


 エドワード王子は、じっと二人を見つめると、ひとこと、

「お願いします」

 とだけ言った。


 リアナとロジャーは

「寒い、寒い」

 と言いながらリフトで下って行った。



 *



 ふもとでは、馬車の中で無くなった筈のイヤリングが発見されて大騒ぎになっていた。


 ゲルダは、手元にイヤリングが戻ってきて泣きっぱなしだし、フィリップ王子は、リフトに弾かれた時点で、顔を真っ赤にして怒りだし、

「馬鹿馬鹿しくてやってられん!」

と護衛の馬を横取りして帰ってしまい、その姿は霧の彼方に消えていた。


 そこへリフトでリアナとロジャーが戻ってくる。


「うまくいかなかったので、ゲルダさん、リフトへ乗ってください」

「でも、迎え人のフィリップ王子がもういません、怒って帰ってしまいました」


 困ったゲルダは、カイルに頼んだ。

「一緒に来てくれませんか」

「乗れるかどうかわかりませんがやってみましょう」



 そうして、馬車に上着を取りに行くというリアナとロジャーを待っていた。

 しかし、上着を取りに行ったはずの二人は戻ってこなかった。


「くそ、奴らが偽物だったのか。逃げられたか」


 この濃霧では後を追っても簡単には見つからないだろう。

(ゲルダを祭壇に送っていくのが先だ)


 後を追うのを諦めて、ゲルダとカイルはリフトに乗った。

 今度はリフトは何も言わなかった。


「定員オーバーでなければ、誰でもよかったのか。泣きはらしたゲルダを一人で乗せなくてすんでよかった」

カイルは思わずゲルダの背中に手を当てた。



 *




「どういう事よ?先に石をはめれば本物になるんじゃなかったの?」

 走りながらリアナがロジャーを問い詰める。


「そこんとこは記録にもはっきりは書いてなかったんだよ。もしかしたらそうじゃないかってさ」

「下調べが甘いのよ」


「親父もグレースに一生懸命読ませたけど、わからなくて。でも赤い石ってのも古くから伝わったものでもないし、多分四個置けば光るんじゃないかって言ってたしなぁ」

「多分って」



「でも、グレースは本物だから、親父のチャンスはまだあるわけだから」

「王統が変わるチャンスはまだあるってことね?」


 王統が変わったとて、ロジャーがまた表舞台に戻れるかどうかは定かではないが。でも、悪いようにはされないだろう。


「それにどうしてイヤリングをゲルダに返しちゃったの? もう言い訳できないじゃない」


「朝の儀式で石が光らなくて怖くなったんだよ。円盤に先に置いたら光り出すんなら、どっちみち本物になれるしさ。見つかっても後の祭りだと思って」




 *




 ゲルダが頂上に到着した。頂上で待っていた人々は付き添いがフィリップ王子でなかったことにも驚いたが、リアナとロジャーが逃げたことにはもっと驚いていた。そんな中エドワード王子とアルベルト王弟だけが冷静だった。


「では、石を置いてみてください」


 エドワード王子の宣言で、ゲルダが揃ったイヤリングを円盤に置き、四人の娘が祈り始める。


 徐々に石が光り出す。

「おお、光り出した」

 迎え人達に驚きが広がる。


「本物はこの四人だったということが。わかりましたね」

 エドワードは満足そうだった。


「ではそのまま、役割を決める儀式をしましょう。まずは帰還の娘」

 円盤の回転がだんだん遅くなり、グレースの石を指し示す。


 また円盤が回りだしたと思ったら、次はゲルダの石を示す。

「ゲルダが、再生の娘ですか」


 再び円盤が回りだす。次は選別の娘だ。シンシアか、沙希か。二人に一人だ。

 だんだん回転が遅くなる。


 誰もが固唾を飲んで見守った。

 円盤が止まった。



「選別の娘は......沙希」



やっと本物の四人が判明しました。

皆さんの推理は当たりましたか?

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