↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
きつねの章《しょう》
PR
2/30

2 きつねが望《のぞ》むごはんとは?

「どうしたんだい草凪《くさなぎ》。わしはあの日《ひ》の料理《りょうり》をまた食《た》べたい。出《だ》してくれんか」


 白《しろ》キツネは店《みせ》に入《はい》ってきて、もう一度《いちど》おねがいしてくる。

 私《わたし》たちはかおを見合《みあ》わせる。


 母《かあ》さんが困《こま》ってといかける。


「ねぇキツネさん。前《まえ》に食《た》べた料理《りょうり》ってなんなの? なぜあなたはしゃべれるの?」

「わしを知《し》らんのか、こむすめ」

「こ、こむすめ……かぁ。この年《とし》になってキツネに子《こ》ども扱《あつか》いされる日《ひ》が来《く》るなんて思《おも》わなかったわ」


 何百年《なんびゃくねん》も生《い》きているキツネから見《み》たら、そりゃ四十代《よんじゅうだい》の母《かあ》さんは子《こ》どもだろう。


「わしは雪路(ゆきじ)。昔《むかし》、世話《せわ》してやっただろう! 恩《おん》を忘《わす》れたのか、草凪《くさなぎ》」


「………そういやぁ俺《おれ》のひいじいさんの時代《じだい》は、おんみょうじ……お祈《いの》りとか、あやかし関係《かんけい》のなやみごとを解決《かいけつ》する仕事《しごと》をやってたって聞《き》いたかもしれん。てことは、雪路《ゆきじ》は俺《おれ》たちのご先祖《せんぞ》さまとゆかりのあるキツネってことか」


「それで子孫《しそん》の私《わたし》たちのとこにきたってこと?」


 ご先祖《せんぞ》さまが雪路《ゆきじ》のために作《つく》った料理《りょうり》の再現《さいげん》……。

 たぶん明治時代《めいじじだい》に作《つく》ったもの。

 面白《おもしろ》そうじゃない。


「父《とう》さん、母《かあ》さん。雪路《ゆきじ》の食《た》べたがっている料理《りょうり》の再現《さいげん》、やってみようよ。料理人《りょうりにん》のうでの見《み》せどころだよ!」

「つってもなあ。せめて料理名《りょうりめい》がわからないと作《つく》れないぞ」


 たしかに。いくら料理人《りょうりにん》の父《とう》さんでも、名前《なまえ》もわからないものを作《つく》れない。


 少《すこ》しでもおおくヒントを集《あつ》めないと。



「雪路《ゆきじ》。作《つく》るためにヒントをおしえて!」


「ヒント、とはなんだ?」


 うーん。明治時代《めいじじだい》のキツネに英語《えいご》は通《つう》じない。


「ええとね、その料理《りょうり》についておぼえてることあったら話《はな》してほしいんだ。味《あじ》でも、見《み》た目《め》でも」

「おお、作《つく》ってくれるのか草凪《くさなぎ》。良《よ》い心《こころ》がけだ」


 雪路《ゆきじ》はうれしそうにシッポをふる。



「そうだな。えもいわれぬ香《かお》りがする、茶色《ちゃ》い汁《しる》だ。肉《にく》が入《はい》っていて、コメにかかっていた」


 香《かお》りがよくて茶色《ちゃいろ》の汁物《しるもの》、ごはんにかける。


「…………カレー?」


 カレーは、食堂《しょくどう》くさなぎがはじまったときからある人気《にんき》メニューだ。


 大《おお》きめに切《き》ったニンジン、ジャガイモ、玉《たま》ねぎがたくさん入《はい》っている。

 肉《にく》はうす切《き》りのブタバラ肉《にく》。

 コショウでよくやいてから入《い》れているため、カレーも香《こう》ばしさがましているのだ。


「なんだ。カレーか。とんでもなくむずかしい料理《りょうり》かと思《おも》ったぞ。今作《いまつく》る。待《ま》ってな、雪路《ゆきじ》」




 父《とう》さんははなうたを歌《うた》いながら、カレーをあたためる。


 私《わたし》たちの夕食《ゆうしょく》にする予定《よてい》だったカレーをごはんにかけて、お皿《さら》を雪路《ゆきじ》の前《まえ》にだした。


 ずっと食《た》べたかったのだと言《い》ったのに、雪路《ゆきじ》はむずかしいかおをする。


「ううーーむ。ちがう。ちがうぞ。わしの食《た》べたあれと全然《ぜんぜん》ちがうではないか。あの料理《りょうり》には、こんなにゴロゴロ余計《よけい》なものが入《はい》っとらんかった」

「余計《よけい》なものって、ニンジンとジャガイモと玉《たま》ねぎだよ。カレーのていばんでしょうが」



 せっかく出《だ》したのに文句《もんく》を言《い》うとは、なんてゼイタクなキツネさんだ。


「いや、ちょっと待《ま》てマコト。よく考《かんが》えたら雪路《ゆきじ》が初《はじ》めてカレーを食《た》べたのが明治時代《めいじじだい》なら、食材《しょくざい》は今《いま》とちがうはずだ。流通《りゅうつう》がぜんぜんちがう。このカレーは今《いま》のうちのレシピで、ルーも現代《げんだい》のものを使《つか》っているからな。さっきの雪路《ゆきじ》の思《おも》い出《で》の話《はなし》では、野菜《やさい》が出《で》てこない。ご先祖《せんぞ》さまはこんなに大《おお》きく具《ぐ》を切《き》っていなかったということだ」



 父《とう》さんはメモを読《よ》み返《かえ》しながら言う。

 怒《おこ》るのでなく、理由《りゆう》を考《かんが》える。料理人《りょうりにん》のかがみだ。


 すぐ怒《おこ》ってしまった私《わたし》は、見習《みなら》わないといけないかもしれない。


「もっとちゃんと組《く》み合《あ》わせを考《かんが》えてみよう。もう少《すこ》し待《ま》ってくれよ、雪路《ゆきじ》」

「あいわかった」



 気《き》をとりなおして、雪路《ゆきじ》の食《た》べたご先祖《せんぞ》さまのカレー再現《さいげん》がはじまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。